「やるべきことを締切直前まで先延ばしにしてしまう心理」や「人間の頭を切断して他人の体に移植するプロジェクト」についてなど、さまざまな分野の人物がプレゼンテーションを行うTEDでは偉大なスピーチが次々に行われています。2017年4月、新たにスピーチを行ったローマ教皇フランシスコが「未来のあなた」というテーマで語られる様子がバチカンで録画され、約17分のムービーが公開中です。

The making of His Holiness Pope Francis’s TED Talk | TED Blog

http://blog.ted.com/the-making-of-his-holiness-pope-franciss-ted-talk/

ローマ教皇のスピーチは以下のムービーから日本語字幕つきで見ることができます。

Why the only future worth building includes everyone | Pope Francis - YouTube

教皇はメッセージを3つにわけ、まず最初に「人生は単に過ぎゆく時間ではなく、互いの交流だ」ということ、そして私たちは「一人ひとりの存在が他者の存在と深く結びついているということ」について語りました。大きな困難を抱える移民、地獄の痛みを抱える囚人、職を見つけられずにいる若者に出会う度に、教皇は自分の父や祖父も祖国を離れたことから、自分がいつ彼らと同じ運命を辿ってもおかしくなかったということを思い、「なぜ彼らであって私ではないのか?」と自問するとのこと。私たちが他者に対して抱く怨恨などは、私たち自身が心中に抱える葛藤の現れであり、「すべては繋がっており、私たちは互いの健やかな関係を取り戻す必要があります」という内容が語られました。

2つ目のメッセージは科学技術の発展について。教皇は科学技術の発展によって政治的・経済的・科学的選択や民族・国家間において「連帯」が生まれることのすばらしさを説きました。現在は人間ではなく人間の作った「モノ」が中心に据えられ、技術や経済のシステムに取り残された人々が生まれてしまっていますが、このような「人の無駄使い」が「真の意味における連帯を目指す教育」によって克服できるものと示唆しました。



そして「善きサマリア人」の例えや、マザー・テレサの「自分を犠牲にすることなく 誰かを愛することはできません」という言葉を引き合いに出し、一人一人が勇気と想像力を持って具体的に物事を工夫し、世話を焼くべき人を助けることの重要さを語りました。

3つ目のメッセージは「優しさの改革」について。優しさとは、「親が自分の赤子に話しかけ、幼子に合わせて同じレベルで意思疎通する」というようなこと。つまり、他者と同じ立場に立つこと、謙虚さのことを言います。人は権力を持てば持つほど他者に対する影響力が大きくなり、ゆえに謙虚に振る舞う義務が大きくなるとのこと。アルゼンチンの「権力は空き腹に飲むジンの如し」ということわざにあるとおり、大きな権力を持った人は他者だけでなく自分をも害するようになります。権力は、謙虚さと揺るぎない愛を持って行使することによって善の力になる、として、政治家や大企業などの振る舞いを指摘するかのような発言をしました。

一方で、人類の未来は政治家・大企業・優れた指導者の手だけにゆだねられているのではなく、未来は「他者を相手として認識し、自分を全体の一員として認識する、そういう人たちの手にかかっています」とのことです。