「Jリーグで輝く未来の代表候補、可能性を秘める“0cap”の11人」

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UAEとタイ戦がつい先日のことのように感じるが、早いものであれから約一ヶ月が経過した。

次なる代表戦の焦点は、シリアとの国際親善試合を挟んでのイラクとのワールドカップ最終予選。開催は6月だが、「まだ二ヶ月ある」というよりは「もう二ヶ月しかない」という表現が正しいだろう。

そして、代表戦へのカウントダウンが始まると注目されるのが、ヴァイッド・ハリルホジッチが発表する招集リストである。

一部メディアが、「ハリルホジッチがミランで沈みゆく本田圭佑に対して、所属クラブで出場がない状態が続くと、今後は招集できないとのメールを送った」と報じかと思えば、また別のところでは、「シリアとの親善試合は、出場機会の少ない欧州組のコンディション調整の場としても考えられている」との記事を配信するなど、既にその情報は錯綜中。はたして最終的に指揮官がいかなる決断を下すのか…日を追うごとにその注目度は増していくことだろう。

さて、少し前置きが長くなってしまったが、このコラムではその日本代表の選考について、別の角度から切り込んでみたい。

題して「Jリーグで輝く未来の代表候補、可能性を秘める“0cap”の11人」だ。

新シーズンのJリーグが幕を開け、まだまだ序盤戦ではあるものの、注目に値するパフォーマンスを披露する逸材たちが各所で輝きを放っていることは、国内サッカー通であれば、ご存知の通り。

今回は、その中から現段階ではA代表デビューを成し遂げていない選手のみに焦点を当て、ハリルホジッチに推薦したい11人を選出した。

「いつでも代表に呼ばれてもおかしくはない実力を備える者」、「将来性を含めて期待感を漂わせる者」と顔ぶれは多士済々。

個人的な期待感も含まれているため、賛否両論はあるだろうが、ご一読頂けると幸いだ。

GK:中村航輔(柏レイソル)

初めは最後尾からの選考とするが、2016シーズンに柏レイソルでJ1デビューを果たすや否や、瞬く間に不動の守護神へと成長した中村航輔の名を挙げたい。

一部Jリーグファンの中では、「近い将来、彼がA代表の守護神の座につく」と予想する声もあるようだが、かくいう筆者も“中村航輔・信者”の一人である。「近い将来」というのがどれほどのスパンになるか推し量ることは難しいが、今予選にも予備登録として名を連ねている点を見ても、首脳陣が注目していることも間違いないだろう。

彼には様々な点で見るべきところがあるが、やはり、1vs1の場面で見せる「絶対に止めてやる!」という声まで聞こえてくるような気迫十分のセービング。また、味方ディフェンダーが諦めかけるようなきわどいシュートに対しても難なく対応してしまう、超人的な反応速度が真骨頂。上背やフィジカルの面で物足りなさが残るが、シュートストップという面においては、既にJ最高峰といっても差し支えないだろう。年齢もまだ22歳。ここに経験値が積み重なれば、より“本格化”していくはずだ。

今季は立ち上がりこそ、チームの連敗に引き連られるような形でやや淡白なプレーが目立ったが、守備陣も引き締まり勝ち点を稼げるようになってからは、自身のパフォーマンスも復調。第8節の横浜F・マリノスとの試合でも、チームを完封勝利に導くセーブを連発した。

CB:三浦弦太(ガンバ大阪)

昨年まで所属していた清水エスパルスでも一定の評価を得ていたが、ガンバ大阪に移籍を果たした今季、彼の知名度と評価がうなぎ上りだ。急成長を見せている若手を数多く抱えるJリーグだが、「ここ一年で最も評価を上げた一人」と評しても過言ではないだろう。

日本人離れした類稀な跳躍力、正確で豪快なロングフィードを特長に挙げる声は多いが、筆者が注視しているポイントは“その一つ前”にある。

空中戦では、単純に「ジャンプ勝負」に持ち込むのではなく、相手選手の力量や距離感に合わせて飛ぶタイミングを調節し、22歳にして「駆け引き勝負」を敢行。また、ロングフィードの場面では、そのキックの質もさることながら、「まず遠くを見る」という意識の徹底がうかがわせるルックアップを試合を通して継続。ディフェンダーの選手は、どうしても近いところに視点が行きがちなものだが、彼のこの“癖”は、その他多くの選手と一線を画している。

