昨今の北朝鮮の核ミサイル開発は朝鮮半島における緊張関係をより一層強めいている。トランプ政権は朝鮮半島に空母艦隊を送っている。

 また、米NBCニュースが米国家安全保障会議(NSC)はドナルド・トランプ大統領に次の3つのオプション(選択肢)を提供したとの報道を行った。

 それは、トランプ大統領に対して韓国への戦術核兵器再配備から金正恩総書記を含めた北朝鮮の主要な政治指導者の斬首作戦や特殊部隊による北朝鮮の重要な核関連のインフラや施設を破壊するといったオプションである*1。

 また北朝鮮のミサイル実験に対して日本では秋田県男鹿市で戦後初めて弾頭ミサイルを想定した避難訓練を行った。訓練自体は弾道ミサイルが領海内に落下したことを想定し、小学校などの特定の避難場所に避難するといったもので住民約110人が参加した*2。

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核兵器が使用される危険性はある

 戦後、民間防衛は重要視されず、また防衛に関しては戦前回帰と結びつき国民の間で一種の嫌悪感があったことを考えれば、この避難訓練が行われたということは北朝鮮のミサイルの脅威が高まっているという認識が日本で深刻化しつつある現状を反映していると捉えられる。

 プロイセンの偉大な戦略家であるクラウゼヴィッツが言うように、暴力は拡大する傾向にあり、1953年以来休戦状態が続く朝鮮戦争が仮に今日の緊張関係が暴発し再開した場合には、核兵器が使用される危険性があるのは事実である。

 日本には国連軍の基地があり、朝鮮戦争が再開した場合には、対岸の火事というわけにはいかない。日本は、北朝鮮以外にも、大国復活を目指すロシアや軍事費増強を続ける中国なども核保有国であり、日本は改めて核保有国に囲まれていることを認識する必要性があるだろう。

 弾道ミサイルの脅威に対して、日本はミサイル防衛(イージス艦搭載の「SM-3ミサイル」と地上配備型の「PAC-3ミサイル」)によって相手国からのミサイルを迎撃する姿勢を取っている。

 また、冷戦中から現在まで相手国の核兵器に脅威に対して日本の防衛に重要なのは核の傘である。昨今の極東情勢を考慮すると米国の核の傘の重要性が日々増している。そうしたなか、もう一度、日本に提供されている核の傘とはいったい何であり、この傘の信頼性を考えるうえで重要な論点(特に政治家の発言)を分析する。

 今年、1月トランプ政権が誕生したが、トランプ大統領は共和党候補として大統領選において様々な政治的発言を行い、大変大きな注目を浴びたのは記憶に新しい。その中でも注目を浴びた発言の1つが同盟国に対するものであった。

 米国にとって一番重要な軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」と表現し、日本と韓国に対しては、米軍の駐留経費を大幅に負担する必要があり、それができないのなら米軍を撤退させる。そして、この2カ国は北朝鮮の核兵器に対抗して核武装してでも自らを守った方がいいなどの無責任な日韓の核保有容認発言を行った*3。

*1=William M. Arkin, et al: “Trump’s Options for North Korea Include Placing Nukes in South Korea”, NBC News[Online], 7th April 2017, http://www.nbcnews.com/news/us-news/trump-s-options-north-korea-include-placing-nukes-south-korea-n743571, accessed on 7th April 2017.

*2=『日経新聞』2017年3月17日.夕刊

*3=『毎日新聞』2016年3月28日.朝刊; Kevin Raffery: “Will Trump’s Foreign Policy Push Japan to Go Nuclear”, Japan Times [Online], 25th December 2016, http://www.japantimes.co.jp/opinion/2016/12/25/commentary/japan-commentary/will-trumps-foreign-policy-push-japan-go-nuclear/, accessed on 1 April 2017.

