車がジャンジャカ走って、跳んだり跳ねたり! 爆走!! クラッシュ!!!

この手の映画って、コスモポリタンをご愛読の皆さんにはちょっと縁遠いのかな〜、なんて思いつつ、なんだけど、敢えて言うわ。だまされたと思って一度ご覧なさいって! それが"ワイスピ"こと『ワイルド・スピード』シリーズなのよー。

これねー、「あんま話題になってないじゃん」っていう人もいるんだけど、じつは密かにファン増殖中。2〜3年に一度のペースで制作されているシリーズなんだけど、公開時に超絶大ヒットとはいかなくても、その2〜3年の空白期間の間にDVDなどでジワジワと浸透していて、作を重ねるごとに日本のファンが増えているという感じ。あ、世界的に言うと、おそるべき大ヒットシリーズで、最新作『ワイルド・スピード/ICE BREAK』は、日本を除いて世界公開した週末の興行成績が、『STAR WARS/フォースの覚醒』のそれを上回っちゃったほどなの。超ビッグ。

さぁ、その証拠を見せますわ。おプライバシーの問題があるので、ボケボケに加工したこのお写真! 

なにこの行列……って思うでしょ! 現在、『〜ICE BREAK』で使われたダッチチャージャーという車が来日中で、それをトレーラーに乗せて日本中の町をキャラバンしてるんだけど、たかだか展示するだけのこのイベントに集まる人の数がハンパない(たかだかって失礼な話だけど、でも本当に車を見せるだけでイベントとかがあるわけでもないので、車自体がキャスト扱い)。1000人は軽い感じで、公開が近づいた先週あたりからは2000人くらいが集まっちゃってるのよ〜! 大事なことなので二度言います。車を見せるだけでこの動員よ!

じつはこのシリーズ、なぜ日本でウケてるところとウケていないところの差があるかと言うと、都市部と地方の差と丸かぶりなのよ。このシリーズってレーシングカーとか特殊車両を使った映画ではなくて、一般車や一般車の改造カーを使ったお車映画だから、日常的に車に乗る生活をしている地方の人の方が共感しやすいのね。ほれ、都市部に暮らしていると、車を持つこと自体で維持費がかかるし、公共交通機関が網の目状態だから、自家用車の必要がないでしょ。地方、それも郊外に暮らしていたらそうはいかんわけで、一家に一台とかではなく、一人一台の車がある生活。あたしからすると、いいなー、ぜいたくーって思うんだけど、生活かかってんだからぜいたくでもなんでもないわけよね。

そしてもう一つ、郊外で生まれ育ち、暮らしている人たちの特性として「地元愛」の強さがあるわよね。地元こそ最高! っていう気持ちは、誰でもあるけど、仕事や学業などでやむなく別の町で暮らしていると、自分の地元での縁が遠くなっちゃう。でも、暮らし続けている人達は、友達はもちろん、ご近所さんや飲み屋の常連同士とか、顔見知りレベルを超えたコミュニティができてるじゃない。家族じゃなくてもファミリー的な付き合い、っていうのかしら。これってたとえば、あたしを含む東京暮らしの東京砂漠民族にとっては驚異的なのよ。基本的に他人には干渉しないっていうのが流儀、っていう暗黙のルールみたいのあるからねー(こういう地域的なつながりってじつは、震災後から急速に、かつ全国的に進んでいる実感はあるんだけどね)。

根っからの東京砂漠民族なあたしにとっては、今となってはうらやま〜なんだけど、そういうの……。だって、あたし、雑誌のお悩み相談とかに投稿したとしたら、肩書きは「東京都・45歳・フリーランス・独身ゲイ」よ。……孤独死確定じゃん!(号泣)

ケホケホ……(吐血)。あたしの話はどうでもいいわ。こうした地域的な車文化の差や社会の絆の観念差が、もろ"ワイスピ"人気の差に結びついているのよ。仲良しの友達同士が「ファミリー」となっている現実が、"ワイスピ"人気の根っこにあるのよ。

もともと車泥棒仲間の絆を描いた映画として始まり、今やその仲間達は巨悪を倒すヒーローになってるっていう設定のこのシリーズ。正直に言いますわ。公開が始まったばかりの『〜ICE BREAK』を含めて8作あるから、観たことがないっていう人には敷居が高いと思われるかもしれないけど、5作目の『〜MEGA MAX』からでOK! っていうのも、ここからがぜん、おもしろくなっちゃってるのよ〜。じゃ、それまでは、っていうと、ストリート・レースに明け暮れる敏腕ドライバー達(兼車両泥棒)のモンモンを描いているだけ(だけでもないけど)。なんで、5作目からおもろくなったかというと、それまで言っちゃーちんけな車泥棒のお話だったのが、突然国際犯罪組織を相手にFBIの捜査に協力する義賊に変わっていくから。

『〜MEGA MAX』からでいいっていっても、シリーズもんだから主要キャラの関係性とか見えないと〜、っていう不安もありましょうけど、それも全然OK。ドミニクをはじめとする主人公達は、まるっとひとくくりで考えて「善」のグループ。で、それに対する犯罪組織が「悪」っていうだけなの。チャンチャン。すっごくシンプル。しかも、善のグループは自分達のことを「ファミリー」と呼ぶのね。ほれ、ここで登場、ファミリー観。家族ではないし、赤の他人同士なんだけど、絆の深さゆえにファミリーになっていくって、日本で"ワイスピ"人気を支える人達とかぶるっしょ〜。

とはいえ、それでもなー、っていう観賞躊躇組。トム・クルーズの『ミッション:インポッシブル』シリーズだったら観るでしょ? あれと似てるのよ。マジで。とにかくありえないこと連発するんだもん。しかもトム・クルーズみたいに肉弾戦的なガチ勝負はほとんどなくて、車だけが吹っ飛ぶだけだから(それも空から落ちてきたり、すっ飛んだりレベル)、血も出なければ死人も見えないという安心設計(きっとお亡くなりになってるザコキャラはいるんだろうけど)。ほら、『ミッション:インポッシブル』よりもライト。

しかもですよ、『〜MEGA MAX』からはその公開時に旬な世界の観光地を舞台に、ありえねーアクションを展開するから、ご当地観光映画的な要素も出てきてるのね。ちなみに最新作の冒頭は、アメリカと国交回復してから急速に観光地としての人気上昇してるキューバ・ハバナ!(『〜MEGA MAX』はリオでの五輪が決定したばかりのブラジル、『〜EURO MISSION』はロンドン五輪開催後のロンドン、『〜SKY MISSION』は常に富裕層に人気の中東とかでスーパーカー登場)

アクションだけじゃなくて、ユーモアも満点でストーリーがちゃんと練られているから、娯楽映画として満点なのよ。だまされたと思って観たら「こりゃ世界でヒットするわけだわい」って思うわよ。

ワイルド・スピード/ICE BREAK

監督:F・ゲイリー・グレイ/出演:ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソン ほか/配給:東宝東和/現在全国ロードショー中

©Universal Pictures