他にもインターセプトに誘い込むための巧妙なポジショニング、1vs1の場面でボールホルダーにスピードを乗らせないための間合いの詰め方など、ベテラン選手が見ていても勉強になる動きは多く、「一つ一つのアクションに将来性を感じさせる」希少な逸材である。

CB:奈良竜樹(川崎フロンターレ)

これまで不運なタイミングでの怪我により、立身出世の機会を失ってきたイメージが強いが、今季はその鬱憤を晴らすかのようなパフォーマンスを見せてくれている。

特筆すべきは対人戦の強さで、空陸を問わずに信頼に値。己よりも恵まれた体躯を備えた外国人選手を相手にしても十二分に渡り合う力強さは、「日本人センターバック」としては最高峰にある。

しかし、彼が決して力任せなフィジカルモンスターでないことも欠かさずに触れておこう。人に対する強さもさることながら、局地戦のバトル以外では、積極的なコーチングで周りを動かしているからだ。これは、20歳に満たない時からベテランDFたちにも躊躇なく声を掛けてきたキャラクターが成せる技の一つと言えるかもしれないが、この性格は実力者がひしめく日本代表においても大きな武器になると言えるだろう。

今季はアルビレックス新潟から舞行龍ジェームズが加入するなど、チーム内の競争相手のレベルもアップした。ここまではレギュラーポジションを掴んでいるが、まずは、ライバルとの競争にしっかりと勝ち、「川崎フロンターレになくてはならない存在になること」が当面の課題か。

RB:小池龍太(柏レイソル)

一見すると、170cmにも満たないその小さな体は頼りないかもしれないが、彼をなめてかかるとえらい目に逢う。直近でその餌食となったのが、横浜F・マリノスの絶対的エースである齋藤学だ。J1第8節に小池龍太と同サイドで対峙することになったのだが、90分を通してシュートを撃てず完封されたのである。

柏レイソルはこの試合を前に齋藤対策として、小池とボランチ、もしくはサイドハーフとの連動で抑えることを準備してきた。だが、蓋を開けてみると、いい意味で想像していた展開にはならなかった。試合後に指揮官の下平隆宏は「今日は驚くぐらい小池が齋藤学選手を抑えた。何より小池が1vs1の対応でほぼ何もさせなかった」と賞賛したように、ほとんどの場面において個人能力だけで封じてしまったのだ。

無論、だからといって彼の今後の成功が約束されたわけではない。元々の彼の持ち味は攻撃面にある。さらに上の高みを目指すのであれば、相手エースを封じるだけではなく、攻撃参加の場面でも存在感を発揮できるレベルに辿りつかなくてはならないだろう。しかし、柏の右サイドで一種の“ジャイアントキリング”を発生させたことは事実だ。

少なくとも筆者は、ポジションや状況こそ異なるものの、かつて長友佑都がFC東京の強化指定選手だった頃、当時東京ヴェルディで猛威を振るっていたフッキを完封した時のインパクトに似たものを感じた。

LB:松原后(清水エスパルス)

“マイアミの奇跡”の一員としても知られ、国内外の様々なクラブでプレーしたFW松原良香を叔父に持つ俊英。

日本人サイドバックには数少ない「攻撃力を備える大柄なレフティー」で、ゴール前に進入して放つシュートは「FW出身」という肩書きも頷ける破壊力。また、守備面では、182cm76kgの体格を活かした競り合いの強さと走力で清水DF陣を支えており、今後どのような選手へと成長していくかのか楽しみだ。ややクロスボールの精度にバラつきが見られるのは課題だが、現在のA代表組とは違った特長を持っており、そこを伸ばし続けて欲しいところである。

現時点に関して言えば、彼がすぐさま日の丸を身に付けるようなケースは考えにくいだろう。まだまだJリーグでの実績を積み重ねていく段階だ。だが、ここ1〜2年で大きく飛躍する可能性は十分に持っている。

