「Thinkstock」より

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 住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して実施されている住宅ローンの「フラット35」。原則的に35年間金利が変わらず、返済額も確定している全期間固定金利型なので、安心して利用できます。そのフラット35に付随する団体信用生命保険(以下、団信)の仕組みが今年の10月1日の申込受付分から変更されるのですが、団信に加入する場合には10月以降に申し込んだほうがトクになるというのです。どういうことなのでしょうか――。

●超低金利で最長35年間の金利をフィックス

 住宅ローンには市中の金利動向によって適用金利、返済額が変わる変動金利型と、あらかじめ決められた金利が変わらない固定金利型があります。ただし、固定金利型といっても、固定期間が2年、3年、10年などの一定期間に限られる固定期間選択型と、完済までの金利が確定している全期間固定金利型があります。

 図表1にあるように、当初の金利は変動金利型が最も低いのですが、このタイプは借入後に金利が上がると6年目以降の返済額が大幅に増えるリスクがあります。現在のような超低金利下では、今以下になるメリットよりは、今以上になるリスクのほうがはるかに大きいのであまりお勧めできません。

 反対に、全期間固定金利型の代表格であるフラット35は、返済期間21年以上、融資率9割以下の場合、1.12%の金利が最長35年間保証されるのですから、たいへん安心です。景気が回復すれば、市中の金利が上がり、変動金利型の適用金利が1.12%以上になる可能性が極めて高いでしょうから、今のような超低金利の時期こそ、変動金利型より若干金利が高くても、ぜひとも安全な全期間固定金利型を利用していただきたいものです。

●フラット35の団信保険料は年払い

 その全期間固定金利型の代表格がフラット35ですが、今年の10月からそのフラット35の団信の扱いが変更にされます。

 住宅ローンの団信というのは、取扱金融機関が住宅ローン利用者を被保険者として生命保険に加入するもので、利用者に万一のことがあった場合には保険会社から金融機関に、その時点でのローン残高相当額の保険金が支払われて、ローン残高はゼロになります。つまり、家族にはローン返済の義務のないマイホームが残るということです。

 民間ローンでは、この団信への加入が義務で、健康面などの問題から団信に加入できない場合には原則的に住宅ローンを利用できません。ただし、金利の高いワイド団信に入って住宅ローンを利用する方法はあります。

 この民間ローンでは団信への加入が義務である半面、保険料は金利のなかに含まれ、利用者は別途保険料を負担する必要がないというメリットがあります。

 それに対して、フラット35では、健康上の理由その他の事情で団信に加入されない方でもフラット35の利用は可能ですが、その場合には、金利負担とは別に保険料を毎年支払わなければなりません。

 これが、結構大きいのです。借入額3000万円、返済期間35年、元利均等、借入金利1.12%、機構団信に1人で可能する場合、1年目は約10.7万円で、2年目は10.6万円、3年目10.3万円、4年目10.0万円とローン残高の減少に応じて保険料は減っていくものの、35年間の総支払額は約204万円に達します。

●うっかり支払いを忘れると無保険状態に

 ですから、利用者は毎月のローン支払いとは別に、この団信保険料の引き落としを念頭に入れて口座を管理する必要があります。うっかりこの支払いを忘れて残高不足などで口座引き落としができないと、場合によっては無保険状態になって、万一のことがあっても保険金が下りないといったトラブルが発生しかねません。

 こうした不便さやリスクを解消するため、住宅金融支援機構では10月1日申し込み分から、フラット35の団信を民間ローンと同様に金利に含めて、毎月返済額のなかに保険料を含めて引き落とす仕組みに移行することになりました。これによって、別途引き落としの必要がなくなるので、利用者の利便性が格段に向上します。

