仲間想い…というよりは、もっと実利的な理由があるようです。

Science Advancesで発表された新たな研究によると、昆虫種のなかでは前例にない行動をとる、捕食性のアリがいることがわかりました。ケガした仲間を巣まで運ぶ、サハラ砂漠以南に生息するマタベレアリです。

シロアリを餌とする彼らは、1日2〜4度にわたって200〜500匹の長い列をつくりながら食糧探しに出かけます。大きなマタベレアリがシロアリの巣をこじ開けて、小さなマタベレアリがシロアリを殺しにかかるのです。

ただし、シロアリもやられっ放しではありません。進化の過程で攻撃する能力も身につけたのでしょう。襲撃されると、戦闘用に階級順にフォーメーションを組んで、力強い顎で果敢に戦います。

善戦の結果、マタベレアリに負傷者が続出するのです。そして、その負傷者した仲間を運ぶというわけ。


アリ 怪我した仲間を運ぶ理由

戦いの帰り道。大きなマタベレアリが餌食となったシロアリ2匹をくわえて巣に戻る様子。


コモエ国立公園でのフィールドワークで、マタベレアリがケガした仲間を巣に持ち帰るというユニークな救助活動を発見したのは、ドイツのヴュルツブルク大学の研究チーム。研究の報告によると、その理由は戦死者を減らすため、という実利的なものだといいます。

たいてい救助されるのは手足を失うなどの負傷や、シロアリにたかられて苦しんでいる状態のマタベレアリ。助けを求めて「ジメチルジスルフィド」と「ジメチルトリスルフィド」の2種類の化学信号を顎から分泌するのだといいます。

アリの行動が化学物質に大きく影響を受けることは知られていますが、マタベレアリの場合はこうしたシグナルを受けて、近くにいる者が仲間を持ち上げて巣まで運びます。負傷したアリは、体の一部を失った場合は再生できるわけではありませんが、巣に戻って休養します。まだ手強く身体についたままのシロアリがいれば、外すという作業も巣の中で行なわれるのだそうです。 

救助後に次の戦いに復帰できるアリは約95%で、1時間以内に回復するマタベレアリの姿もあったようです。一方で、救助なしに巣に戻る場合の致死率は約32%。またマタベレアリの群居地は、救助がないのと比べると約29%大きいと研究者たちは見積もっています。

こうして、救助によって次の戦いに参加できる仲間を休ませることができることから、マタベレアリの行動はリソース、時間、エネルギーを割く甲斐があるといえます。仲間を助けるきっかけは、共感や同情によって行動する人間のそれとは異なりますが、グループ全体の存続を確かなものにするべく、個々を尊重するというモチベーションは共通しているのかもしれませんね。

・ランニングマシンで調査!サハラ砂漠のアリが自分の巣に戻るまで

image: Erik Frank / Science Advances
source: Science Advances

George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(Rina Fukazu)