三戸なつめ(撮影=三橋優美子)

写真拡大

 三戸なつめが4月26日に1stアルバム『なつめろ』をリリースする。衝撃のデビュー曲であり、彼女を一気にポップアイコン化した自己紹介ソング「前髪切りすぎた」はもちろん、映画『ピクセル』日本語吹替版主題歌として話題となった「8ビットボーイ」、新境地であり、シリアスなせつなポップが新鮮だった「I’ll do my best」、そして最新シングル曲「パズル」「ハナビラ」などを収録。中田ヤスタカプロデュースによる、表現者=三戸なつめのこれまでのヒストリーを総括する作品だ。

 キュートかつユーモラスなイメージから、だんだんと心情の内面を表現するナンバーへとシフトしていく様が、アルバムではひとつの世界観として表現されている。なかでも〈ね お願い もうちょっとだけ ちょっとだけ もうちょっとだけで いいから もうちょっとだけ 強く刺して ずっといい子でい過ぎたの 風船を突っつく針がほしい〉のフレーズが鮮烈だった、心の内面を描く「風船と針」は、メタファーも秀逸な青春ポップだ。三戸なつめに、アーティスト活動第1章の集大成となる本作についてじっくりと語ってもらった。(ふくりゅう)

(関連記事:2017年、中田ヤスタカは変わろうとしているーーきゃりー、Perfume、三戸なつめ新曲から考察

■「バラエティー豊かなアルバムになりました」

ーーアルバム『なつめろ』は幅広い世界観を持つ楽曲ばかりで、なつめさんの歴史を体現した作品に仕上がりましたね。

三戸なつめ(以下、三戸):すごくバラエティー豊かなアルバムになりました。「前髪切りすぎた」や「8ビットボーイ」など、ユーモラスな曲もありつつ、「I’ll do my best」や「風船と針」のような聴かせる曲も入っているので、飽きないですよね。

ーーそうそう「風船と針」がまた素敵ですよね。中毒性の高いナンバーです。それこそデビュー後、様々なチャレンジをしてきたなつめさんが感じてきた気持ち、その内面を歌われているんじゃないかなと。

三戸:そうですね。「I’ll do my best」がはじまりだとしたら「風船と針」は“今”みたいな。2年間の活動の中で、プロデューサーの中田ヤスタカさんが感じ取ってくれたことが、すごく自分とリンクしたので、改めてヤスタカさんって凄いなと思いました。

ーーアルバムを作るにあたってお話などされたのですか?

三戸:基本的に、次の曲どうするとかそういう話はほとんどしないんですよ。ご飯とかは行くんですけどね。音楽の話はしないですね。

ーーご飯の際の、言葉の端々をインスピレーションに、楽曲の世界観で表現されているんでしょうね。そういえば、なつめさんは、関西出身なんですよね?

三戸:そうです、モデル活動から今に至りますね。

ーー自分名義での音楽アルバム作品をリリースするというのは、夢見てたのですか?

三戸:いえいえ、まったく想像できませんでした。関西にいた頃は歌手になれると思っていなくて。芸能界に入って頑張りたいとは思っていたんですけど、音楽に携わっているとは考えてもいませんでした。

ーーモデルやタレント活動も並行されていますが、その中で身につけたスキルはありますか?

三戸:正直、あんまりなくて(苦笑)。バラエティー番組だと、芸人さんに頼り切っちゃっている部分がありますね。でも、音楽番組を大阪でやらせてもらっているんですよ。そこでは、自分の好きな音楽を紹介しています。プレゼン力も全然なかったんですけど。どうすれば伝わりやすくなるかなってことを大事にしてます。歌詞カードを読みといて紹介してみたり、トークが長々とならないよう工夫したり。

ーーどんな作品やアーティストを紹介されてきたんですか?

三戸:テーマがたくさんあって。ご飯ソングとか、飲み物ソングとか、今年は酉年だから、鳥ソングとか(苦笑)。

ーーえっ、鳥ソングなんてありましたか(笑)。

三戸:あったんです(笑)。それこそ、いきものがかりさん「ブルーバード」。[Alexandros]「ワタリドリ」など意外とあって。飲み物ソングはYUKIちゃんの「サイダー」とか。炭酸系が多いですね。そのときはノンアルコール編だったんですけど。

ーー勉強になりそうな企画ですね。意識的にいろいろな音楽を聴いてるんですね。

三戸:そうですね。最近は歌詞に注目して聴くようになりました。サウンド面もまだまだ深く勉強したいんですけどね。歌詞を自分なりにちゃんと理解して。どんな気持ちでアーティストさんが書かれているのかなということを考えたりします。

ーーなつめさんがこの曲良いなと思う基準は、どんなポイントですか?

