シーズン序盤で見つけた「オッ」と思った選手(2)
MF鎌田大地(サガン鳥栖)

「今日の(鎌田)大地はあまりよくなかった」

 J1リーグ第7節のジュビロ磐田戦後、サガン鳥栖の選手たちは口をそろえて言った。


フィニッシャーとしての活躍も期待される鎌田大地 20歳で定位置をつかみ取っているMF鎌田大地に対し、年上のチームメイトが高い要求を突きつける。それは、彼の非凡さを認めているからこそ、だろう。

 現在のJ1リーグにおいて、20歳でチームの主力を担っている選手は他に、MF井手口陽介(ガンバ大阪)、FW鈴木優磨(鹿島アントラーズ)など片手で余るほどしかいない。

 では、鎌田という気鋭の選手の可能性をどこに見いだすべきか?

「プレースピードが思った以上に速い」

 対戦した選手の多くが、そう印象を語っている。その速さは単純な走力よりも、判断、選択の的確さにあるだろう。

 鎌田はプレーのイメージが豊富で、次々に頭に浮かぶ。その中で、敵を欺(あざむ)く一手を迅速に打てる。そのときのスキルも、すこぶる高い。それが、印象として”速さ”につながるのだろう。

 この速さは、練習によって身につけられない。ほとんど天性のものである。トップ下と言われるポジションの選手が持つ特性で、知識の蓄積というよりも芸術的な感性に近い。

「ボランチから見て、パスを受ける立ち位置やボールを運ぶタイミングがいいですね。ボランチが1枚(DFラインに)落ちると、すかさずその空いたスペースに落ちてきてボールを受けたり。距離感がいいから、味方だとすごくやりやすいです」

 そう証言するのは、同じリオ世代でFC東京のMFである橋本拳人だ。

「敵にすると、厄介ですね。意表を突くパスがあるし、”ウザいポジション”を取るし、とにかくプレーが読みにくい。試合によって、その波はあるような気がしますが」

 鎌田のプレーの本質は、「間合い」にあるだろう。

 高いボールスキルを持ち、体躯も大柄、リーチも長いことで、ボールを晒(さら)しながらも、相手を懐に入らせない。強引に入ってきたら、くるりと入れ替わる。判断を換えて逆手を打て、相手を幻惑することで、プレースピードを倍加させる。相手ディフェンダーが「しめた」と思った瞬間、置き去りにするのだ。

 時間を操れる選手――それが、鎌田の正体だろうか。

 Jリーグでは、中村憲剛(川崎フロンターレ)、中村俊輔(磐田)、遠藤保仁(G大阪)、清武弘嗣(セレッソ大阪)なども”時間を操る”能力を持っている。

 テンポを変え、テンポをずらし、あるいは緩めることで、ゲームを有利に運び、決定的なプレーを発動させる。相手が密集するトップ下のスモールスペースで、時間的猶予がないにもかかわらず、発想力と技術力でゴールシーンを創り出せる。例えば、相手の軸足(重心が乗った)側にボールをコントロールすることで、一瞬でも時間的優位に立つのだ。

「大地は不思議とパスが通る。間合いがいいと言うんですかね。(星稜高時代に)本田(圭佑)を見たとき以上のインパクトです」

 本田と高校、五輪、代表でともに戦っている鳥栖のエース、FW豊田陽平は、鎌田がデビューしたときにそう証言している。

 そして鎌田は、昨シーズンからマッシモ・フィッカデンティ監督が率いる鳥栖で、ファンタジスタとして殻を破ることに挑戦している。

「2トップを追い越して、ゴールのポジションに積極的に入って、得点を増やせ」

 フィッカデンティ監督は、鎌田にそう要求。パサーというよりも、フィニッシャーとしての役割も求めているのだ。

 鎌田にとって、それは簡単ではない挑戦だろう。

 実際、昨シーズン前半は迷いからか、本来の輝きが消えていた。求められたゴールも0だった。しかし、6月以降は7得点を記録。今シーズンはまだ1得点にとどまっているが、存在感は増しつつある。

 パスだけでなく、シュートにも卓抜したものを見せる。第5節のFC東京戦で決めたゴール、こぼれ球を押し込んだシーンはイージーに見えるかもしれないが、浮き球をボレーで叩く技術は出色だった。

 トップ下に特性がありながら、フィニッシャーとしても躍動。フランチェスコ・トッティ(ローマ)、アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)、マルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)らの系統に近いか。卓越したキックセンスを、セカンドストライカーとしても用いる。

 かつては本田も、自らをパサーと定義していた。それが、オランダのVVVフェンロで2部リーグに転落したことで、フィニッシャーの能力を開花させている。その後は、日本代表でもゴールすることによって道を切り開いてきた。

 鎌田がゴールを撃ち抜けるようになったとき――。それは日本サッカーにとっての祝祭を意味するだろう。

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