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●語学学習の障壁を克服
ソースネクストが、言語学習サービス世界最大手のロゼッタストーンと協業したユニークな施策を展開する。語学ソフト「ロゼッタストーン」を破格で販売するほか、AIを利用した「小型の自動翻訳機」も年内に発売する予定だ。ソースネクストの狙いはどこにあるのだろうか。26日に開催された説明会で、同社 代表取締役社長の松田憲幸氏が説明した。

最近は訪日外国人が急増しており、東京オリンピックが開催される2020年には、約3,700万人もの客数が見込まれている。外国語学習の需要増が期待されている中、ソースネクストは3月に「ロゼッタストーン」の国内独占販売権を取得。4月26日にはロゼッタストーンの日本法人を完全子会社化した。松田氏は「英語以外の言語のニーズも高い」と話し、24言語に対応したロゼッタストーンの販売に自信をのぞかせる。同社が掲げる売上目標「2020年までに国内市場で100億円」も、決して届かない数字ではないという。

○語学学習の障壁を克服

ところで語学学習では、どんなことが障壁になるのだろうか? かくいう筆者も、社会人になってから趣味でドイツ語を学習している身。その立場から言わせてもらうなら、いまさら趣味の語学教室に何十万円もかけられない (家賃が払えなくなってしまう)。また、目的に沿った教材がなかなか見つからないのももどかしいところだ。ひとくちに"語学教材"と言っても、「外国を旅行するため」「資格試験のため」「外国の書籍を読むため」に必要な語学力は、各々でまるで異なるため、自分に最適な教材にめぐりあうまでに苦労している。また、勉強時間を確保する難しさも感じているのだが、こうした悩みは語学学習者に共通のものだろう。

ソースネクストでもそのあたりは調査済み。まずは、語学ソフト「ロゼッタストーン」を定価27,593円(税別、以下同)の8割引となる4,980円で販売する。これは先着30万本限定で、ビックカメラ、ヨドバシカメラなどの家電量販店で展開していくという。

教材はラインナップを拡充する方針で、例えば英語では新たに中級・上級編(ビジネス向け)のほか、TOEIC対策、TOEFL対策に特化した個別の製品なども発売する。学習指導要領の拡大により小学5年生から英語が必須になることを受け、子ども向けに「For Kids」を、また発音を鍛えたい学習者向けにはヘッドセット同梱版も用意した。2020年までに50ラインナップ以上に拡充するとのことだ。

同社では「ロゼッタストーン プラットフォーム」として、ユーザーの学習を支援するサービスも開発中。PCに限らずスマートフォン、タブレット端末でも学習できる機能が実装される。学習進度はクラウドで同期できるので、家で学習した続きを通勤電車で行うことも可能になるという。プッシュ通知で学習の再開を促す機能もあり、(筆者を含めた)怠けがちの学習者にとっては嬉しい限り。

●"同時通訳"デバイスも年内発売
Microsoft、Googleなどの企業がAIを活用した翻訳ソフトの開発に注力するなか、ソースネクストでもユニークな製品のリリースを予定している。

年内の発売を目標に開発している「ロゼッタストーン ポケット」は、スマホのような大きさのAI自動翻訳機。音声を入力すると翻訳して音声合成で発話するというから、同時通訳に使えるのかも知れない。製品の詳細は明らかにされていないが、おそらくデータ通信のできるSIMカードを挿入し、クラウドを通じて翻訳処理などを行うのだろう。80国語に対応するとあり、訪日外国人とのコミュニケーションに役立ちそうだ。

ここで松田氏は、一般論として次の2つの"来るべき世界"を紹介した。ひとつは外国語需要の高まりによって訪れる「外国語の習得者が増える未来」、ひとつは翻訳技術の高まりによって訪れる「言語学習が不要な未来」。相反する世界観だが、どちらが訪れるのだろうか。同氏によれば、企業の立場によってどちらが訪れるか主張が分かれるという。

しかし、ソースネクストの答えは「両方が訪れる」だった。松田氏は「翻訳ソフトが出るから外国語を勉強しなくて良くなる、というのではなくて、むしろ翻訳ソフトが語学勉強のハードルを下げる。だから語学の学習者は増える。そして結果的に、日本人の語学力も上がっていくのではないか」といった見方を示した。

○英語の音声メッセージが日本語のテキストに

このほか、ソースネクストの留守番電話サービス「スマート留守電」でも多言語対応を進めている。5月には音声認識エンジンを刷新、今夏には翻訳機能が実装される予定。これにより、例えばビジネスシーンなら、取引先の外国人社員が留守番電話に残した英語の音声メッセージを、日本語のテキストで確認できるようになる。外資系の企業などを中心に重宝されそうだ。なお直近の話として、5月中旬には留守電のメッセージをLINEに転送する機能が実装されると説明があった。

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最後は余談。いまでこそシリコンバレーに住んでいるという松田氏だが、20歳まで英語は全く喋れなかったという。つまり松田氏自身、大人になってから苦労して語学を習得したと想像できる。であれば、同氏がため込んだ語学学習のノウハウが、今後ソースネクストの新製品に反映されることもありそうだ。語学を学ぶ人の気持ちを汲んだ、これまでにない製品を発売してほしい。開発中のAI機械翻訳機がそうなるのかもしれないが、最近学習が伸び悩んでいる筆者としては、そのあたり大いに期待してしまうのだった。

(近藤謙太郎)