USB充電器が爆発!ビックリついでにハンマーで割って中身を調べてみました(ウェブ情報実験室)
こんにちは、フリーライターの宮里です。

100均USBケーブルや自作ケーブルの検証、各種5V電源機器の動作で大変活躍してくれたUSB充電器。最期は火花を飛ばしつつ派手な破裂音と共に果てるという、滅多にない経験までさせてくれたことに敬意を表し(?)、分解してみました。

この記事は、身近にある「疑問」や「不思議」を検証する『ウェブ情報実験室』です。

実験の目的


壊れたUSB充電器の故障原因を究明する

動機


それは徹夜明けの朝のことでした。原稿はほぼ完成していて、残るはレビューする機器の写真を数点撮るだけの状態だったときです。眠気が本格的にくる前に終わらせようと準備を急ぎ、レビュー機器を動かすためUSB充電器をコンセントに挿した......その瞬間、派手な火花と音を出してUSB充電器が壊れました。ビックリしたものの何故か落ち着いていて(今思えば、眠くて鈍感だっただけですね)。

「へー。火花が派手に散って破裂音までしたのに、燃えたりしないんだー」

などとのんきに考えていた記憶があります。接続していた液晶ディスプレーの画面がチラチラと白黒反転を繰り返す様子は、なんだか古い近未来SFアニメっぽかったです。その点滅も数秒で終わり、真っ暗に。その段階になってようやく「コンセントに挿したままはまずいのでは?」と気づいて抜きましたが、いやー、よく素手で扱ったもんです。単純に火傷、感電の危険があったわけで......我ながら怖いことを。寝不足禁止。

とり急ぎ別のUSB充電器を持ち出して撮影は終わらせ、写真と原稿を送信してから夢の中へ。眠気がスッキリなくなった後で、もしかしたら怖い思いをしたのではないかと我に返りました。そして壊れた充電器を見ているうちに、怖かっただろうという思いはどこへやら。興味は、壊れたUSB充電器の中はどうなってるんだろうという方向へ......

そんなわけで、分解して中を見てみることにしました。

実験対象


壊れてしまったのは、ルーメンの「LAC-1UQC2」。1ポートですがQC2.0に対応し、5V2.4A〜12V1.25Aまで出力が可能という、なかなか優れた仕様です。製品の名誉のために明記しておきますが、過去の実験や工作などで便利な汎用電源として、壊れてもやむなしな結構ムチャな使い方をしていました。ですので、この製品が危険だという話ではありません。

なお、便宜上「爆発」と表現しますが、見ての通り爆裂や爆発四散したわけではなく、外観は爆発する前とほとんど変わってません。プラグの根本が焦げて、少し煤けているくらいなものです。ただし、振るとカラカラと音がするので、内部にはなんらかの物理的ダメージがある様子。また、鼻を近づけると焦げたような、酸っぱいような、薬品のような臭いがします。コンセントに電解コンデンサーぶっこんで爆発させたような強烈な臭いではなく、樹脂を溶かした時のような臭いが近いと感じました。



▲壊れた直後に撮影した写真。見た目は破裂しても溶けてもおらず、プラグの根本がちょっと焦げていた程度。

壊れる前兆がなかったわけではなく、例えばUSBコネクターの接触が悪くなってきている感じで、コネクターの根本を持ってグリグリと動かさないと反応しない、なんてことが多々ありました。また、コンセントに差し込んだ瞬間プラグがふらつき、そこから小さな火花が出たのか「パチッ」という音が聞こえたこともあります。「おかしいな?」って感じることが続いたときは、爆発する前に使うのを止めたほうがいいですね。教訓。

実験方法


USB充電器に限りませんが、こういった小型なものは大抵ネジ止めではなく、接着されています。ツメを使ったハメ込みならまだ外せるのですが、接着の場合はケースを壊すしかありません。リューターなどを使って切開してもいいのですが、今回はもうちょっと簡単で、そして野蛮な方法を採用しました。はい。ハンマーで叩きます。



▲継ぎ目を狙ってガンガン叩きます。1ヶ所を重点的に叩くのではなく、一周ぐるりとまんべんなくで。

叩いてケースを割るのが目的なのですが、それこそ車が交通事故にあったかのようなベコベコな状態にするのではなく、接着部分だけを割るのが目的です。なので、接着されているだろう側面の継ぎ目をガンガン叩いてまわります。金属ハンマーだと接着部よりもケースそのものを割ってしまいそうなので、ゴムやナイロン、プラスチックのハンマーを使うといいでしょう。手元にない場合は、当て木をしながら叩くというのもオススメです。



▲ゴムやナイロン、プラスチックのヘッドだと固くないので、ケースを陥没させるような衝撃を与えないで済みます。100均でも売ってます。

プラスチックのケースのほうが接着部よりも柔らかいので、叩いたときにケースが変形します。その変形によって接着部が割れるのを期待する、という方法ですね。叩く代わりに万力などでケースを変形させるというのもアリです。

ある程度接着部分が割れ、隙間が開くようになったら、指で隙間を広げるか、マイナスドライバーを突っ込んでこじってあげれば開きます。なお、割れ口やその破片は鋭利ですので、怪我をしないよう注意してください。油断すると、ザックリいきます。



▲よく見ると接着部というかその周辺から割れてます。そしてギザギザと危険な感じに。

いくら叩いても隙間があかない場合は、素直にリューターやノコギリで切開しましょう。

実験結果


ということで、ケースが開いたので中身を見ていきます。なお、爆発してから結構日が経ってることもあって、嫌な匂いはあまりしません。鼻を近づければ感じますけどね。



▲ケースを叩き割って開いたところ。焦げてる部分がありますが、言われなければ気づかない程度です。

ケースを開けてまず感じたのが、意外とフツーだなってことです。もっと派手に焦げてたり溶けていたりしていると期待しただけに、ちょっと拍子抜け。安全面では大変ありがたい話なんですが、記事のビジュアル的には微妙......もっと派手に逝って欲しかったなって。

