【恋する歌舞伎】第21回:禁酒を破るほどの悔しい出来事。酔いに任せた大胆な訴えは吉と出るか凶と出るか!?

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日本の伝統芸能・歌舞伎。興味はあるけどちょっと難しそう、わかりづらそう…なんて思ってない? 実は歌舞伎は恋愛要素も豊富。だから女子が観たらドキドキするような内容もたくさん。そんな歌舞伎の世界に触れてもらおうと、歌舞伎演目を恋愛の観点でみるこの連載。古典ながら現代にも通じるラブストーリーということをわかりやすく伝えるために、イラストは現代風に超訳してお届け。

今回はラブストーリーではないものの、男女関係が発端で起こった事件に注目。五月歌舞伎座で上演予定の『魚屋宗五郎 ( さかなやそうごろう )』に注目します!

◆【1】妹のおかげで生活が楽になった魚屋一家。ところがその妹が殺されて…


ここは芝明神界隈で魚屋を営む宗五郎の家。
それまで借金もあるほど貧しい生活を送っていたが、美人で活発な妹・お蔦(つた)が旗本・磯部主計之助(いそべかずえのすけ)というお殿様に気に入られ、妾(めかけ)奉公に出ることになる。
その支度金をもらったことで、家族の生活は楽になった。
ところがそのお蔦が殺されたという知らせ。
なんでも、城内で不義を働き手討ちになったというのだ。
あんなに性格の良い妹がなぜ…
その死を不審に思いながらも、今日は弔いのために家族と近親者で集まりお蔦を偲んでいる。
妹の死を悲しみ沈み込む宗五郎に、周囲は
「好きな酒でも飲んで気晴らしをすれば」
と勧めるが、
今は禁酒を誓っているため乗ろうとはしない。

◆【2】妹の死の真相が明らかに。やり場のない怒りに兄・宗五郎はとうとう禁酒を破る!


と、そこへやってきたのは磯部家で奉公していたお蔦の同僚・おなぎ。彼女は事前にお酒を届けさせ、宗五郎の家に焼香をしにやってくる。
そしてお蔦家族の前で、おなぎから聞かされたのは「
お蔦さんは悪くありません。ひょんなことから不義の疑いをかけられ、殺されたのです!」
という衝撃の発言だった。
詳細を聞くと、お蔦の飼い猫がいなくなったため、探しているところへ磯部家の用人・岩上典蔵がやってきた。
典蔵はお蔦を手籠めにしようとしたが失敗。
しかも、そのときお蔦の悲鳴を聞き駆けつけ介抱した浦戸紋三郎に罪をなすりつけたという。
それを信じた短慮なお殿様は、お蔦が城内で他の男と不義密通を働いたとして、髻を持って引き回しにするなど散々なぶった挙げ句、手討ちにしたというのだ…。
あまりに非道な話に、一同悔し涙に暮れる。
怒りが抑えきれず、妹を想いやるせなくなる宗五郎は、とうとう禁酒を破ってしまう。
実は宗五郎は大層な酒好きで、酒乱の気がある。
そのため金比羅様に誓いを立てて酒を絶っていたのだった。

◆【3】飲みだしたら止まらない!これまでの鬱憤がお酒によって解放される


はじめは断固として、酒は飲まないと決めていた宗五郎だが、一旦飲みだすともう止まらない。
一杯、二杯とすすみ、湯呑では間に合わず、やがて妻・おはまの制止も聞かず、片口で飲み始め、終いにはそのまま樽に口をつけとうとう飲み干してしまった!
お酒の力も相まって、お殿様への憎しみが高まり、とうとう宗五郎は直談判をするべく、千鳥足で磯部の屋敷へと向かっていく。
これは一大事とおはまはその後を追う。
酒乱と化した宗五郎は、お屋敷の玄関先で
「殿に合わせろ!」
と暴れ出すが、それを制しにやってきたのは憎き岩上典蔵。
宗五郎は縛り上げられてしまう。
おはまは酒に酔ったことでの衝動だと許しを請うが、聞き入れられない。
遺恨ある相手とわかっているのかいないのか、宗五郎は典蔵を蹴り飛ばしたので、軌り捨てられそうになるが、あわやというところで助けたのは、家老・浦戸十左衛門。
お蔦との不義をなすりつけられた紋三郎の兄である。
話のわかりそうな十左衛門に、宗五郎は妹が濡れ衣を着せられたこと、兄として無念の胸中を吐露するが、そのうちに眠り込んでしまう。

◆【4】心地よい眠りから一転、そこは一瞬で目が覚める場所だった。もはや死罪は免れられない!?


眠りこんだおかげですっかり酔いも覚めた宗五郎が、あたりを見回すとそこはお屋敷の庭先。
おはまにこれまでの失態を聞かされ、己のしでかした事の大きさにやっと気が付くのだった。
そこへやってきたのは十左衛門。
「自分が取りなしをしたから安心して控えろ」
と言葉を残していった直後に、なんとお殿様が現れる。
屋敷の庭先でこれだけの騒ぎを起こし、もはやお手討ちは免れないと覚悟をしていたが、殿の口から出たのは謝罪の言葉だった。
お蔦の件で事実を確認しなかったことを詫び、弔問金も出すという。
悪の根源である伝蔵にも懲罰がくだると聞き、これで妹の無念を晴らすことができると、ほっと胸をなでおろす宗五郎なのだった。

◆『新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎(しんさらやしきつきのあまがさ さかなやそうごろう)』

河竹黙阿弥作。明治16年5月東京市村座初演。皿屋敷の趣向(家宝の皿を割った咎により、腰元のお菊が井戸に投げ込まれる)を基に新作として書かれた作品。

(監修・文/関亜弓 イラスト/カマタミワ)