中国人夫と出会ったばかりのころ、よく夫が中国料理を作ってくれた。夫も頑張って作ったので私にたくさん食べてほしかったのだろう。しばしば私に「もっと食べる?」と聞いてくれた。資料写真。

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中国人夫と出会ったばかりのころ、よく夫が中国料理を作ってくれた。夫も頑張って作ったので私にたくさん食べてほしかったのだろう。しばしば私に「もっと食べる?」と聞いてくれた。

しかし、当時私たちは出会ったばかりで、私はかなり夫に気を使っていた。さらに中国文化なるものもあまり理解していなかった。そんな私はよくその質問に「うーん…食べられる…かも」と答えていた。夫も気を使っていたのだろう「ふーん」という感じで深入りすることなく何となくその場は過ぎて行った。

それから数年後、私の日本人の女友達2人が(A子さんとB子さん)家に遊びに来た。外でパスタを食べて話題のスイーツ店へ行き、さらに家でもチーズなどをつまみながらお酒を飲んでいた。そこに夫が帰宅。気を利かせてベーグルをお土産に買って来てくれた。夫はA子ともB子とも知り合いだったため「いらっしゃい〜」「お邪魔してまーす!」と和やかに挨拶。そして夫は張り切って「ベーグル食べる?」と私たちに聞いた。もちろん私たちにさらにベーグルを食べる余裕などない。しかしA子もB子も要らないとは言わなかった。「うーん…」「食べようと思えば…食べられるかも…」などと答えたのである。夫は一瞬「???」という顔をして「りこは?」と私に聞いた。「今はお腹いっぱいだからいらない。食べたくなったら食べるから冷蔵庫に入れておいて」と私が言って夫はやっと何となくどうすべきか分かったらしく、ベーグルをしまいに行った。

彼女たちが帰った後、やはり夫が私に聞いてきた。「食べる?って聞かれて『食べようと思えば食べられる』ってどういうこと?」と。私がどのように説明しようか考えていると夫がまた言った。「まあ日本人だからはっきり言わないのは分かるよ。すごく食べたいんだけど、それが言えないからそう言ってるんでしょ」。今度は私の頭の中が「???」である。

日本人はあまりはっきり言わない…というところまでは合っている。でも「食べようと思えば食べられる」は日本人的には「食べようと思えば食べられるけど、今はお腹いっぱいで食べたくない」の意味である。夫にそれを伝えるとものすごく驚いていた。そして最後に一言。「日本語難しい!!」

NOをはっきり言わないのは日本の文化である。私の友人たちもせっかくお土産を買って来てくれた夫に気を使って、あいまいな言い方をしてくれたのだろう。その気遣いが日本の文化である。しかし、お互いのNOを受け入れ、尊重し合う中国の文化で育った夫にとっては、日本人のあいまいな言い方の解読は少し難しいようであった。

■筆者プロフィール:むらさわりこ
1989年日本生まれ。22歳の時に2歳年上の福建省出身の中国人男性と結婚。英語を独学で習得後、英会話講師として働く傍ら中国のテレビなどを通し中国語も独学で習得。趣味は語学と読書。図書館があまりに好きで毎週通っている。結婚前はベトナム、ニュージーランド、モンゴル、カナダ、ラオス、フランスなど様々な国を一人で渡り歩く。自分のやりたい事や面白い事に国境や言葉の壁は関係ないと考えている。