<中国の物語に白人のマット・デイモンを起用して議論に。映像は見事だがストーリーは矛盾だらけの問題作>

張芸謀(チャン・イーモウ)監督の『グレートウォール』はだいたい3分の2がグレートで、3分の1がひどい仕上がり。わざわざ「張芸謀の」と書いたのは、彼が監督だからというより、この作品に関する話題は全て主演のマット・デイモンに集中してきたからだ。

中国の万里の長城をめぐるファンタジーにデイモンが主演すると発表された瞬間から、白人が無理やりアジアの物語に登場すること、しかも白人の主人公が中国人に怪物を退ける方法を教えるという筋立てであることが批判の的になった。

まず、3分の1の駄作部分について。私はデイモンの出演作を全て熱心に見たわけではないが、この作品の彼の演技は最悪の部類に入る。映画の前半ではあごひげとかつらに埋もれて登場するが、ひげを刈り込んだ後も人物像がはっきりしない。

どうやらデイモン演じるウィリアムは、火薬を探して中世の中国に来たアイルランド人らしい。彼と相棒トバール(ペドロ・パスカル)は偶然、万里の長城に行き当たり、その真の目的を知る。それはトウテツという怪物から中国を守ることだ。

中国の物語に白人(ウィレム・デフォーも重要な役)を登場させたのは、受け入れ難い妥協だ――公開前にはそんな批判が寄せられた。何に妥協したのかと言えば、巨額の製作費をかけた国際的作品はハリウッドスター(たいてい白人男性)なしには成功しないという常識。日本のサムライ映画でも、主役はトム・クルーズの方がいい。

『グレートウォール』が公開初週の週末の興行収入で『レゴ バットマン ザ・ムービー』に負けると予想されていたことを考えると、その常識が本当かどうかはいまひとつ明らかではない。実際、中国ではかなり大々的に封切られたが、すぐに客足が遠のいた。

それにヒット狙いで白人スターを主役にするという主張は、中国を救う役に西洋人を配置することの政治的な意味を無視している。

政府に支配された中国の映画業界で長いこと映画を作ってきた張は、作品中にメッセージを忍ばせたり、複数の権力者を同時に称賛するのがうまい。確かに観客は、ウィリアムの視点から万里の長城の物語に入っていく。しかしジン・ティエン演じるリン司令官の指揮下にある中国人の防衛軍が登場すると、ウィリアムは目立たなくなる。

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なぜデイモンがここに?

ウィリアムとトバールは、任務によって色分けされた軍服の防衛軍が怪物トウテツと対決し、数々の戦略を駆使して戦う様子を粛然と見つめる。

ウィリアムの出番は他の登場人物より多いものの、人物像に関する説明はかなり不足している。6人の脚本家が関わっているが、ウィリアムがこの物語の中心であるべき説得力のある理由がない。デイモンも、自分がそこにいる理由が分からないかのように演技している。

サム・アダムズ