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良好な人間関係を築くうえで、「怒る」こともときには必要な要素。ですが、感情的になってしまうと相手を責める形になり、人間関係に亀裂が生じてしまうことも。どうすれば部下や子ども、夫や恋人に、自分の気持ちを上手に伝えられる怒り方ができるのでしょうか。

 

気持ちが伝わる上手な「怒り方」

怒りは、人間として自然な感情。その人との関係性を大切に思うなら、ときには怒ることも必要です。人間関係を壊さず、相手に適切に伝えるにはどうしたらよいのでしょう? 日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介さんに教えていただきました。

 

「上手に怒るためには、相手に『次からこうしてほしい』と要望を伝えることが大切です。けれど、伝え方や相手との関係によっては、その場の雰囲気を悪くしたり、逆切れされて自分の身に危険が及ぶことも。

 

『ここは怒るべき?』と迷ったら、その人に怒ることが自分にとって重要なのか、そこで怒らなかったら、あとで後悔しないかを考えましょう。『怒らない』と判断したのに、その状況を見続けるのはNG。電車でマナー違反の人を注意せずに見続けるようなケースがそうです。関わらないと決めたら、その人を見るのもやめるということです。

自分の子どもが社会的なルールに反する行動をしたときや、仕事相手との関係性が悪く、このままではお互いにマイナスが生じるときなど、『怒るべき』と判断したら相手に伝わる怒り方を心がけましょう。

 

いちばん気をつけたいのは、自分の怒りの感情に飲み込まれて、相手を責めてしまうこと。人は責められると『逃げるか、反撃するか』の二択になり、聞く耳を持てなくなるのです。NGワードは相手を責める言い方になりやすいので注意が必要です。

 

『強く言えば、より強く相手に伝わる』というのは、残念ながら大きな勘違い。ふだん明るい人が、いつもと違う落ち着いたトーンで話し出すだけで『えっ?』と耳が向くもの。相手が聞く気になるタイミングで、相手の言い分を聞きながら怒ることが、その人との信頼関係につながります」(安藤さん)

 

怒るときのNGワードに要注意

強い口調で怒られると、誰だって責められた気持ちになって反省よりも先に怖い、逃げたい、腹が立つと感じてしまいますよね。

 

また、普段怒るときに何気なく使っている言葉が、実は相手を責める言い方にしているかもしれません。そのNGワードがこちら。

 

「いつも」「必ず」「絶対」
「この前はちゃんとやったのにそれは見てくれていない」という反発を抱かせ、信頼関係を壊しかねない言葉。目の前の事実だけをシンプルに指摘したほうが、相手に伝わります。

 

「なんで?」
相手は責められたと感じて動揺し、あなたの話が理解できなくなってしまいます。「どうしたらうまくいくかな」など、相手に選択権をパスする言葉を使うと相手の意識を変えやすくなります。

 

「前から言おうと思っていたんだけど……」
怒りの度合いを強める表現なので「なんで今さらそんなことを?」「前のことは関係ない」と不信感を抱かれます。怒っている理由を理解してもらうには、そのときのことだけを言って。

 

怒りっぽい人から自分の身を守るためには?

また、自分は必要最低限しか怒ることをしないという人でも、周囲に怒りっぽい上司や家族、友達がいるという人もいるのでは。

「自分の怒りだけでなく、人の怒りもやっかいなもの。怒りっぽい人が身近にいると、自分にも被害が及ぶことに。くり返し責められると気持ちが萎縮して、ますます責められてしまいます。アンガーマネジメントでは『人(相手)と過去は変えることができない』が原則ですが、その人とのつき合い方を変えれば、身を守ることができます。

 

まず大切なのは、相手をよく観察すること。その人の怒りやすい時間、場所などがわかったら、そのときはできるだけ近寄らず、地雷を踏まないようにしましょう。

 

もし、その人とうまくつき合っている人がいれば、その人の接し方をマネして、怒りを引き出さないようにするのも、いい方法です。

 

また、怒りっぽい人ほど『お前のせいでこうなった』など、事実にとってつけたことを責めがち。事実以外は聞き流して自分を責めない習慣をつけると、相手の怒りに飲み込まれなくなります」(安藤さん)

 

いかがでしたか? 感情的に気持ちをぶつけるのではなく、相手にどうしてほしいかを落ち着いてリクエストすることが、賢い怒り方といえそうですね。相手のためを思って怒ったつもりが、傷つけてしまったなんてことのないように、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょう。

 

【プロフィール】

安藤 俊介

一般社団法人 日本アンガーマネジメント 協会代表理事。日本のアンガーマネジメントの第一人者として、全国で講演や研修などを精力的に行う。メディアにも多数出演。著書に『叱り方の教科書』(総合科学出版)『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など

文/FYTTE編集部