「Thinkstock」より

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●「税金」と「ふるさと納税」

 最近、税収が減少し財政難に陥っている首都圏の地方自治体があるという話をよく聞きます。この税収減の要因のひとつに「ふるさと納税」があるとも報じられています。生まれ故郷の公共団体や応援したい地方公共団体に寄付することにより、その地の特産品等をもらえるというふるさと納税制度には、主に次の3者が関与します。

(1)首都圏に在住しながらふるさと納税を行い、納税調整を行う一般納税者

(2)税収増加を図るため、特産品のほかにも、高価な品物をふるさと納税のお礼として交付することをPRする地方公共団体

(3)ふるさと納税による経済活性化を図る国

 このふるさと納税という制度には、法的にみるとさまざまな疑問点・問題点があります。多くの方々は、所得税などの税金は給料から控除されているため、自発的に納税しているという感覚が小さく、そもそも「税金」とは法的にみてどういうものなの? という疑問を持つ方も多いと思います。

 そこで今回は、ふるさと納税に関する考察を通じて、改めて税金について考えてみたいと思います。

●憲法と司法から考える「税金」の定義

 まず、憲法は税金に関し、第30条において「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」と規定し、さらに、第84条において「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定しています。

 つまり、憲法は「日本国民は、国民の義務として税金を納めなければならない。なお、その税金は国会が決めなければならない」と明記しています。

 次に、司法のトップである最高裁判所は、「税金」について、次のように述べています。

「国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法84条に規定する租税に当たるというべき」(最判平成18年3月1日民集60巻2号587頁)

 ここで、ふるさと納税との関係で注目してほしいのは、「特別の給付に対する反対給付としてでなく」という箇所です。

 つまり、地方公共団体たる地元の市町村に金銭を納めた見返りとして、その土地の特産品等を受け取った場合、特産品等が「特別の給付」に、地元に納めた金銭が「反対給付」にあたり、最高裁のいう「税金」の定義に当てはまらず、ふるさと納税は税金といえないのではないかという疑問点が生じるのです。

 この疑問点に対しては、特産品等は地元等に金銭を納めてくれた対価としてではなく、あくまでもお礼として納付者に交付するものであり、また、納めた金額と比較して僅少な価格の特産品等を交付する(例えば、3万円を地元等に納めてくれた人に対して3000円相当の特産品等を交付する)ので、納付金額と特産品等との間に価値的なつり合いは存在せず、納付金銭は特産品等に対する反対給付といえません。したがって、ふるさと納税はれっきとした税金であると考えることもできるでしょう。

 これに対しては、ふるさと納税はあくまでも寄付金であり、国や地方公共団体が課税権に基づいて徴収する税金にそもそも該当しないので、上の議論は無意味であるという意見もあります。

 しかしながら、ふるさと納税として納めた額のうち一定の金額は所得税から還付され、さらに一定の金額が翌年の住民税から控除されるわけですから、ふるさと納税は税金の前払い的性格を持つものであり、結局のところ税金と考えるのが自然です。
 
 以上のように、ふるさと納税は税金であることは確かなようです。

●ふるさと納税の本音

 冒頭で述べたように、CMによる広告等もあってか、現在、生まれ故郷の地方公共団体や、故郷ではなくとも応援したい地方公共団体にふるさと納税をされる方が増加しています。

 従来の税金は、納めた税金の使い道を選択できず、当然、特産品等ももらえませんでした。

 しかし、ふるさと納税はどこに税金を納めるか、また納めた税金の使い道も一定の範囲で選択でき、さらには各地の特産品等がもらえます。

 そうすると、税金を納めているのになんの恩恵もない、何に使っているのかもわからない東京都や区などの地方自治体よりも、生まれ故郷やゆかりのある地方自治体、応援したい地方自治体にふるさと納税をしたくなるのは、まさに人情ではないでしょうか。
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士、前里康平/早稲田大学大学院法務研究科)