 大統領となったトランプ氏は同盟国に対する無責任な態度を軟化させた。まず、2月3日にトランプ大統領の腹心であるジェームス・マティス国防長官が来日し、安倍晋三首相との会談を通して米国の拡大抑止の提供を表明した*4。

 また、翌日の稲田朋美防衛大臣との会談の中で両氏は日米同盟の重要性と「核の傘」を含む「拡大抑止」の重要性についての認識が共有された*5。そして、2月10日の初の首脳会談では日米の親密度を示し、会談においても米国の核兵器、通常兵器による日本防衛への関与を認めた*6。

 これら一連の言動によって選挙中のトランプ大統領の無責任かつ同盟国を軽視する姿勢が改善されたことが分かるが、トランプ大統領への不信感が日本国民の間から完全に払拭されたわけではない。そこでまず「核の傘」を含む「拡大抑止」とは何かを考察したい。

 核の傘を根底にあるものは、言わずもがな日米同盟である。日本は敗戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって約7年間統治され、この間に日本軍は解体され、GHQ原案の憲法によって陸海空軍その他の戦力を保持することが否定された*7。

盾しか持っていない日本の自衛隊

 このいわゆる戦後の平和憲法により、日本の安全保障体制は米国に非常に頼る体制となり、現在までこの状態が続いている。しかし、他方では1950年の朝鮮戦争の勃発により、マッカサ―書簡によって日本から朝鮮半島に派遣された米軍の戦力の空白を埋めるために7万5000人からなる警察予備隊が創設され、1954年の自衛隊の創設へと繋がる*8。

 しかし、憲法との関係から日本に国軍は存在せず、例えば歩兵部隊とは呼ばずに現在も普通科という名称が使われており、一般の日本国民には全く馴染みのないものとなった。また戦車も初期は特車と呼ばれていた。

 これらのことが示すのは、名称からしてもそうだが、あくまで自衛隊は国家防衛専門の組織である。これは、専守防衛という姿勢によっても、その性格が分かる。日本の防衛はあくまで「盾」しか持っていない状態なのである。

 では、「矛」の役割はどうするのか。この攻撃能力を補っているのが日米同盟であり、具体的には在日米軍である。通常戦力に対しては日本の「盾」は機能するが、相手の核兵器に関しては独自の核抑止を構築できない日本は米国の核の攻撃力(主に報復攻撃)に頼るしかない。

 この米国の核兵器によって日本は守られているという考えが「核の傘」である。もっと簡単に言えば、核兵器という傘が日本全体を覆っており相手国からの核ミサイル攻撃を防ぐようなイメージである。

 それでは、「核の傘」を含む「拡大抑止」と冒頭で挙げたが、この2つの違いは何か。核の傘は前述の通り、日本を覆う米国の核兵器による傘であるが拡大抑止は文字通り、抑止という概念を拡大したものである。

 戦略の権威である英国のローレンス・フリードマン卿(Sir Lawrence Freedman)によると抑止とは、相手の行動を脅威を使って操ることを意味する*9。

*4=『日経新聞』2017年2月4日.朝刊

*5=『日経新聞』2017年2月5日.朝刊

*6=『日経新聞』2017年2月12日.朝刊

*7=福永文夫『日本占領史1945-1952』中公新書、2014年、84-107貢;佐道明広『自衛隊史―防衛政策の70年』2015年、ちくま新書、18-40貢

*8=秦郁彦『史録 日本再軍備』文藝春秋、1976年、140-144貢; Martin E. Weinstein : Japan’s Postwar Defence Policy, 1947-1968 (New York : Columbia University Press., 1971), pp. 50-52.

*9=Lawrence Freedman: Deterrence (Cambridge: Polity Press., 2004), p. 6.

 また、抑止の専門家であるパトリック・モーガン(Patrick Morgan)は抑止の本質とは自らが望まない行動を相手が取ることのないようにするために、相手がこの望まない行動を取った場合には相手が多大なる被害やダメージ(攻撃)を受けると相手を脅すことだと説明している*10。

 つまり、抑止においては脅威の使用(もっと簡単に言えば相手を威嚇する)という考えが重要になってくる。または、相手にある一定の行動を取るとやばいことになるぞと思わせることである。

 ここで言う脅威とは通常兵器と核兵器という甚大な破壊力を含んだ軍事力のことである。拡大抑止と核の傘の大きな違いは、核の傘が核を中心にした考えであるが、拡大抑止は上記の説明のように通常戦力と核戦力どちらも含めた考えである。

