R・シルバと興梠のコンビネーションは、試合を重ねるごとに成熟度を上げている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

 [ACL GS第5節]
浦和レッズ 6-1 ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ
4月26日/埼玉スタジアム
 
 DFの背後のスペースへ走り出した武藤雄樹に、柏木陽介の針の穴を通すような精度の高いロングキックが放たれる。武藤は「後ろから相手が追ってくるのが分かった。自分にマークがふたりついているので、タカが空いていると感じ取れた」とマイナスのパスを放ち、狙い通り関根貴大の先制ゴールが決まった。
 
 計算し尽くされたゴールだった。どこに誰が走り、そこでボールを受ければ、誰がどのようにフォローし、そして誰がフィニッシュに結び付けるのか--。普段の練習で身体に染み込ませてきた熟練の味と言えるコンビネーションが、ピッチ上に美しく表現された。
 
 浦和の選手たちは「スカウティング通りに、相手を攻略できた」と明かしていた。本来は4バックを採用しているウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(WSW)だが、浦和と同じ3-4-2-1にハメ込み、フィジカル勝負の戦いに持ち込もうとしてきた。
 
「立ち上がりから、シドニーが積極的に前からプレッシングをかけてくることは分かっていました。だから背後にできたスペースを狙っていた。狙い通りでした」
 
 ラインブレイクに成功した武藤はそう振り返った。まさに、してやったり。柏木によると、「武藤がGKと1対1に持ち込めるところを狙って蹴ったが、ボールが風に流され少しずれた」そうだが、結果的には、相手を翻弄することに成功。すぐさま武藤と関根で微修正し、ゴールを陥れた。
 
 加えてその1プレーで、WSWを完全に混乱に陥らせた。川崎やC大阪でプレーした楠神順平は、「ボールを奪いに行ってもかわされ、行かなければボールを回されて……。戦前にある程度は想定していた。しかし、分かっていてもやられてしまった」と振り返っていた。
 
 ホームチームは相手が動揺したところを見逃さなかった。ズラタンの2点目、李の3点目と、いずれも流れるようなパス回しを経て、右サイドから中央にポジションをとった駒井のラストパスから決まった。
 
  しかし後半に入ると、相手に主導権を握られる時間が増える。あっさりと決定機まで持ち込まれるシーンも相次いだ。その流れを断ち切れず、66分、楠神に技ありのループシュートを決められてしまったのだ。
 
「相手が修正して、プレッシャーの掛け方を変えてきた。それに、ウチも選手を交代して、しっくりいかず、全体が間延びしてしまった」
 
 柏木はそのように振り返った。ゴールを奪おうとする前線の選手たちと、リスクを冒すラインコントロールはしたくない最終ラインと、どちらをフォローすべきか迷うボランチと、全体のバランスを欠いた。もちろん札幌戦から先発5人を入れ替えるなどベストとは異なる布陣で、不動のリンクマン阿部勇樹が欠場した影響がそのあたりに出たとも言えた。
 
 とはいえ、そこから途中出場のラファエル・シルバが2ゴール・1アシストと爆発。今後、ACL、Jリーグ、さらにルヴァンカップ、天皇杯と連戦が続く際、R・シルバ、興梠のどちらか(あるいはふたり)をベンチに置くなど、強力な切り札「2枚」を臨機応変に使える。それは浦和の大きな武器になり得ることを示した。
 
 相手に付いて”走らされる”時間帯も続いた2ボランチは「しんどい時間が続いた」と漏らしていた。一方で青木は「それでも攻め切って、畳み掛けるのが今季のレッズ。6点を奪えたのは、良い面が出たから」と受け止めている。久々に組んだ柏木&青木の2ボランチについても、阿部不在時でも問題なく機能する面と、リスク管理など課題になる面と、両面が明らかになったのは、むしろ収穫と言えるだろう。
 
 スタッフのスカウティングと選手のプレーが合致した前半、一転してピンチが続きながらも巻き返した後半。内容もとても充実していた仙台戦(4月7日/6節・仙台戦/7-0勝利)とは似て非なる大勝劇だった(相手のレベルが高かったのかどうかが分からないと、本音を語る選手もいた)。
 
 ただ今後に活かせる様々な教材の詰まった1勝になったのは確かだ。何よりこのACLのグループリーグを通じて、チームの総合力は上がり、戦い方の幅も広がっていった。そして、この日先発の座を掴んだ駒井は「次が大切。甘さを見せたら、必ずやられる」、柏木も「決勝トーナメント進出は『当たり前』。まだまだ。もっと良くなれる」と、一段と気を引き締めていた。
 
 アジアの戦いは、ここからがスタート--。浮かれることなく、それでいて新たな冒険に向かうような高揚した雰囲気が、試合後の浦和の選手たちから醸し出されていた。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)