三戸:素直な歌詞や勢いある感じが好きかもしれないですね。WANIMAとか大好きで。懐かしさを刺激されるんですよ。高校の時、SHAKALABBITSが好きだったんですけど、近いものを感じていて。

■「オシャレなんだけど、ヘンな世界観が好き」

ーー懐かしさといえば、今回、1stアルバムにして『なつめろ』というダブルミーニングなタイトルがユニークだと思いました。どうやって決まったのですか?

三戸:ヤスタカさんに「アルバムのタイトルは『なつめろ』でいこう!」と言われて。あ、なんか凄いわかりやすいかもしれないなと。自分の世界観にもぴったりですよね。

ーーアートワークはいかがでしたか?

三戸:SIXの矢後直規さんにアートディレクターをやっていただきました。矢後さんは、密なコミュニケーションを重ねることでアイデアを考えてくださって。今まで、モデルとしては自己プロデュースでやってきたんですけど、今回、自分一人じゃできない良いものを作りたいなと思って。オシャレなんだけど、ヘンな世界観が好きなんですね。その結果、背景が荒野というか地層なんですけど、その前にレトロな椅子やラジカセがあることで、時代を超えている感じというか、若干の違和感を表現してもらっています。

ーーそれこそ、クールでアートなイメージを醸し出していますよね。シリアスなSF感もある。

三戸:私的には、未来、それこそ何十年経ってもみんなに『なつめろ』を聴いてもらいたいっていう思いがあったんですね。なので、自分に似ているおばあちゃんもキャストとして登場するんです。すごく可愛くて上品なおばあちゃん。今の自分と未来の自分を表現していて。実はブックレットも凝っていてストーリー性があるんですよ。是非、買って中身をチェックしてみてほしいです。

ーー服のこだわりも?

三戸:赤が好きなので真っ赤なドレスを。中国の生地を集めたパッチワークみたいな素材ですよね。シングル『パズル / ハナビラ』のジャケット写真から、洋服も子供っぽいものよりも、スケ感があったり、より大人をイメージしてますね。

ーー音楽活動を通して、成長した自分をどんなところに感じていますか?

三戸:最初のライブが下北のGARDENだったんです。『初なつめ祭〜先輩達にお手伝いしてもらいますLIVE〜』っていうタイトルで、自分の出番の前に、事務所の先輩や仲良い女芸人の子を呼んだんですね。そのライブの映像を見返したらもう恥ずかしくって(苦笑)。今も、喋りがうまくなったわけではないんですけど、人に思ったことをちゃんと伝えられるようになってきたかな。あと、すごく度胸がついたなと思います。アウェーなライブでも、かえって開き直れるようになりました。

ーーアウェーな場など、負けずに自分を出す時にこだわっているポイントは?

三戸:感情論になっちゃうんですけど、あまり、怖がらない様にしようと。これを言ったら嫌われちゃうかなとか、ライブがうまくいかなかったら離れていっちゃうかなとか、ネガティブ思考をやめました。割とマイペースな方向にチェンジしてます。

ーーなるほどね。それはそうと、なつめさん、声がいいんですよね。人を落ち着かせる成分が入ってそう。

三戸:ありがとうございます。声を褒められるのは嬉しいですね。最初の頃、ヤスタカさんのサウンドに自分の声が合わないんじゃないかなって不安があったんですよ。でも、ヤスタカさんの未来的なサウンドに、安心するような自分の声が入ることで、化学反応が起きてくれたら嬉しいですね。

ーー特典のDVDには、いろいろぶっとんでチャレンジされた成果がまとまっていますね。

三戸:デビュー時から、面白いことをたくさんしてきましたよね(笑)。ちなみに、YouTubeにあがっているMVは途中で終わっちゃうんですよ。「私をフェスに連れてって」なんかは物語風になっているんですけど、いいところで終終わってしまうので、それらを作品としてちゃんと観てもらえるのが嬉しいですね。

ーー撮影で大変だったことは?