 もっと厳密に言えば、米国の「通常兵器だけでなく核戦力」の使用を含む「拡大抑止」なのである。つまり、拡大抑止とは核の傘よりも幅広く包括的なのである。

日米安保で米軍が自動参戦するわけではない

 日本には在日米軍が駐留しており、通常戦力に対しては在日米軍が対処する役割を担っている。そして、核の脅威に対しては米本土の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や原子力潜水艦から発射されるミサイル(SLBM)が相手に対し多大なるダメージを相手に与えるという点から日本に対する攻撃を抑止しているのである。

 ここで重要になってくるのが同盟国を守る側の決意である*11。

 この根幹を成しているのが米国と日本の間において結ばれている日米安全保障条約、特に第5条である。しかし、我々が知っておかなければならないのは、日本が攻撃された際、この条約に基づいて米国は「自動参戦」するわけではないということだ。なぜなら、第5条は以下のような規定であるからである。

第5条、各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する*12

 ただ、この条約の規定はNATOの第5条も同じである。この第5条とは、加盟国(厳密には条約締約国)1カ国に対する攻撃は全加盟国(条約締約国)に対する攻撃と見なすというもので、NATOの集団安全保障体制を象徴するものであるが、条約起草過程において米国の主権を維持するために第5条を適用するかどうかの最終判断を米国議会の判断に委ねることも想定して作成された*13。

 この一見立派な条約も米国の自動参戦が保障されているというわけではないのだ。日米安保条約も同じように最悪の場合、大統領令を使用せず、議会に軍事力の行使の判断を委ねる可能性があるということを明確に認識する必要性がある。

 また、核の傘については、この条約からは読み取ることができないが初めて公の場で米国の核の傘が認められたのは中国の核実験から3か月後の1965年の佐藤栄作とリンドン・ジョンソン大統領の首脳会談だと言われている*14。

*10=Patrick M. Morgan: Deterrence Now (Cambridge: Cambridge U.P, 2003), p. 1.

*11=Lawrence Freedman: “Framing Strategic Deterrence”, The RUSI Journal Vol. 154 No.4 (Aug 2009), p. 48.

*12=筆者による強調

*13= Beatrice Heuser: “How Brexit is destroying the British and European Defence and Security Mechanism”, Unpublished Manuscript (2017), p. 8.

*14=春原剛『核がなくならない7つの理由』2010年、新潮新書、85-86貢

 しかし、当時の佐藤政権時、日本のエリートたちは中国の核実験に強い脅威を抱いており、この実験は同時期に内閣調査室が委託した研究者による核武装研究が始まるきっかけとなった。そして、この秘密研究の結論は政治的、外交的、技術的、経済的視点から総合判断すると米国の核の傘に頼るのが得策であるとした*15。

 最終的には佐藤政権の非核3原則、厳密には米国の(核の傘を含む)拡大抑止を含めた4原則を推進することになった*16。この時以来、日本は米国の核の傘に頼る姿勢が確立した。

 そして、昨今の北朝鮮の核開発がより進むにつれ、核の傘に頼る姿勢がより強まっている。現に先月行われた国連本部で開催された核兵器を法的に禁止する核兵器禁止条約交渉に日本は参加せず、米国の核の傘に頼る姿勢が見て取れる*17。

 だからといって、核の傘に対して異論がないわけではない。核の傘に関してよく議論されることであるが同盟国を守るために、米国は自らの都市を犠牲にしてまで守る覚悟があるのかという点である。

核兵器を使って日本を守る強い覚悟が最も大切

 冷戦中においてNATO加盟国は米国に見捨てられるのではないかという不安が募っていた。フランスのガロイ(Gallois)将軍は冷戦中「他の国のために自殺をする者などいない」と発言している*18。

 また、米国の著名な核戦略家であるバーナード・ブロディ(Bernard Brodie)は「我々(米国)が攻撃されたら反撃するのはほぼ間違いない。しかし、我々の重要な同盟国が攻撃された場合には同じことが言えるのだろうか」と米国の核の傘の信頼性に疑問を呈している*19。

