ダウン症児の子育て

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ダウン症の息子・カイトくん(19)と共に、「世界ダウン症水泳選手権大会」に向け、これまで二人三脚で歩んできたパーツモデルの金子エミさんが、ノンフィクション・コミックエッセイ『美容家ママとダウン症カイトの世界水泳奮闘記! 世界は君のもの』(オレンジページ、まんが・小林裕美子)を出版。「ダウン症だってスポーツできる、世界を目指せる!」そう宣言する金子さんが、昨年日本代表として、「世界ダウン症水泳選手権大会」に出場した“カイトくんとの日々”を語ってくれた。

●母として大切にしている“3本の大きな柱”とは?

パーツモデルとして数多くのCMに出演する金子さんが、ダウン症のカイトくんを出産したのは‘97年のこと。その後離婚を経験したものの、今のご主人と再婚。’04年には次男・リオくんが誕生している。

「カイトは私にだけではなく、リオに対してもそうなんですけど、私たち家族に何かつらいことがあるとすぐに察するんですね。もちろん家では顔に出していないつもりなんですけど、彼はすぐに変化に気づいて、ヒュッと抱きしめてくれることもあって…。第何感なのかはわからないけど、私たち健常者には見えていないことが彼には見えてるんじゃないかなと思うことがしばしばありますね。これに関しては、本当にもう誰かに研究して頂きたいくらいです(笑)。彼はその場の空気や感覚的なものをものすごく大切にして生きている子なんだなとつくづく感じます」(金子氏 以下同)

●子どもの心のシグナルは、すべて顔に出る!

インタビュー中も、ポジティブで明るい輝きを放つ金子さんだが、一時は、「この子(カイトくん)の将来を夢見ることはできない…」そんな苦悩を抱えていたという。そんななか訪れた、「世界ダウン症水泳選手権大会」との出会い…。元々ポジティブな彼女は、カイトくんと共に「世界を目指す!」と胸を張って宣言し、徐々に希望の光を見出していく。金子さんがこれまでの育児において、大切にしていたものとは何だったのか。彼女のなかには、私たちが学ぶべき、大きな3本の柱が立っている。

「この答えはとても悩むんですけど、ひとつめは“言葉”かもしれません。カイトは圧倒的に覚える言葉が少ないし、しゃべる言葉も少ない。だからこそ、彼にはポジティブな言葉しか入れないようにしていました。例えば『そんなことをしていると、こうなっちゃうよ』というネガティブな言葉は使わず、『こういう風にすればもっと良くなるよ!』とか、いい方向の言葉しか使わない。カイトだけでなく、基本リオに対しても“ダメ”とかそういう言葉はまったく言わないようにしています。それが良かったのか、2人とも人に向かってネガティブな言葉は使わないですね。でもその反面、リオは他の人のネガティブな言葉に腹を立てやすい一面もあって…。だからちょっと、そこは成功なのかどうかまだわからないんですけど、人を傷つけないことだけはたしかです」

2つ目に大切にしていることは、“子どもを自ら手放す勇気”と“子どもとの距離感”。

「もちろん子どもは大好きですけど、自分の時間も欲しいし、仕事もある。子どもとの距離が近すぎると、時に全貌が見えなくなってしまうことってありますよね。子どもの全体像を客観的に見るためにも、多少の距離感は必要だと思います。どうしても母親って感情的になるじゃないですか。親バカにはなりたくなかったし、“社会的にこの子がどう見えているのか”をしっかりと判断したいという思いがあるので、距離を置いて見ることは大切にしていますね。子どもたちが将来社会に出て、どう生きていくのか…それが私のなかでの大きなテーマなので、“ひとりの社会人を育てる”という感覚が強いのかもしれません」

3つ目は、ママなら誰でも見習いたい大切なこと…。

「“あたり前のことを褒める”ことでしょうか。今の世のなか、子どもに夢中になり過ぎて、教育ママになってしまう人はたくさんいますが、子どもが不安になりながらも、一生懸命頑張ったことすら、あたり前だと思っているのかまったく褒めないんですよね。ものすごくクール。できる子のお母さんに限って、そういう傾向があるのかな? と思います。でも子どもって、みんなお母さんに褒められたくて頑張っているんですよね。お母さんが褒めた分だけ、きっと子どもは自信がつくし、“自信の根が張る”とでも言うのかな? あたり前のことを褒めてあげると、すごくいい根が育つような気がします」

●子どもの心のシグナルは、すべて顔に出る!

金子さんからにじみ出るのは、子育てを欲張らない“潔さ”だ。

「私は子どもに理想を描いてないんですよ。“こうなってほしい”ということよりも、“この子には何が向いてるのかな?”“この子は今、何がやりたいのかな?”というところにしか気がいかない。ちょっと偉そうですけど、自分の子どもに限らず、“その子の心”を見ている感じかな。カイトが水泳と出会った時もそうでしたが、子どもの心に寄り添うことが、子どもの能力を伸ばす一番の近道のような気がします。本人のやる気を見つけるのがベスト! 子どもの心を守ることこそが、愛情だと思います」

金子さんいわく、「心のシグナルはすべて顔に出る」とのこと。何にも代えがたい子どもたちの“いい顔”を引き出し、大切にしてあげること…。母親としてそこさえ見失わなければ、金子さんのように、毎日明るい子育てができるようになるのかもしれない。

(写真/石野明子 取材・文/蓮池由美子)