セクハラ、パワハラを言葉ひとつで撃退するには?

写真拡大

■お客様には何を言われても反撃できないのか

上司と部下、クライアントと営業、発注側と請負側。ビジネスの場においては、目に見えないパワーバランスが発生します。そのパワーバランスを悪用し、相手をおとしめて、自分が優位になるように持っていこうとする不届き者がいるのも事実です。

以下は、クライアントの社長に悩まされている女性営業の話です。

――よし、商談成立まで、あともう少し!――

そう思ったからこそ、私は社長のセクハラ発言に耐えてきたのに……。

先方のオフィスに出向くたび、社長は私に向かって、「胸が大きい」とか「お尻が大きい」など、私の体形をからかうようなことばかり言ってきた。そのたびにイヤな気持ちになったけれど、社長はかなりのご高齢だし、行きすぎた冗談だと思って、笑ってごまかしてきたのだ。

それなのに社長は、最後の最後に値引きを要求し、やんわりと断った私に対してこう言い放った。

「まったく女は、融通が利かないな。どうせ男に媚びを売って営業しているくせに」

内心怒りで震えていた私を一瞥したのち、社長はさらに言葉を継いだ。

「まあ、社としてのサービスが無理ってことなら、キミのサービスがあればそれでよしとしてもいいよ。今度ゆっくりと飲みにでも行こうや」

怒りを笑顔で無理やり包み込みながら、私は思った。

どうして私ばかり、こんな目にあわなければならないんだろう?

■大切な自分を防御するための敬語術

セクハラ、パワハラは、性別に関係はありません。立場の強い者が立場の弱い者にする嫌がらせは、すべてハラスメントです。

ハラスメントは、その行為をする側が悪いのであり、される側がとがめられるようなことがあってはなりません。罰せられるのは、ハラスメントの加害者であるべきです。

しかし、知らず知らずのうちに加害者につけこまれやすい応対をしがちな人もいるということを、ぜひ知っていただきたいのです。

たとえば、先ほどの女性は、イヤだ、不愉快だと感じる言葉を投げかけられても、「NO!」が言えずに、笑ってごまかしていました。その理由は、相手が商談中のクライアントだから。機嫌を損ねては大変だという思いがあるからです。

けれど、「NO!」を告げずにいると、相手は「この程度のセクハラは許してくれる子なんだ」と思い、さらにつけあがります。だからと言って、お客様に向かって、

「やめろ! このエロおやじ!」

……とは言えませんよね。そこで活用したいのが、大切な自分を防御するための敬語です。

ちょっと驚いた風を装いながら、
「そのようなご発言は、社長のお言葉とは思えません」

あるいは、少し怒りをにじませながら、
「そのようなことをおっしゃるとは、大変不愉快です」

敬語を活用することで、言いづらいことをはっきりと口に出せるようになります。

■敬語で距離を保ち、自分の意思をきっぱり伝える

敬語は、相手との適正な距離を保つためにも有効なツールです。

考えてみてください。遠慮のいらない親しい友達や家族の間で敬語を使うことはありませんよね。

一方で、ずけずけと自分のパーソナルスペースに入ってくる相手に対しては、あえて積極的に敬語を使って距離を保つことができます。

また、「笑ってごまかす」「語尾を濁しながらやんわりと断る」というのも、話の主導権を相手に取られてしまう危険な話し方です。飲みに誘われるのがイヤだったら、

「困るんですけど……」

ではなく、

「そのようなお誘いは大変困ります。お受けいたしかねます」

と、はっきり、きっぱり断言するべき。敬語で大切な自分の尊厳を守りましょう。

----------

大嶋利佳
研修講師、ビジネス書作家。ビジネスコミュニケーション全般に関する研修および書籍、雑誌記事、教材テキストの執筆監修を手がける。著者は『なぜあの女(ひと)の話し方は強くて美しいのか』など多数。近著に『闘う敬語』がある。
 
朝倉真弓
フリーライター、ストーリーライター。実用書やビジネス書の分野では企画やブックライティングを数多く務め、ストーリー仕立ての書籍を得意とする。自著は『女子の幸福論』『いままでで一番やさしい相続の本』など多数。近著に『闘う敬語』がある。
 

----------

(大嶋利佳=監修 朝倉真弓=文)