 日本においても米国の核の傘の信頼性を疑う者は官僚や政治家の中にもいる。彼らからすると核の傘など「幻想」にすぎないのである*20。このように核の傘において一番重要なのは米国が核兵器を使ってでも日本を守るという強い意志と覚悟である。

 しかし、CIA長官を務めたターナー(Turner)海軍提督は1986年、読売新聞の取材に対し、米国の日欧に提供する核の傘は幻想であり、「アメリカの大統領が誰であれ、ワルシャワ条約機構軍が侵攻してきたからといって、モスクワに核攻撃をかけることは有り得ない。そうすれば、ワシントンやニューヨークが廃墟となるからだ」と述べている*21。

 NATOに対する米国の核の傘は、冷戦中、そして現在でも米国の核兵器のヨーロッパ配備である。ヨーロッパのNATO加盟国は米国の核の傘の信頼性たるものにするには、ヨーロッパに物理的に存在する米国の核兵器が絶対に必要だと考えた。

 米本土の核兵器に抑止を依存するという姿勢は決して望ましくも受け入れられるものでもなかった*22。これとは逆に「東アジアモデル」と呼ばれる拡大抑止態勢に頼っているのが日本である。

 このモデルでは欧州のように米国の同盟国に配備された核兵器による抑止態勢ではなく、米本土にある大陸間弾道ミサイルまたは海中の原水力潜水艦による抑止である*23。

*15=Yuri Kase: “The Costs and Benefits of Japan’s Nuclearization: An Insight into the 1968/70 Internal Report”, The Nonproliferation Review (Summer 2001), pp. 55-68;『朝日新聞』1994年11月13日.朝刊;「NHKスペシャル」取材班 『“核”を求めた日本―被爆国の知られざる事実』2012年、光文社

*16= Kurt M. Campbell and Tsuyoshi Sunohara: “Japan: Thinking the Unthinkable” in Kurt M. Campbell,et al (eds.): The Nuclear Tipping Point: Why States Reconsider Their Nuclear Choices (Washington D.C.: The Brookings Institution., 2004), p. 223.

*17=『日経新聞』2017年3月29日.朝刊

*18=Pierre Marie Gallois quoted in John Garnett: “DefensePolicy Making” in John Baylis, et al (eds.): Contemporaty Strategy II: The Nuclear Powers, 2nd ed (New York: Holmes & Meier., 1987), p.7.

*19=Bernerd Brodie: “The Anatomy of Deterrence”, World Politics Vol.11 No.2 (Jan 1959), p.188.

*20=金子熊雄『日本の核・アジアの核―ニッポン人の核音痴を衝く』朝日新聞社、1997年、118貢;孫崎享『日本人のための戦略的思考入門―日米同盟を超えて』祥伝社新書、2010年、165-172貢; Campbell and Sunohara, “Japan: Thinking the Unthinkable”, p. 238.

*21=『読売新聞』1986年6月25日.夕刊

*22=David S. Yost: The US and Nuclear Deterrence in Europe, Adelphi Paper no. 326 (New York: Oxford University Press for the International Institute for Strategic Studies., 1999), pp. 8-11.

*23=西村繁樹編『戦略の強化書』芙蓉書房、2009年、281-282貢;Jeffrey A. Larsen: “US Extended Deterrence and Europe: Time to Consider Alternative Structures?”, In Stefanie Von Hlatky and Andreas Wenger (eds): The Future of Extended Deterrence: The United States, NATO, and Beyond (Washington, DC: Georgetown U.P., 2015), pp. 53-63: Carlo Masala: “Extended Deterrence in the Middle East”, Strategic Assessment Vol.14 No.4 (Jan 2012), pp. 115-118.

