ヤマト運輸の27年ぶりとなる基本運賃の値上げは、荷物の急増と単価の減少で疲弊する宅配業界にとって苦境を脱するための「解」となるのか。実は、そうとは言い切れない事情がある

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取扱量急増の一方、単価は減少
ヤマトは運賃値上げで苦境を脱するか?

 最初に断言しておきたいのだが、宅配便の価格はまだ引き下げる余地がある。そして近い将来、荷主の要望によって今よりもさらに低い価格帯に到達するだろう。現在の動きとは逆に、だ。

 現在、宅配の現場は悲鳴を上げている。ヤマト運輸は、9月をめどに27年ぶりに基本運賃を5%〜20%引き上げることを発表した。背景には、宅配便の取扱量が急増する一方、荷物1個当たりの単価は相対的に安くなり、かえって収益が悪化していることがある。宅配というインフラがもたなくなってきているのだ。

 ただ、ヤマトの経営陣も重々ご承知の話だろうが、基本運賃を20%値上げしてもヤマトの業績はさほど改善しない。なぜなら基本運賃で宅配を依頼するような個人顧客の荷物は全体の1割に過ぎないからだ。

 仮に最大に値上げをし、顧客離れが起きなかったと仮定して計算しても、値上げの収益貢献は20%×10%=2%の売上増にしかならない。これではヤマト運輸が抱えるもう1つの問題である未払い給料を支払ってしまえば、相殺されてしまう程度の金額だ。

 つまり、基本運賃の値上げはステップにすぎず、本丸は荷物全体の9割を占める大口割引料金の値上げに踏み込めるかどうかなのである。象徴的に言えば、アマゾンの運賃を20%引き上げられるかどうかが試金石になるだろう。

 こうしてこの夏、業界の命運をかけた交渉が行われ、おそらく何らかの妥協の下で一定レベルの値上げが認められるだろう。ここまでは広く業界人が予測していることだ。しかし問題は残る。宅配荷物は今後もさらに増え続けるのだ。

 原因は、前述のアマゾンをはじめとするインターネット通販のさらなる拡大だ。便利で安いのだ。だから利用は急増している。そしてまだ市場は成長期の入り口である。

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