ビジネスのことは事業部が、会社のことは経営者が考えればよい?

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「ビジネスパートナー人事」という言葉をご存知ですか?これには2つの意味があり、1つは、事業部や部門の人事パートナーであること。もう1つは、会社のビジネスや経営者のパートナーとしての人事能力を意味します。

ビジネスの頼れる相棒としての人事

人事部は、事業部や部門だけでなく、経営者のパートナーとしても頼れる相棒になるべく、事業や部門のサポートを強化していこうという考え方です。
ところが残念なことに、ビジネスパートナーしての活躍を認められている人事部は、まだまだ多くありません。
大きな原因の1つに、人事部にはビジネスを実際に経験した人が少ないことが挙げられます。

誰も否定できないデータという事実を握る

たとえば、採用数を決めるプロセスで「来年はこれだけ人が欲しい」と事業部に言われても、その事業部のビジネスがわからないため、疑問を感じつつも現場からの人員要求に口をはさみにくくなってしまうのです。
こうした問題を解決し、ビジネスパートナー人事になり得るためには、基礎データを蓄積することです。
「データは事実であり、誰も否定できない」からです。

人員増加要請に対しイエスマンでいいのか?

ある事業部から「今年は忙しくて仕事が回らなったので、来年は人員を5%増加させたい」という話が来たとします。
もし何のデータもなければ、「確かにこの事業部は忙しいというウワサを聞くけれど、本当のところはどうなんだろう」と、疑う気持ちが湧くかもしれません。
しかし、次のようなデータが揃っていたらどうでしょう。

データがはじき出す人事的判断

● 全事業部の残業時間と総労働時間平均値とその事業部の比較(全社で比較しても相対的に忙しいのか?)
● 昨年予算を申請したときの人員数の要望値と、今年の実際の人員数(人員申告は、ビジネスの実態と合っているか?)
● 残業時間の分布(特定の個人に仕事が偏っていないかどうか。偏っているとすると、人員数を増やしても解決しない可能性がある)
● 研修への出席状況(必要なスキルアップの機会が、従業員に提供されているか?)
● 離職者比率の他事業部との比較(離職者が多くて仕事が回らないなら、マネジメント上の課題はないか?)

人員増加では解決できないビジネスの壁

挙げられた数値をチェックし、妥当な要求だと判断できれば、自信をもって増員を承諾できるでしょう。
とはいえ、人員の増加で「忙しい」を解決できるケースは、現実にはそれほど多くありません。
よくあるのは、現場のマイクロマネジメントで業務量が増えている、マネジャーが仕事の入口管理をできていない、スキル開発が不足していて特定の個人に仕事が集中しているといったケースです。

社員情報は人事部がすべて把握するべき理由

人事部が、ビジネスのすべてを事業部や経営者より詳しく把握することは無理かもしれません。
しかし、人に関連する情報については、詳しくデータを分析することによって、有効な策を経営者や現場に提案することができます。
ビジネスは事業部に、会社のことは経営者に聞くとしても、そこで働く社員の情報は、人事部がすべて把握していることが戦略人事のゴールになるのです。

【まとめ】

・ビジネスパートナー人事とは、事業部や部門だけでなく、経営者の頼れる相棒になるべく、事業や部門のサポートを強化すること。
・ビジネスパートナー人事になり得るためには、人財の基礎データを蓄積し、詳しく分析して提案する「攻め」の姿勢が重要。
・ビジネスは事業部に、会社のことは経営者に聞くとしても、そこで働く社員の情報は、人事部がすべて把握していることが戦略人事のゴールになるのです。

★ 参考図書『稼ぐ人財のつくり方 生産性を2倍にする「攻めの人事」』山極 毅 著
日本経済新聞出版社