藤竜也の言葉に聞き入る永瀬正敏

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 第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門への正式出品が決まった河瀬直美監督最新作『光』完成披露試写会が27日、新宿明治安田生命ホールで行われ、永瀬正敏、水崎綾女、神野三鈴、藤竜也、そして河瀬監督らが登壇、カンヌへの思いを語った。

 視力を失いつつあるカメラマン(永瀬)と単調な日々を送っていた女性(水崎)が音声ガイド制作を通じて出会い、やがて惹かれ合うさまを描いた本作。デビュー作がカメラ・ドール(新人賞)を獲得して以来、カンヌ国際映画祭の常連である河瀬監督だが、フランスのプロデューサーから明け方に電話があったことを振り返り、「その一報を聞いた時、自宅のリビングに太陽が昇りました。その光景を見たときに、光が世界を巡るんだなと思って号泣しました。決してカンヌは簡単な場所じゃない。あのレッドカーペットを踏みしめられるのはわずかで。それを『光』が分かちあっていると思ったら涙が出てきました」と感激の表情。

 また司会から永瀬の「芸能界の父」と紹介された藤は、「永瀬さんはいい監督に恵まれているよね」とほほ笑み。永瀬のデビュー作『ションベン・ライダー』から共演経験がある二人だが、藤は「確か共演した時は16の時。あの映画は学校の夏休みを利用して撮影したんですが、それからこの永瀬さんになるわけですよ。すばらしい俳優に育つものですね。努力したんだと思います。敬意を表します。おめでとう」と称賛。永瀬はその言葉をじっとかみしめていた。

 「(劇中の役名)雅哉として生きてきて、自分のすべてを映画の中に置いてきた。いろんな原点に立ち返れた作品」と語る永瀬。本作を試写で観た際も「まず監督に感謝の握手をして、それからひとりになりたかったんです。いろいろとかみしめる時間、消化する時間が必要で、会場から出てしまった」と述懐。さらに「永瀬さんがいなくなっちゃったんで、みんなで捜索したんですよ」と続けた河瀬監督に、「すみませんでした」と頭を下げた永瀬。「すぐそばの駐車場にいたんですが、(共演者の女優)白川和子さんにだけは気付かれて。抱きしめてもらいました」と付け加えた。

 本作のテーマは、視覚障害者のために、副音声で場面、動きなどで映像の様子を解説する「音声ガイド」。この題材を扱うにあたり、「正直、脚本を書く際も、少数派の方を主人公にするとお客が入らないよと言われたことがありました」と葛藤を明かした河瀬監督は、「音声ガイドというものを説明するのに時間が何分かかるのと言われて。だからこの題材を扱うことは、わたしの中では勝負でした。映画監督としては難題でしたし、映画を題材とすること、見えない世界を題材とすることは大変だった。でも知らない世界を描くハングリーさが表現者の活力だと思うので、そこにチャレンジしました」とコメント。

 そして「映画監督・河瀬直美のすべてを注ぎました。世界で一番すばらしい映画です。どうか観てください」と誇らしげに語る河瀬監督に会場からは万雷の拍手。観客からの「(カンヌに)行ってらっしゃい!」という呼び掛けに、監督は「行ってきます!」と力強く返答した。(取材・文:壬生智裕)

映画『光』は5月27日より全国公開