伊豆諸島の式根島沖に停泊したフランスのスクーナー船「タラ号」付近の海で、微生物を収集する研究者(2017年3月28日撮影、29日提供)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】消滅の危機がささやかれている世界のサンゴ礁だが、彼らが生き残るためのカギは、日本の小さな火山島の海にあるかもしれない──世界の海を調査している科学者らが伊豆諸島の海に注目している。

 フランスが主導する科学調査のためのスクーナー船「タラ(Tara)号」に乗船した研究者らにとって、伊豆諸島の式根島(Shikine Island)の海底は「生きた実験室」だ。彼らは、気候変動による損傷作用からサンゴを守るための手がかりを探している。

 サンゴ礁は、世界の海洋面積のわずか0.2%を占めるにすぎないが、これを生息場所とする動植物種は30%に上る。サンゴ礁は、これらの生物に食物を与えるだけでなく、天敵から身を守る手段も提供している。

 調査コーディネーターを務めた筑波大学(University of Tsukuba)のシルバン・アゴスティーニ(Sylvain Agostini)助教は「サンゴ礁の消失は、恐ろしい結果を招くだろう」と警告を発する。

 式根島の一部の入り江では、火山活動によって海底から二酸化炭素(CO2)が噴出し、海水に溶け込んだ結果、海水のpHを低下させている。この海の状態は、世界のCO2排出が2100年まで野放しで続いた場合に予想されるものと同等と考えられている。

 CO2の増加は、温暖化に伴う海水温の上昇だけでなく、酸性化という海水の化学的性質の変化も引き起こす。

 研究者らによると、東京の南160キロに位置する式根島の一部の海域では、サンゴを含む海洋生物が、通常よりpHの低い海水の中でどのようにして存続できるかを垣間見ることができるという。

 オーストラリアにある世界最大のサンゴ礁で世界遺産(World Heritage)にも登録されているグレートバリアリーフ(Great Barrier Reef)が危機的状況に直面している中、北限海域にある日本のサンゴ礁は、海洋生物に関する知識を増強する重要なデータを提供するものとなっている。

 科学者らは今月、グレートバリアリーフが海面温度の上昇に起因する白化現象によって深刻な危機にさらされていることを明らかにした。この現象は、水温上昇などのストレスによって、サンゴの組織内に共生する藻類が放出され、サンゴへの養分の供給が阻害されている状態である。

 グレートバリアリーフでは、今年も大規模な白化現象が、昨年に続き確認されており、科学者らは2年連続で白化したサンゴの回復について「見込みゼロ」と厳しい見方を示している。

■大きな問題

 フランスの高名な研究機関、高等研究実習院(Ecole Pratique des Hautes Etudes)で上級講師を務めるマギー・ニュグ(Maggy Nugues)氏は、2016年5月に同国を出発したタラ号の船上でAFPの取材に応じ「20年間にわたってサンゴを調査しているが、大規模なサンゴの減少を目の当たりにしている」と語った。

 そして「カリブ海(Caribbean Sea)と太平洋(Pacific Ocean)のサンゴの面積は、50〜80%の減少がみられる。これは大きな問題」と続けた。

 タラ号に乗船している6人の研究者らは、式根島の一角にある、酸性化の進行した環境において、サンゴ、プランクトン、海藻、魚などを含む海中の生態系がどのようにして存続しているかを調べたいとしている。

 式根島のほとんどは酸性化されておらず、pHの高い環境が保たれている。そのような海域では、サンゴの状態ははるかに良好であることが示唆されている。

 アゴスティーニ助教は「日本近海のような比較的高緯度の海域が、温暖化の進行下における海洋生物の避難所として機能することを期待している」と述べるも、「生物の避難所が、酸性化によって限定化される可能性がある」ことを指摘し、「酸性化の影響を観察できる自然の実験室となる式根島の海で、その答えを見つけたい」とした。

 他方で、気候変動のペースが人的活動によって加速されると、生物はそれに合わせて適応するのが難しくなるとニュグ氏は指摘する。

「地球がこれまで比較的安定な条件の下で進化してきたことが、生物や動物の適応を可能にしてきた」「だが今や、人類がそのペースを、おそらく自然の速度計を振り切る速さにまだ加速させている」と現在の状況を説明した。

■大規模白化に関する緊急宣言

 日本の環境省は23日、サンゴ大規模白化緊急対策会議を沖縄県で開催。有識者や関係機関当局者が意見を交換しながら「サンゴの大規模白化に関する緊急宣言」をまとめた。

 緊急宣言では、今後の平均気温上昇による白化頻度の増加や回復力の低下、しいてはサンゴ消滅の恐れにも言及。その予防措置として温暖化対策が不可欠との認識の下、室効果ガス排出量の削減を目指す国際的枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」の目標達成に向けた、より一層の取り組みを呼びかけた。また白化からの回復に向け、人為的圧力の低減といった適応策の実施も重要視された。
【翻訳編集】AFPBB News