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4月21日(金)から、全国773スクリーンで公開されているディズニーの実写作品『美女と野獣』が絶好調だ。22日、23日の土日2日間の動員は72万9114人、興収は10億6536万2800円、初日の21日からの3日間では動員95万1214人、興収13億7876万5600円という、今年公開の作品としては前週に公開された『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』に次ぐ好成績を記録。もし多くのディズニー作品の傾向通りにこのまま好調が続けば、『名探偵コナン』超えはもちろんのこと、累計興収100億超えも視野に入ってくる。

参考:『美女と野獣』、“ゲイ・モーメント”騒動で上映拒否も

 ちなみに、2014年3月に公開されて、最終興収255億円を記録した『アナと雪の女王』のオープニング3日間の興収は9億8640万5300円、土日2日間の興収は7億6000万円。今回の『美女と野獣』はいずれの数字も大きく上回っていて、映画関連ニュース・メディアの見出しでは「『アナ雪』超え」の文字が躍っている。オープニング成績で『アナ雪』を超えていることは事実だし、そこの部分を切り取って見出しにしてニュースとして煽るのもメディアのそれぞれの役割としては間違いではないだろう。ただ、映画の興行を「分析」するという立場からは、特に日本において「あの『アナ雪』を超えた」という表現はとても気軽に使える言葉ではない。

 つい先日も、日本では今週末公開となる『ワイルド・スピード ICE BREAK』が「オープニング世界新記録を樹立!」といった趣旨のニュースが映画関連ニュース・メディアを賑わせていたが、そうした景気のいい言葉には大体裏があるもの(『ワイルド・スピード ICE BREAK』の場合、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』などと違って中国とほぼ同時に公開できたことが大きく影響している)。もちろん、事実として間違いじゃない以上、それを配給側が宣伝文句として使う分には何の問題もない。ただ、Yahoo!ニュースを筆頭に「見出しのインパクト」が一人歩きしてしまいがちなこの時代において、各メディアはプレスリリース的な文言を右から左にただ流すことに対しては慎重な姿勢も必要だ。

 累計興収100億あたりが上限の「映画の大ヒット」と累計興収200億を超えるような「社会現象」の間には大きな壁がある。前者は必然の積み重ね(キャスト、監督、題材、話題性、公開規模など)によって実現することも可能だが、後者は狙ってできるようなことではないからこそ「社会現象」なのだ。サントラも爆発的なヒットを記録して、子供層を巻き込んで膨大なリピーター客を生み出した『アナ雪』のように社会現象化する気配は、今のところ今回の『美女と野獣』にはない。また、近年では最も『アナ雪』現象に近づいた『君の名は。』も、『アナ雪』を大幅に上回る期間公開され続けているにもかかわらず、結局『アナ雪』の累計興収には届くことなく、昨年12月には既に到達していた「日本国内歴代興収第4位」のまま劇場公開を終えようとしている。

 今週、全米での公開日が2019年11月27日になると発表されたばかりの『アナ雪』の続編(原題“Frozen 2”)。氷の世界が舞台とあってクリスマス・シーズンに合わせたかったのだろうが、そのせいもあって同じディズニー配給の『スター・ウォーズ』エピソード9の公開は、例年のクリスマス・シーズンではなくその年のサマー・シーズン(全米公開2019年5月24日)となってしまった。あの『スター・ウォーズ』(しかも、一応完結編になるとされる作品である)さえも動かしてしまう『アナ雪』。日本においても、もし本当に「『アナ雪』を超える」作品が今後現れるとしたら、それは次の『アナ雪』続編になるかもしれない。(宇野維正)