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「身近な感染症」をテーマにした北里大学医学部附属新世紀医療開発センターが主催するシンポジウムが2017年3月7日、相模原で開催された。

寄生虫やウイルス、細菌に感染することで発症する各種感染症は、しばしば急に流行する。3月には山形県の自動車教習所で、海外から帰国したばかりの教習生が、「麻しん(はしか)」を発症、各地から教習生が来ていたこともあり、患者が全国で確認された。感染拡大や重症化を防ぐためにどんな知識が必要なのか。

季節性インフルエンザは「冬の病気」ではない

最初の講演を行った同センターの感染制御学准教授である高山陽子氏は、「インフルエンザ・麻しん・水痘(水ぼうそう)」を取り上げた。この中で感染力が最も高いのは麻しんで、1人の患者から免疫のない12〜21人に感染する。水痘は8〜10人、インフルエンザは2〜3人となっている。

麻しんは日本国内では世界保健機構(WHO)から排除認定(日本固有の麻しんウイルスは存在しない)されているものの、排除されていない国も多い。ワクチン接種率もやや低く、海外から感染者が入国することで流行するケースがあり、注意が必要な感染症だ。3月末にはWHOが欧州で麻しんが流行していると警告を発表しており、日本から海外に向かう人も注意が必要だ。

インフルエンザは寒い時期の病気というイメージがあるが、鳥インフルエンザや2009年に初めて確認された新型インフルエンザは、一般的に免疫を持っていない人が多く、季節に関わらず流行する可能性がある。さらに毎年流行する季節性インフルエンザも夏に流行した報告があり、季節違いの話というわけでもないようだ。実際、埼玉県の高校が季節性インフルエンザの流行で4月18日から学校閉鎖になり、札幌市内の小中学校では、4月24日時点で12クラスが学級閉鎖になったと報告されている。

高山氏も「(3月7日)現在も注意報の報告が下がりきっておらず、注意を続ける必要がある」と指摘した。

インフルエンザはただの重い風邪ではなく、重症化すると死亡する可能性もあり、年間数千人が死亡しているというデータもある。高齢者や幼児、妊婦は重症化リスクが高いが、高齢者は高熱を示しにくいという調査結果もあり、高山氏は発熱だけでなくその他の症状や流行状況にも注意をしてほしいと呼び掛けた。

予防の原則は咳エチケットと人ごみを避け、できる限りワクチンを接種することだ。ワクチン接種で死亡リスクや入院率の低下も期待できる。万一感染した場合は治療薬に加え休養と栄養摂取も欠かせない。

「ひとつの方法だけで予防は実現しません。うつされない、うつさないためにも咳エチケット、マスク、手洗い、ワクチンと複数のフィルターをかけてください」(高山氏)

感染症予防にはワクチンを

2番目の講演で登壇した北里大学医学部膠原病・感染内科学の診療講師、和田達彦氏は「ノロウイルス・風しん・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)」について解説した。

和田氏は、感染症専門医は熱を見ることを重視していると話す。

「発熱の9割近くは感染症だと考えられますが、もちろん熱だけでは病気はわかりません。医療機関を受診する場合も、医師に発熱以外の症状を伝えることが大切です」

同じ38度の発熱でも、下痢や嘔吐があれば感染性腸炎ではないか、赤い発疹があれば風しんではないか、耳の下が赤く大きく腫れていれば流行性耳下腺炎ではないか、と医師も推測しやすくなる。

胃腸炎を起こすウイルスは複数あるが、大半が「ノロウイルス」によるものだという。ノロウイルスは貝を食べて感染するというイメージがあるが、貝から感染した人を起点に人から人への感染が広がっていく事例のほうが多い。

少量のウイルスでも感染が成立し、乾燥した粉塵に混ざったウイルスを吸い込むことでも感染してしまうためだ。

こうしたノロウイルスの特性を踏まえると、接触を避けることが予防対策で重要になる。アルコール製剤の効果は乏しいため、石けんと流水による入念な手洗いが不可欠だと和田氏は語った。

「手の甲、指の間、各指、手首を丹念にこすってください。我々も医療者に対して繰り返し訴えているほど、当たり前でも大切なことです」

感染症の中でも流行しやすいものはウイルスが原因であることが多い。しかし、ウイルスに治療薬はほとんどなく、抗生剤はまったく効果がない。ノロウイルス、風しん、流行性耳下腺炎にも特効薬と言えるようなものはない。

「風しんにかかった妊婦から生まれる子どもには先天性の障害が残りやすく、母親に症状がなくても生まれた子どもには影響が出る場合も少なくありません。そうした事態を防ぐためにも、妊娠を希望する人やそのご家族はワクチン接種をしていただきたいと思います」

麻しんと風しんには「麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)」が、流行性耳下腺炎にも任意接種のワクチンが存在する。さらに、ノロウイルスのワクチンの試験が昨年から開始されているという。もちろん、大量にワクチンを接種すればいいというものではなく、和田氏は自分の抗体の状況や接種可能か知るために、予防接種歴を確認するよう呼びかけた。

医師・専門家が監修「Aging Style」