三戸:〈動いた。〉という物作りをしているチームの作品で「8ビットボーイ」-三戸マス目篇- というMVがあるんですけど、これは今回初公開になるんです。スケールが大きすぎて間に合わなかったんですよ。説明すると、すごく大きな自分の顔の形のアナログな機械があって、ばーっと段になって連なっていて。それを音楽と一緒に動かしていくんです。遠くから見たら文字になっていたり。でも、アナログな機械だからなかなかシンクロしないんですよ。何度も撮り直しました。あ、言葉で説明してもわかりづらいと思うので、ぜひ観てください。

ーーははは(笑)。それは気になりますよね。それこそ、中田ヤスタカさんのプロデュースや、パッケージ、そして映像など様々なクリエイターが集まって“三戸なつめ”は形作られていると思いますが、受け入れるのもまた勇気がいることなんじゃないですか?

三戸:そうですね。でも、そこはクリエイターさんありきだと思っています。この人だったら任せていいみたいな。ヤスタカさんもそうですし、今までMVを作ってくれた方達もそうなんですけど、個性が強すぎる方々が多くて。変に口を出したらその世界観が崩れてしまうと思いますし、なので、そこは信頼しきってますね。絶対面白いものが出来るだろうなと。結果、想像以上に面白いものが上がってくるので。

■「『風船と針』は自分の気持ちを突いてくる曲」

ーーそれゆえのリミッターを振り切った作品というわけですね。アルバムには今回初CD化「おでかけサマー」が収録されてますが、こちらはこれからの季節にぴったりなナンバーですよね。

三戸:去年の夏、YouTubeのみで公開してた曲なんです。CD化を待ってくれていた人がけっこう多くて。入ってよかったです。あと「ねむねむGO」も初収録ですね。これ、デビュー前に録音した曲なんですよ。

ーーそれは感慨深い流れとなりますね。あと、新曲「なつめろ」にハマりました。今と昔を行き交うかのようなギミック感あるアレンジが絶妙なタイトルチューンとなっていました。

三戸:初めて聴いた時は、いい意味で懐メロだと思いつつ、途中で曲調が変わって一気に今に連れ戻される感じが面白いなと。みんな、自分の思い出をふと思い出すタイミングってあると思うんです。そんなちょっとしたファンタジーな要素が入っているなって。ずっと思い出の余韻に浸っているのに、急にガッと連れ戻されるみたいな。で、またサビに戻るんですけど、ハッピーな気持ちになってくれたらなと思いました。

ーーあと、今回新曲といえば、先ほども話題に上がりましたが「風船と針」ですね。

三戸:これは泣きそうになりますね。自分の気持ちを突いてくる曲だと思いました。この曲がラストに入ると思ってなかったんですよ。ラフの時は、もうちょっと明るかったので。最終的にさらに深く進化したナンバーですね。「前髪切りすぎた」と「風船と針」のギャップがすごいですよね。

ーー先行シングルとしてリリースされたシングル「ハナビラ」と「パズル」はいかがですか? 胸を締め付けられるような好きな曲なんですよ。

三戸:「ハナビラ」は不思議な曲ですよね。言葉の並び方が呪文を言っているみたいで、歌うのも難しかったです。でも、春に向けての準備といいますか、ハナビラが咲くまでの過程を思い描きつつ。ヤスタカさんのアドバイスもあって、最初から最後まで優しく歌いましたね。私、はっきりと強めに歌ってしまいがちなところがあるんです。その点「パズル」は思い切って歌えるのでライブ向きなナンバーですよね。

ーー全国ツアー『なつめろ LIVE TOUR 〜三戸なつめは超オメデタイ〜』が5月21日、TSUTAYA O-EASTを皮切りにスタートしますが、どんな感じになりそうですか?

三戸:サブタイトルに、去年の『オメデタイツアー』に“超”が付いているので、初めてのワンマンツアーより成長した自分を楽しんでもらいたいですね。レベルの上がったライブにしたいなと思っています。

ーーでは最後の質問です。シンガーでありながらもモデルでありタレントでもあり。幅広い活動をしているにことについて、どのように考えていますか?

三戸:タレントやモデルの活動はほとんど自分主体というか、自分の好きなようにやらせてもらっていて。でも、アーティスト活動は、総合的なものなので、いろんな方々が携わってくれるんですね。なので、よりクオリティーの高いものにしたいし、少し背伸びができると思っています。そこに自分ならではのシュールな部分や、カッコつけられないMCなどでバランスもとりつつ。私の場合、タレントとして知っていただいた方も多いと思うので、今回のリリースをきっかけにアルバムやライブを観ていただいて、アーティストとしての部分もぜひ知っていただきたいですね。

(取材・文=ふくりゅう:音楽コンシェルジュ)