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味の素およびユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI)が管理運営を行うUMI1号投資事業有限責任組合は4月27日、東京工業大学(東工大)の元素戦略研究センター長の細野秀雄教授らと共に、科学技術振興機構(JST)の支援の下、細野教授らが発明した触媒を用いて開発されるオンサイト型のアンモニア合成システムの実用化を目指すベンチャー企業「つばめBHB株式会社」を設立したことを発表した。

現在も100年以上前に考案されたハーバー・ボッシュ法(HB法)を用いて主に生産されているアンモニアは、肥料やアミノ酸の合成などを中心に幅広い分野で活用されているが、HB法は高温かつ高圧の反応条件が必要である大規模プラントでの生成が必要でエネルギーの消費量が大きく、生産設備投資が高額になる、輸送コストや保管コスト賀かかるといった課題があり、近年、代替手法の研究が各地で進められているようになっている。

細野教授らの研究グループも、低温・低圧条件下で高効率なアンモニア合成を可能とする触媒を発見・発明しており、今回のベンチャー企業の設立は、こうした技術を実用化し、必要な量のアンモニアを必要とされる場所で生産する「オンサイトアンモニア生産モデル」を実現することを目指したものとなる。

細野教授は、「2012年にC12A7エレクトライドを開発して以降、いろいろなエレクトライド触媒を開発してきたが、こうした触媒の中から、HB法に頼らない、オンサイトでのアンモニア合成が可能になるレベルのものが見えてきたことに加え、味の素が興味を持ってくれたこともあり、事業化しようということとなった」と、今回のベンチャー設立の背景を説明する。

今後は工業化と量産可能性、事業性が本当に持てるか、というところの調査を交えつつ、触媒開発が併走して進められる予定で、細野教授も「技術というものはすぐに真似される。必ず、工業化と並行して開発を進めていかなければいけない」とし、単なる研究開発のみならず、工業化を見据えたアプローチを取り入れなければ、競争優位性を確保し続けられないことを強調した。

今回の出資額は4億5000万円。内訳としてはUMIが53%、味の素が44%、細野教授をはじめとした研究者が3%ということで、細野教授は「オンサイトの実用化に見込みがなければ、会社も作らないし、投資もしない」としており、かなり事業の成功に現実味がある大学初ベンチャーといえる。また、味の素がなぜ、同社に出資を行うか、という点についてだが、同社の代表取締役社長である西井孝明氏は、「味の素はアミノ酸をベースに事業を拡大してきた。このアミノ酸はサトウキビから作られる糖蜜に発酵菌と窒素分を加えて作られるが、窒素分のもととなる材料がアンモニア。アミノ酸を効率よく作る、というプロセスにおいて、効率よくアンモニアを生成できる技術が入手できることは事業という観点からも非常に有効」と説明する。同社は現在、9カ国20拠点でアミノ酸を作っているが、アンモニアはそことは異なる海外の大型プラントで製造されたものを輸送・保管して利用しており、同社の試算によると、「アンモニア購入価格の約1/2が保管と輸送コストと見ている」とのことで、その分をプラントの設備投資コストが加算されることを踏まえても削減できる、ということは非常にインパクトの大きいこととなるという。

では実際に、いつごろから実用化となる計画なのか。つばめBHBでは、まずは2年程度の味の素の発酵素材工場における実証プロセスを経てから、としており、2021年ころをめどに実際のオンサイトアンモニア生産の実用化にたどり着ければ、としている。

なお、東工大は、実際に金額的な投資はできないが、同大の三島良直 学長によると、「東工大はさまざまな改革を進めてきており、今回のつばめBHBはそうした体制の改革を経た最初の大学初ベンチャーであり、東工大にとっても重要。これを機に、社会により貢献できるようになれると思っている」と、大学としても研究などを中心に全力でバックアップしていくことを強調。同大のシンボルマークである「つばめ」を冠した社名、ということも含め、大学としても相当に力を入れていきたいとの意気込みを語ってくれた。

(小林行雄)