あしなが育英会副会長の藤村修氏(左)と山口博氏

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 過去半世紀に渡り、事故や病気などで親を亡くした遺児を援助することで多くの人に知られた「あしなが運動」。街頭募金などでこれまでに集まった金額は約1,100億円、奨学金を受けた遺児は約10万人にも上り、「あしなが募金にだけは募金する」という人もいるほど信頼感のある団体だ。

 そんな「あしなが募金」の母体である「あしなが育英会」の街頭募金全国学生リーダーに向けて、本サイトで連載コラム「分解スキル・反復演習が人生を変える」を執筆している山口博氏がリーダーシップスキルの演習を行ったところ、山口氏はある点に気づいたという。

 ビジネススキル演習を行う山口氏が気づいた「あしなが街頭募金」を行う学生たちの持っている資質とは何なのか?

 あしなが育英会副会長であり、元内閣官房長官である藤村修氏に山口氏が聞いてみた。

◆学生リーダーたちの能動性に驚愕

山口:2月に、あしなが育英会の街頭募金全国学生リーダーの方々100名とリーダーシップスキルの演習を行ったんです。私が指導している「分解スキル・反復演習型能力開発プログラム」は、身に付けたいスキルをパーツ分解し、コアスキルを反復演習する作業で、非常勤講師を務める横浜国立大学をはじめ6つの大学で同プログラムを実施しています。しかし、あしなが育英会の学生リーダーの方々のお互いにサポートし合う姿勢、柔軟性、積極性と能動性は抜きんでていたことに驚きました。

藤村:あしなが育英会の教育理念は、「暖かい心」「広い視野」「行動力」さらに「国際性」をはぐくむことです。それらが体現できていたのだと思います。私は学生時代から街頭募金に携わっていますが、街頭募金はすばらしい実践教育の場だと考えています。まさに「暖かい心」を共有し合う場であり、千差万別の市民の方々から募金を頂戴するために「広い視野」を持たなければなりません。そして、机上の学習ではなく、実践の場で「行動力」を発揮するんです。実は、街頭募金活動そのものも実践的な教育活動の一環なのです。

◆「実践の場」で人は成長する

――企業や団体で行われている研修が、「理論は学んだが、ビジネスに役立てることができない」「理屈はわかったが、行動で再現できない」ということをしばしば聞きます。

山口:リブ・コンサルティング組織開発コンサルティング事業部が実施した、組織開発・人材開発に関する全国意識調査結果によれば、企業にとっての人材開発の目的は業績伸展(51.1%)、社員にとっての目的はパフォーマンス向上(55.1%)です。にもかかわらず、企業で実施されている研修が業績伸展に役立っているという回答は39.4%、個人のパフォーマンス向上に役立っているという回答は39.9%に過ぎないことからもそれがわかります。

藤村:机上の学習が不要だとは言いません。しかし、実践の場が、いかに人を成長させるかということには、誰も異論はないと思います。その実践的な教育の場が、今日の企業や団体において、極めて限定的になっているように思えてなりません。あしなが運動の下で実施してきた日本ブラジル交流事業も、ウガンダ事務所を設置してアフリカ・サブサハラ49か国の遺児を欧米の大学へ留学させる取り組みも、わが国の未来を築く日本ならびに世界の若者に実践教育の場を提供するものです。「国際性」の実践ですね。

山口:私は藤村さんが当時事務局長を務めていた日本ブラジル交流協会の支援を得て、ブラジルに一年間留学する機会を得た。文字通り人格が変わるほどの体験をしました。ものの考え方がかわったし、人との接し方が変わったと思う。私が「分解スキル・反復演習型能力開発プログラム」により行動変革プログラムにこだわり続けている原点でもあるんです。