DH:橋本拳人(FC東京)

無骨ながらも実直に“ピンチの芽”を潰し続け、逞しい成長を見せつつある大型ボランチ。

どうしてもボールを奪う瞬間に目が行きがちだが、常に敵味方の位置関係を確認しながらポジショニングを調整し、ここぞと見るや鋭い出足でボールをかっさらう技術は、見ていて非常に爽快。少し前まではポリバレント性が評価され、便利屋としての扱いが目立ったが、今季はここまでFC東京の心臓部をしっかりと担い、高萩洋次郎が故障離脱後も変らぬパフォーマンスを継続している。

また、これまではあまり印象に残らなかった攻撃面でのレベルアップについても触れておきたい。上述のように敵味方の位置関係を確認できている点は、攻撃の場面でも活かされているように見受けられ、機を見た攻撃参加のタイミングやシュート時の落ち着きが増している印象だ。実際にその向上はゴールという数字にも表れており、既にここまで2ゴールを記録。今季は、昨季に彼が1シーズンをかけて積み上げた4ゴールにもすぐに追い付きそうな勢いである。

攻撃の組み立てやトップスピード時におけるサイドステップなどには大きな改善の余地があるものの、そのポテンシャルの高さは是非とも世界を目標にして欲しいレベル。個人的にも、とりわけ注目している選手の一人である。

DH:高橋義希(サガン鳥栖)

地味ではありながらもチームに与える貢献度はヒーロー級。Jリーグにおいて、走力を武器とする代表格、サガン鳥栖の屋台骨を担うダイナミズムは、30歳を越えても衰えなしだ。

今季も1試合における走行距離ランキングで毎試合のように上位を独占しているように、その運動量が取上げられることが多いが、ただ闇雲に走るのではなく、スイッチのオン・オフの切り替えの上手さもハイレベル。相手からボールを奪うだけではなく、的確なタイミングで攻め上がり、正確な技術力でチャンスを創出。第2節の川崎戦では、技ありのボレーシュートで得点も奪ってみせた。

弱冠20歳でキャプテンマークを巻くなど、若くして各方面から注目を集め、一時はJ2時代に対戦した名波浩(現ジュビロ磐田監督)から「日本代表に呼ばれてもおかしくない」と評されたこともあったが、気付いてみたら円熟の域。いかなるチーム状況においてもタスクをきっちりとこなす戦術遂行能力、そして、安定感の高さは日本代表においても力になってくれると思うのだが・・・。

SH:大森晃太郎(ヴィッセル神戸)

ガンバ大阪のアカデミー出身でありながら、同じ関西勢のヴィッセル神戸への加入を決断したことにより、批判的に見る向きも一部であったが、ネガティブな声を結果でかき消している。

新たなチームでは主に中盤の左サイドを任され、ポジションに変に囚われることなく、持ち前のモビリティーでピッチを所狭しと躍動。技術力を活かしたチャンスメイク、正確且つ鋭いシュートで攻撃陣を牽引するだけではなく、守備面でも積極的なチェイシングからボールを奪うなど、クリムゾンレッドのキーマンを担っている。

時折見られるムラッ気が玉に瑕だが、トータルバランスに秀で、周囲を活かすことも自ら活きることも可能な多様性は、連携構築の時間が限られている日本代表でも重宝されるはずだ。

大怪我を負ったレアンドロが復帰し、さらにあのルーカス・ポドルスキが合流するであろう夏以降が彼の正念場となるだろうが、以降も活躍を継続できれば、その評価はさらに高まることだろう。

SH:関根貴大(浦和レッズ)

プロデビューからわずか2年で、常にリーグ優勝を争う集団の中でレギュラーポジションを掴んだ小兵アタッカー。

静止時から一瞬でトップスピードに入る瞬発力に敏捷性、左右両足を自在に使いわけるドリブル、味方のゴールをお膳立てする正確なクロスボール、右サイドを主戦場としながらも左サイドもソツなくこなす柔軟性など、そのストロングポイントは枚挙に暇がない。浦和レッズでは主に3-4-2-1のウィングバックでプレーしているが、元々はサイドハーフを主戦場としているタイプであるため、より攻撃に専念できる前目の位置で起用されても不自由なくこなすはずだ。