 しかも、実質的な負担額が軽減されます。図表2をご覧ください。これは、借入額3000万円、35年元利均等、ボーナス返済なし、機構団信に1人で加入する場合の例ですが、今年9月末までの現行制度で申し込んだ場合、金利は1.12%で、毎月返済額は8万6373円ですから、35年間の総返済額は約3628万円です。

 それに先に触れたように、毎年団信保険料の支払いがあります。1年目は約10.7万円で、35年間の総額は約204万円ですから、毎月返済額と団信保険料を合わせた35年間の総支払額は約3832万円になります。

●毎月返済は増えても総支払額ではトクできる

 それに対して、10月1日以降の新制度では、団信保険料が金利に含まれるため金利が少し上がります(ここでは試算のための仮の数値として、1.12%から1.40%になるとしています)。1.12%なら毎月8万円台の返済額が、1.40%だと9万392円に増えます。35年間の総返済額は約3797万円になる計算です。

 住宅ローンの総返済額だけを比較すると、現行制度の約3628万円のほうが得策ですが、団信保険料を加味すると、現行制度では約3832万円ですから、金利が高くなっても団信保険料の負担のない新制度の約3797万円のほうが総支払額は約35万円少なくなるのです。

 金利動向や価格など、他の要素は無視して団信保険料の扱いだけを考慮した場合には、9月末までに申し込むよりは、10月以降にしたほうが得策ということになります。

●10月以降の団信の保障範囲も充実

 この保険料支払いの仕組み変更と同時に、10月1日以降の新団信では保障の範囲も充実します。

 現在の制度では、保険金の支払い対象になるのは高度障害と死亡の場合です。高度障害というのはどういう状態かといえば、生命保険文化センターによると次のようなケースです。

・両目の視力を全く永久に失ったもの
・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
・中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの
・両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの
・1上肢の用を全く永久に失い、かつ1下肢を足関節以上で失ったもの

 新制度では、図表3にあるように死亡以外の保障の範囲が、この「高度障害」から「身体障害保障」に変更されます。上にある高度障害以外でも、身体障害者福祉法に定める障害等級(1・2級)の「身体障害者手帳」を交付されれば保険金の支払い対象になります。

 具体的な例としては、ペースメーカーを植え込んだり、人工透析が不可欠になって日常生活活動が極度に制限される状態などが当てはまります。ただし、高度障害の一部については、新団信では保障対象ではなくなるものもあります。また、一定の保険料の上乗せを行って3大疾病保障団信に加入する場合には、3大疾病のほか、介護保障も保険金支払いの対象に加わります。

●10月からフラット35Sの金利引下げ幅は0.25%に

 いいことばかりではありません。フラット35には、認定低炭素住宅・長期優良住宅など、基本性能の高い住宅を対象に、当初5年間または10年間の金利を0.30%引き下げるフラット35Sという制度があります。10月1日からの申込受付分について、このフラット35Sの金利引下げ幅が現行の0.30%から0.25%に縮小されるのです。

 フラット35Sを申し込む場合には、金利引下げ幅が小さくなる前に申し込んだほうがいいことになりますが、ただ、これも団信に加入する場合には、やはり10月1日以降のほうが得策になる点では変わりなさそうです。

 図表4をご覧ください。9月末までの金利引下げ幅0.30%で申し込んだ場合と、金利引下げ幅が0.25%になる10月以降を比較してみました。団信保険料を含めた総支払額は、9月末までなら約3745万円ですが、10月以降であれば約3724万円になります。21万円ほど、10月1日以降のほうがトクになる計算です。

 通常のフラット35だとその差は35万円でしたから、金利引下げ幅縮小によってやや負担軽減額は小さくなりますが、それでも10月以降が有利であることは変わりません。

 ただ、9月までに現行制度で申し込んでも、10月以降新制度に申し込み直すことができるので、10月以前にどうしてもほしい物件が出てきた場合には、すぐに申し込んだほうがいいかもしれません。二度と同じ物件は出てこないのですから、そのあたりの判断は自己責任でなさってください。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)