とはいえ一部焦げてますし、よく見ると焦げた破片が飛び散ってたりと、それなりに普通ではありません。破片が飛び散ってるのはケースを叩き割ったときの衝撃かもしれませんが、気にしないことにします。



▲ひと目でわかる焦げ。そして、金属パーツが2つ残されてました。

基板とプラグ部分を外してみると、派手に焦げた跡がありました。金属パーツは、回転式プラグの接点となる部分。振るとカラカラという音がしていたのは、コレが原因のようです。先程はビジュアル的に微妙みたいなことを書きましたが、結構派手でした。訂正してお詫びします。



▲回転式プラグ部分のアップ。接点部だけが派手に焦げてるのがわかります。

プラグ部分を見てみると、派手に焦げているものの溶けておらず、難燃性樹脂のありがたさが身に染みます。接点部の金属はねじ切れたというか、弾け飛んだという印象です。うわー。



▲カラカラいってた金属破片。煤けて真っ黒ですね。

金属破片をよく見ると、思いっきり煤けています。飛び散った火花がプラグ部分だということの証拠でしょう。これだけ派手にプラグの接点が焦げてはじけ飛んでも、火花が散った程度で済むのかと変な感心をしてしまいました。

続いてメインディッシュの基板の方を見ていきましょう。



▲やはりプラグ周辺の煤け方がひどいですが、他はわりと無事な様子。

一番ダメージのあるのは、やはりプラグとの接点部分。派手に吹き飛び、この部分を中心に煤けています。すぐ近くにある真っ黒になった4ピンの部品はダイオードブリッジのようです。その奥は、MOSFET。プラグの近くに配置されている部品ですが、見た感じ、これらの部品にはダメージはないようです。(煤けてますが)

関係ないですが、基板に「Anthin.cn」とあるのでアクセスしてみたところ、ACアダプターを作っている会社でした。そして製品一覧に同じ製品が載っています。期せずして中身を作っている会社がわかるというミラクル。

ほかに目視で壊れている部分がないかと探していたところ、コンデンサーが割れていました。



▲なんか不自然な割れ方してるんですけど......

よほど変な力がかからないと割れないので、実は爆発の威力はすごかったんじゃないか......などと思ったりもしたのですが、これ、たぶんあれです。私がケースを叩き割る時にやっちゃったヤツ。側面から力がかかったような割れ方ですし、爆発の巻き添え、もしくは破裂ならあるであろう煤が見当たりませんし。ごめんなさい。



▲プラグから離れた部分は無傷に近い状態に見えます

最初、壊れるなら繊細であろう電源ICかと思っていたのですが、実際の基板を見る限り、これらは無傷に見えます。ちなみに電源ICには「1780」という刻印があり、ちょっと調べてみたところ、Dialog Semiconductor社の「iW1780」という電源コントローラーのようです。QC2.0に対応しているとあるので、まず間違いないでしょう。

仕様書にある回路例(PDF直です)を見ると、「iW626」というICとペアで使われてるのがわかります。基板上のUSB出力近くにある6ピンのICが、これにあたるんでしょうか。



▲iW1780とiW626による回路例。基板の回路とはちょっと違うようですが、基本は同じでしょう。

次にICなどが載っている面ではなくて、部品面を見てみると、プラグ近辺以外へのダメージはほぼ確認できませんでした。根本に「T3, 15A250W」と書かれたヒューズがあるのですが、テスターでチェックしたところ、驚くことにこのヒューズは切れていません。



▲プラグから直結のヒューズは当然切れてると思ったんですが、なんと無事でした。

目視チェックでは基板上の部品にダメージが認められず(割ったコンデンサーは除く)、ヒューズも無事、IC等も燃えた形跡がないため、プラグ部分だけが壊れた説が濃厚といえそうです。もちろん、個別に調べれば内部が壊れているICもあるかもしれませんが、今回の爆発の引き金ではなさそうです。

結論


以上の実験というか分解から、今回のUSB充電器の故障原因はプラグのショートではないか、と感じました。プラグは回転して収納できるタイプでしたので、接点部分にゴミが入り込むのは考えられますし、度重なる回転で金属疲労がおこっていたというのも考えられます。さらにコンセントに挿す時にグラつく、変な回転をするといった予期せぬ動きにより、ついにショートした......というシナリオは十分ありそうです。ということで結論をまとめてみると、

1.収納可能なプラグは接点部が弱点になりやすい

2.派手に火花が散っても意外と基板は燃えてない

3.ケースを開けるときはコンデンサーを割らないよう注意

といったところでしょうか。

壊れているのがプラグだということの検証に、プラグ部分だけ植え替えて実験すればさらによかったのですが、チキンなのでやめておきます。コンデンサーも割っちゃったしね。

最後に。

最初にちょこっと書きましたが、コネクターの接触が悪い、プラグを挿すときにパチッという音がする、振るとカラカラいう、ケーブルを曲げないと通電しないなど、少しでも怪しい挙動があるなら、使うのを止めるべきです。電源周りは火事を起こす恐れがあるだけに、充電器やそれに接続していた機器の故障、軽い怪我くらいでは済まないことも考えられます。被害を未然に防ぐためにも、変な工夫をして使い続けず、安心して使えるものへの買い替えをおすすめします。