現段階で代表入りを考えるとなると、4-2-3-1の「3」の部分。実力者がひしめく激戦区が彼の狙うべきポジションとなり、得点力の面で物足りなさが残るものかもしれないが、浦和レッズでは徐々に決定機に顔を出す機会が増えつつあり、改善の兆しもあり。成長著しい22歳にそろそろ声が掛かっても良いのではないだろうか。

OH:中島翔哉(FC東京)

まだFC東京でもスタメンで起用されることは少なく、今回の選考には時期尚早な感はあるかもしれない。

しかし、バイタルエリアで決定機を作り出す創造性、どこからでもゴールを狙うアグレッシブな姿勢、スピードに乗るとファウルでしか止められないドリブルは、他の選手と比較しても特筆すべき水準にあることは疑いようのない事実。清武弘嗣が「翔哉はオーストラリアでのアジアカップの時、サポートメンバーで代表に帯同していたんですが、そこで初めて見て、『こいつ、めっちゃ巧いな』って思いました。A代表の選手を相手にしても十分やれていた」と語ったエピソードも有名な話だ。

視野の狭さ、球離れの悪さ、オフザボール時のポジショニング、守備面での貢献度など、正直、マイナス点はいくつも思い浮かぶ選手ではあるものの、清武と同様に「一度間近で見てしまうと、どうしても期待してしまう」という人は多いことだろう。A代表において、すぐさま即戦力としては計算するのは酷だろうが、近い将来のジョーカー候補として検討して欲しいところだ。

なお、クラブレベルでは主に左サイドで起用されることが多いが、選考の便宜上、今回はOHの扱いとした。

FW:長沢駿(ガンバ大阪)

鹿島アントラーズの鈴木優磨と最後まで悩んだが、「今のA代表に足りないピース」ということで、最終的には彼を推すことにした。

日本人離れした圧倒的な高さが最大の持ち味に思われがちだが、お得意のワンタッチシュートを筆頭としたシュートバリエーションの豊富さ、前線からの献身的なチェイシングなど、決して「高さだけの選手ではない」というのが彼の特長だ。

「長沢待望論」が巻き起こった頃に比べるとその勢いが少々弱まり、シュートに至るまでのシーンも減少している点は気になるが、チャンスさえ訪ればゴールを確実に奪える男。ガンバ大阪が上位争いをする上には彼の成長が必要不可欠であり、本人にとっても勝負の年である2017年にいよいよ覚醒するか。

最後に…

さて、今回選出した11人の顔ぶれはいかがだっただろうか。

将来性も見越しているため、「まだまだ代表レベルに達していない」といった反論はあるだろうが、筆者は彼ら11人の能力とポテンシャルを信じている。また、遅かれ早かれ、この中から日の丸を背負うプレーヤーが誕生する可能性も決して低くないだろう。

「W杯出場」が至上命題の日本代表において、最も重要なことは「勝ち抜く」ことにあり、不確定要素の強い新戦力を思い切って試すのは中々勇気がいることだが、いつかハリルホジッチが英断する日が来ることを待ちたい。

※11人の枠の都合上、選出外となったその他の候補

GK
飯倉大樹(横浜F・マリノス)
シュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)

CB
渡部博文(ヴィッセル神戸)
中谷進之介(柏レイソル)
福森晃斗(北海道コンサドーレ札幌)
犬飼智也(清水エスパルス)

RSB
高橋峻希(ヴィッセル神戸)
室屋成(FC東京)

LSB
車屋紳太郎(川崎フロンターレ)
吉田豊(サガン鳥栖)

DMF
川辺 駿(ジュビロ磐田)
三田啓貴(ベガルタ仙台)
原川力(サガン鳥栖)
天野純(横浜F・マリノス)

OMF
土居聖真 (鹿島アントラーズ)
鎌田大地(サガン鳥栖)

FW
鈴木優磨(鹿島アントラーズ)
都倉賢(北海道コンサドーレ札幌)