 どちらの抑止態勢が良いというのは論者の評価が分かれるとこではあるが、このモデルだと東京のためにワシントンを犠牲にするのかという指摘は非常に的を射たものだろう。

 このように拡大抑止は非常に繊細である。一番難しいのは、同盟国に核の傘の信頼性を確信させることである。同盟国が核の傘を信頼していないと相手国に隙を見せることに繋がる。

 米国は核の信頼性を高めるために、一貫して核の先制使用オプションを維持している。これにより、相手が核攻撃をする前に攻撃を阻止するという狙いがある。

 そして、相手が実際に同盟国に対する攻撃を考えた場合には、米国の核報復攻撃によって耐えがたい被害を与えられると相手に想定させることで同盟国に対する攻撃を抑止している。

核兵器を使わないと思われてはならない

 いずれの場合にせよ、米国が絶対、同盟国のために核兵器を使うことはないと同盟国、そして敵に思わせてはいけない。

 昨年亡くなったゲーム理論の権威であるトーマス・シェリングが主張するように場合によっては、米国が核兵器を使う可能性があるかもしれないという「不確かさ」とこれにより核戦争まで事態がエスカレーションするかもしれないと相手に思わせることで相手を抑止させることができる可能性はある*24。

 ここで重要になってくるのは米国の政治家、特に大統領の公の場での発言である。なぜなら核兵器使用権限は大統領が持っているからである。

 にもかかわらず、トランプ大統領は大統領選中、同盟国を軽視するような発言を行ってきた。これでは、いざとなった時に核の傘はやっぱり機能しないのではないかという不信感を募らせるだけである。

 このように拡大抑止においては同盟国を心理的に安心させなくてはならない。核兵器が配備されていない日本にとって、この大統領の言動は非常に拡大抑止の心理的側面を左右する。

 なぜなら日本が破壊されても米国本土は無傷でいられるからだ。日本を核武装させていいなどという無責任な発言をし、日本が本当に(その可能性は限りなく低いが)核武装したら米国にいったいどんなメリットがなるのか。

 また、敵国の日本における攻撃対象には間違いなく在日米軍基地が含まれる。米国は自国の兵士(家族は事前に本国に撤退する可能性が高い)全体、約4万8000人の兵士を犠牲にする覚悟はあるのか。

*24=Thomas C. Schelling: Arms and Influence (New Heave: Yale U.P., 1966), pp. 104-105.

 これは、簡単に言えば、「導火線」のようなものである。または、冷戦中の欧州ではTrip Wireと呼ばれ、ヨーロッパに駐留する米兵が殺されることで米国の関与が保障されるというものであった。

 前述のフリードマン卿によると「在欧米軍の存在意義とは、必ずしもソ連の侵攻を止めることではない。在欧米軍の役割は、盾ではなく、トリップ・ワイヤーである。つまり米国のヨーロッパにおける核戦争への介入である」と説明している*25。

 日本国民もトランプ大統領も拡大抑止における、この在日米軍の役割を忘れてはならない。

 前述の通り、大統領就任以後のトランプ大統領は同盟国に対する理解を示し、以前の態度を軟化させている。ただ、選挙中の発言により同盟国内で不信が強まっているのは事実である。

拡大抑止に必要な日米の強い絆

 マティス国防長官の外交努力などもあるがこの不信感を払拭するにはしばらく時間がかるだろう。

 日本は、北朝鮮だけでなく、中国、ロシアという核の大国に囲まれている。この点からも軍事能力が防勢的な日本では、核の脅威に対しては現状ではミサイル防衛と核の傘に頼るしかない。

 拡大抑止を強化するためには日米間の緊密な関係が必要である。核の傘は前述の通り、非常に心理的な側面が重要であり、これを幻想と捉えるか日本の防衛に役立つかものかどうかを決めるのは結局、日本国民自身である。

 この日々脅威が増す極東情勢を考慮すると日本の安全保障のためにもはや核の問題や憲法改正をタブー視する時代は終わった。核の傘は日本の防衛の一手段でしかない。

 日本国民が能動的に日本の防衛に何が必要かを考える時期はとうの昔から来ているが、今からでも遅くはない。政治を動かすのは政治家だけの仕事なのか。それでは、民主主義国家の意味がない。

 国民の意志を反映するのが民主主義の本質ではないのか。国民が政治に参加しない政治など民主主義ではない。

*25=Lawrence Freedman: The Evolution of Nuclear Strategy, 3rd ed. (Basingstoke: Palgrave Macmillan., 2003),p. 85.

筆者:中谷 寛士