人類の第2の定住地として研究が進められている火星は、太陽からの距離が遠いために平均気温がセ氏マイナス30度と非常に低く、また大気が極めて薄いために、そのままでは人間が普通の生活を送ることができません。そのため、ロボットなどを先に送り込んで人間が住める状態にテラフォーミング(改造)させるという構想が語られているのですが、その中で「いっそのこと火星を地球と同じ太陽の公転軌道に乗せてハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に入れてしまえ」という考えが挙がっているようです。

火星は地球の約半分の赤道直径(約6794.4km)を持つ惑星で、地球の0.75%という非常に希薄な大気が存在しています。これは、重力が地球の40%しかないために大気を引き留めておけないことが理由とみられていますが、一方では地球とほぼ同じ自転周期(24時間39分35.244秒であることや、地軸が傾いているために四季があるなど、地球と似ている部分もあります。



By RHorning

火星は地球の1つ外側の公転軌道を周回しており、以下の図の濃い緑で示されている太陽系の「ハビタブルゾーン」からはギリギリ外れるといると考えられています。説によっては淡い緑のエリアまでをハビタブルゾーンとする考え方もありますが、それでも火星の非常に寒い環境や大気の薄さは人間にとって非常にハードルが高いことは間違いありません。



By EvenGreenerFish

そこで飛び出したアイデアが、「火星を地球と同じ公転軌道に持ってくればハビタブルゾーンに入っていいのではないか」という案。この案はさらに、地球との距離が近くなるために往復がしやすくなるというメリットもありそう。そんなアイデアを検証するムービーが公開されています。

Moving Mars to the Habitable ZoneMove Mars to the habitable zone and turn it into another Earth? Sure.Hashem Al-Ghailiさんの投稿 2017年4月24日


「人類は太陽系のハビタブルゾーンまで火星を引っ張ってくることができる」というムービー。はたしてそんなことが可能なのでしょうか。



その方法は、人工衛星の引力を使って徐々に火星を引っ張ってくるというもの。



そして、太陽系の「ハビタブルゾーン」の中にある軌道に乗せてしまうという壮大な構想です。太陽系に限らず、恒星系にはそれぞれのハビタブルゾーンが存在していると考えられており、それよりも近ければ灼熱地獄に、遠ければ極寒の地となって、地球に住むような生物が生きていけない環境になってしまいます。



火星をハビタブルゾーンに入れることができると、火星をテラフォーミングするペースを速くすることが可能になります。



ムービーでは、天体物理学者のニール・ドグラース・タイソンが「まず小さい隕石の軌道を変化させることからはじめ、次に大きな隕石を動かすということを続けていけば……」



「惑星の軌道をシフトさせることができないという理由が見つからない!」と、この説の実現性を語っています。



非常に興味深い案ですが、やはり実現に向けたハードルは低くなさそう。



まず、天体の軌道を人為的に操作することで、予期せぬ変化が起こることも考えられます。



それは、2つの天体が重力によって影響を及ぼしあうことで生じる「軌道共鳴」と呼ばれる現象。



1つの恒星系に含まれる天体は、お互いが作用し合ってバランスが取れた状態で公転しています。そのため、人為的に惑星の動きを変えてしまうことで共鳴に悪影響が及び、バランスの崩れによってどれかの天体が宇宙の彼方へはじき飛ばされるような事態が起こらないとも限りません。



また、火星の質量は地球の10分の1と考えられていますが、それでもなお、惑星1つを引っ張ってくるほどのエネルギーをどうやって生みだすのかは答えが見いだせていない状態。



そのため、今後の科学の発展を考慮したとしても、火星は現在の軌道のままでテラフォーミングすることのほうが現実的である、という考え方を示す科学者もいるようです。