スペック誤記載問題を問う。UPQは消費者とコミュニケーション不足ではないか?
UPQが製造したディスプレイが「120Hzの倍速駆動」としていたのにもかかわらず、実際は60Hzでしか動作しておらず、誤記載であったことを発表した問題がネット上を騒がせています。
これについて筆者は「またか」という印象とともに、UPQがどの方向を向いて製品を提供しているのか疑問に感じています。

【中国工場とのコミュニケーション不足】

今回の「ディスプレースペック誤記載問題」は既報にまとめられています。

●120Hz倍速は間違え!UPQとDMMが4K 65/50型モニター仕様を誤ったワケ。対応に差、背景に景表法の新ルール【詳報】

今回の誤記載について原因は「工場とのコミュニケーション不足」とのことですが、UPQはこのコミュニケーション不足によるミスを頻繁に起こしています。例えば2015年に発売されたスマートフォン「UPQ Phone A01」は、技術基準適合認定が未発行のまま発売してしまい回収となっています。

●「『UPQ Phone A01』初期出荷分回収のお願い」に関する訂正について

このときの原因についても「伝達ミス」としており、「人数が少ないのでもっと慎重にやっていかなければならない」と説明しています。

●UPQインタビュー:技適未取得、その真相。凹んでる暇があれば前に進む、UPQは色を変えた中華ガジェットじゃない

実は「UPQ Phone A01」は、上記の技適未取得問題だけでなく、CPUのクロック周波数表記ミス(1.3GHzを1.5GHzと表記)という件でも返品・返金対応となっている製品です。つまりスペック誤記載問題は今回のディスプレイが初めてではありません。スマートフォンのCPUなども、工場とコミュニケーションをしっかりとって、慎重に進めていけば間違いに気が付きそうなポイントです(ただし筆者も記事中のスペックをよく間違うので強くは言えませんが......)。

●UPQ Phone A01

【関連企業とのコミュニケーション不足】

またスペック表記ではありませんが、当初発表で案内していた内容と発売時の内容が大きく違ってしまったケースもあります。「UPQ BIKE me01」では、発表当初販売形態について、安全性を考えてバイク専門店で対面販売をメインに取り扱うことを想定している、と発表しています。

●車に積める折りたたみ電動バイク「UPQ BIKE me01」夏に登場

ところが、いざ発売になると蔦屋家電やビックカメラなどバイク専門店ではないショップでの販売となっていました(現在ではバイクなどを扱うショップでも販売されています)。このときの発表会には筆者も参加しているので、「これまでの家電と違って安全性に十分考慮しなければならないので、バイク専門店で扱ってもらう」と中澤優子社長が発言していたのを覚えています。

この発言が発売時には反故にされたことになります。バイク専門店とどのようなコミュニケーションをとっていたのか、発表時にバイク専門店で扱うというアナウンスができるほど話がすすんでいたのか大きな疑問が残りました。

ちなみに「UPQ BIKE me01」は初回予約時に送料無料で受け付けていたのですが、あとから配送地域によっては万単位での送料が必要となり、予約したユーザーの同意をあとから受ける形となりました。このあたりも輸送業者とちゃんとコミュニケーションとっていたのかと思ってしまいます。

【ユーザとのコミュニケーション不足】

筆者がいちばん深刻だと感じているのは、UPQがユーザーの方向を向いていないのでは? という点です。たとえばスマートフォンの「UPQ Phone A01X」は充電中に出火し火災をおこしたとして、消費者庁が公表しています。

●消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について

こういった公表がなされているにもかかわらず、UPQサイトのお知らせや製品情報のページには、なんのアナウンスもありません。発火事故について公の場でUPQからアナウンスがあったのは下記の「4K65 Limited model 2016/17」発表会だと思われます。

●PQが14万9千円の65インチ4K IPS液晶「4K65 Limited model 2016/17」を発表!スマホ「UPQ Phone A01X」の焼損事故についてもコメント【レポート】

実はこの発表会で発火事件について質問したのは筆者。この発表会までUPQサイトにはなんのアナウンスもなかったため、発表会の内容には直接関係なかったものの質問をした次第です。記事に記載されているように調査を依頼しているならその旨を公表して、ユーザーとコミュニケーションをとればいいのにと感じていました。

また関連して後継スマートフォンの「UPQ Phone A02」の発売も見合わせていると中澤社長は回答していましたが、これについてもすでに製品発表から1年以上が経過した現時点でも追加のアナウンスはありません。

今回の「ディスプレイスペック誤記問題」でも、たしかに消費者庁とは密なコミュニケーションをとって、法的にはなんの問題もない対応をしているかもしれません。ですがユーザーとのコミュニケーションという点ではどうでしょうか? 一方的に「アマゾンギフト2000円」のお詫びを配布して終わりというのは、ユーザーに顔を向けた対応とは思えません。

詳報によると4月12日の発表時点では原因もわかっており、UPQができる対応というのも決まっていたようです。ですがそこをゴールとするのではなく、誤記載があったことを公表した上で、購入者とコミュニケーションをとって落としどころを探るという方法もあったのではないかと考えます。

もちろん資金や物理的な広さなど、会社の規模で対応できることは限られるでしょう。それでも購入者にしっかりと原因を説明し、UPQとしてできる対応を理解してもらうというコミュニケーションをとれば、今回のようなネット上でのヒステリックな反応にはならなかったのではないかと思います。

中澤社長は詳報記事に下記のメッセージを出しています。

UPQ製品をお買い求めいただいているお客様には、常に心より感謝申し上げております。ベンチャーであり未だ不安定な私たちですが、たくさんのお客様に支えられ1年9カ月生き続けることができています。この度の不行き届きにつきまして心よりお詫びすると共に、製品を開発し販売し続けることができるよう最善を尽くして参ります。誠に申し訳ございませんでした。


顧客とのコミュニケーション不足から大切な支えをなくしたUPQが、今後製品を開発し販売し続けることができるのか、筆者は注目していきたいと思います。