あのワインバルのサングリアは法律違反?

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「ワインバルでサングリアを提供」「飲みきれなかった焼酎を居酒屋から持ち帰る」よくあるサービスですが、もしかしてこれ、法律違反……?

新年度が始まる4月、歓迎会などで夜の宴席が普段より増えている人も多いのではないでしょうか。そんな場での話題の1つに「酒に関する雑学」があります。例えば「日本酒の大吟醸っていうのは、米を半分も削ってつくる贅沢な飲み物ものなんだぜ」とか、「日本では甘いイメージのあるロゼワインだけど、フランスでは辛口のものも多くて、実は白ワインより消費量が多いのよ」など、酒好きがこうしたウンチクを語り出すとキリがありません。

今回はそんな豆知識の中でも、皆さんにとってはあまり馴染みがないと思われる「酒税法」というテーマについて取り上げてみます。名前は堅苦しいですが、実は私たちの暮らし(正確には「酒飲みの暮らし」ですが)とつながっているところもあるのです。

ここでちょっとしたクイズです。次の中で酒税法に違反してしまう行為はどれでしょうか。

1. ワインバルが自家製のサングリアを出している
2. 客が飲み切れなかった焼酎のボトルを、居酒屋が持ち帰らせてあげる
3. 出張先で買ったウイスキーをネットオークションで販売する

■ワインバル自家製のサングリアは酒税法違反?

実は、ここで挙げた3つはすべて「法律違反」の可能性があるのです。一つずつ見ていきましょう。

Case1. ワインバルが自家製のサングリアを出している

酒税法ではお酒に何かを加える行為を、基本的には「新たなお酒をつくっている」と見なし、それを違法行為ととらえます。その前提の上で、例外事項を設定したり、あるいは事前に許可を受ければ良いとしたりしているのです。

例えば、「カクテル」と呼ばれる飲み物はお酒同士やお酒とジュース類を混ぜ合わせたものですが、法律では「直前に混ぜるのはオーケー」と定めているのでこれは合法です。

あるいは、飲食店が焼酎を使って自家製梅酒をつくることに関しても、「アルコール度数20度以上の蒸留酒をベースにすること」、そして「事前に申請して認可を得ること」をクリアしていれば問題にはなりません。

それでは、自家製サングリアについてはどうでしょうか? サングリアとは、ワインにオレンジなどのフルーツ類を漬けたお酒ですが、ここで問題になるのはベースがワインであることです。ワインはアルコール度数12〜15パーセント程度の醸造酒なので、「20度以上の蒸留酒」という先の条件を満たしていません。

税務署の酒類指導官部門に問い合わせたところ、「注文を受けてからワインとオレンジジュースを混ぜ合わせるのであれば問題ありませんが、『あらかじめ漬け込む』となると、それは違法行為になってしまいますね」という回答でした。つまり、飲食店がワインにフルーツを漬け込んで、合法的に自家製サングリアを作るのは難しい、ということになります。

Case 2. お客が飲み切れなかった焼酎のボトルを居酒屋が持ち帰らせてあげる

飲食店におけるお酒の提供について、厳しい免許制を採っている国は多くあります。海外で開業を計画している知り合いから「いやー、リカーライセンスがなかなかおりなくてね」という嘆きを聞くこともしばしばです。

そんな中、飲食店でアルコール類を提供することについて日本は極めて寛大で、届け出の必要すらありません(飲食店の開業には保健所検査などがありますが、開業後にお酒を出すのは自由です)。

ただし、これはあくまでも飲食店という場において「提供」することに限られています。酒の瓶を持って帰らせるという行為は、店側からすると「提供」ではなく「販売」に当たってしまい、そのためには酒類の販売免許が必要になってしまう(つまり「酒屋」の免許が必要になる)のです。

 

Case 3. 出張先で買ったウイスキーをネットオークションで販売する

これはやや判断が難しいケースです。売る場がネットであろうがリアル店舗であろうが、定期的に販売をしていれば、それは一種の商売とみなされますので、お酒の販売免許が必要です。ですから、例えば毎月のようにイギリスに出張に行っていて、その都度希少なウイスキーを購入し、日本国内でネットオークションに出品していたならば、それは酒税法違反に該当します。

しかし、自分が飲むため、あるいは誰かにあげるために買ったけれども余ってしまい、それをたまたまオークションに出したという程度ならば、まったく問題にはなりません。3のケースはその頻度や定期的かどうかという条件によって白黒が決まるわけです。

■知らないままやっていた、というケースは多い

1や2のケースは、知らないままそうした行為を行っている飲食店も多いでしょう。お店に調査が入り、酒税法違反となると罰金などの処罰の対象になることがあるので、関係者は注意が必要です。

さて、今回は何度も「酒税」という言葉を使ってきました。お酒の扱いについて法律で色々定められているのは、健康や治安などに対する配慮ももちろんありますが、その売上が税金とつながっているからでもあります。

平成27年の日本の酒税収入は約1兆3000億円ですが、これは同年の国税収入約60兆円に対して、2.2パーセントを占めています。これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれでしょうが、比較をしてみると「関税(1兆1170億円)」より多く、「相続税(1兆7610億円)」より少ないという規模です。もっとも比較されるであろうたばこ税は約9000億円ですので、酒税はたばこ税よりも1.5倍程度多いことがわかります。

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※国税収入や酒税収入の累年比較
https://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/shiori-gaikyo/shiori/2016/pdf/001.pdf#page=2

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ちなみにビール1缶(350ml)あたりの酒税は77円。どこで買うかによって実売価格はかなり異なりますが、仮に1本200円とすれば、その中で酒税が占めるのは実に40パーセントに上ります。ビールをはじめお酒を飲む皆さんは「自分はこうやって日本のために納税しているんだ!」とプラスに解釈して(自分に言い聞かせて?)、日々のアルコールライフを楽しむのがいいかもしれませんね。

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子安大輔(こやす・だいすけ)
カゲン取締役、飲食プロデューサー。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。株式会社カゲン(http://www.kagen.biz/)

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(子安大輔=文)