プロ初ゴールをマークした椎橋(中央)。丸1年をリハビリに費やし、ようやくピッチに戻ってきた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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[ルヴァン杯]仙台 3-1 清水/4月26日/ユアスタ

 リーグでは前節、広島相手に勝利を掴みかけたが、終了間際に同点に追いつかれ、4試合勝利がない仙台。しかし広島戦は0-2から一度は3-2と逆転するなど、チーム状況に光明も見えた試合でもあった。
 
 そうしたなかで迎えた26日のYBCルヴァンカップの清水戦。31分、カウンターで清水FWのチアゴ・アウベスにゴールを許したが、後半開始早々46分に三田啓貴のゴールで同点。そして逆転ゴールを決めたのはまたしても公式戦初先発の若手選手だった。
 
 68分、仙台は敵陣深くの左サイドでFKのチャンスを得ると、三田のファーサイドへのクロスからヘディングシュートを決めたのは市立船橋高出身2年目のMF椎橋慧也。公式戦初先発初ゴールは貴重な逆転ゴールとなった。83分には先日ルヴァンカップ磐田戦でやはり公式戦初先発初ゴールを決めたMF佐々木匠のスルーパスからFWクリスランがゴールを決めて勝負あり。3-1で逆転勝利を挙げた。
 
 本来はボランチの椎橋だが、この日は3バックの右サイドでの先発出場だった。
 
「元々ボランチの選手ですから、ビルドアップの部分で大きな期待をしていました。実際紅白戦でもああいうくさびのパスは何本も通していて、そこをしっかりと見ることができて、タイミングが良いのは彼のストロングだと思います。そこを今日は存分に発揮してくれました」
 渡邉晋監督がこのように高評価を下した通り、前線へ何度も正確なくさびのパスを供給し、攻撃のリズムを作っていた。
 
 椎橋はこの試合のため、周到な準備をしていた。
 
「前線のタクさん(野沢)や(梁)勇基さんや(西村)拓真君と事前にどういう時に欲しいとか、相手がどうだからここにつけてほしい、ということをよく話したので、落ち着いて前線を見られたかなと思います」
 
 くさびのパスの受け手となる選手と事前にしっかり話し合い、受けやすいパスを出すことに成功した。さらに守備の選手とも密にコミュニケーションを取り合った。
「相手の外国人選手の一人が速くて左利きでした。蜂須賀さんと大岩さんと絶え間なくしゃべって対応するしかないと思ってやって、抜け目なくやれたと思います」
 
 渡邉監督は「前半の1シーン2シーン、守備で相手に入れ替わられそうな場面もありましたが、初めてJリーグの外国人選手と対戦して肌感覚で掴めたものもあり、次につながると思います」と守備でも課題は挙げたが、まずまずの評価だった。それでも椎橋は「スピードのある選手にどう対応するかとか、逆サイドを見ての配球や、前線の選手への配球を日々の練習で突き詰めたい」とリーグ戦での出場も見据え、反省を忘れなかった。
 
 椎橋は市立船橋高で2年前にキャプテンを務め、昨シーズン仙台に加入したが、キャンプ前に右足関節内踝骨折遷延癒合という負傷が発覚。ほぼ丸一年をリハビリに費やした。
 
「昨年1年間は怪我でサッカーをやれていなかったので、ピッチに立った時感極まりました。いろんな人の支えでここに立ったのだと実感して、『今日はやってやるぞ』という想いで入ったのが結果につながったと思います」
 並々ならぬ思いが好結果につながった。
 
「昨年お世話になったトレーナーさんや、ドクター、通っていた神奈川の病院の理学療法士さんに良くしてもらいましたので、今日のことを伝えたいです」とリハビリ中お世話になった方々への感謝を忘れなかった椎橋。そして「あまり緊張はしません。やれることをイメージして整理して試合に臨めたので、落ち着いてゲームを作れたと思います。市立船橋の時、朝岡隆蔵監督から『お前緊張してるのか』といつも言われたのを思い出すので、そうした言葉が響いています」と堂々と答えた。お世話になった人への感謝を忘れない人間性と、物怖じしないハートの強さ。これぞ伝統の市立船橋高でキャプテンとしてチームを牽引した男の姿である。
 
 仙台にはその市立船橋高キャプテンの大先輩DF増嶋竜也がいる。増嶋から何かアドバイスを受けたかを聞くと「日々アドバイスをいただいているので特にありませんが、僕がやべっちFCのデジっちでやった『足元にお手元』にハマっているらしく、『点を取ったら絶対にやれ』と言われていました。忘れていたのでたぶん後でシメられます」。
 
 大先輩から試合後に“シメられた”かどうかは定かではないが、良き先輩にも恵まれ、プロとしての一歩を最高の形で踏み出した椎橋。「椎橋慧也という選手がいるぞ、ということをサポーターの皆さんにもっと知ってほしい」。そのためにはこの活躍をリーグ戦に何としてでもつなげたい。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)