プチ鹿島さん

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“時事芸人”のプチ鹿島さんが、新刊『芸人式新聞の読み方』を出しました。朝日、読売、毎日、日経、産経、東京の6紙のほか、スポーツ紙5紙、夕刊紙3紙を購読し、時事ネタの痛快さには定評があります。ときに「マスゴミ」とも揶揄される新聞を、どう使えばいいのか。「政権に近い」といわれる読売・産経、そしてそんな「大マスコミ」を批判する日刊ゲンダイの読み方について聞きました。全3回でお届けします。(聞き手・構成=須藤 輝)

■「ゲンダイ師匠よ、もっと怒れ」

――『芸人式 新聞の読み方』は、書名の通り“時事芸人”プチ鹿島さんならではの新聞の味わい方を伝えるものですが、なかでも夕刊紙「日刊ゲンダイ」の紙面に頻出するワードをまとめた「ゲンダイ用語の基礎知識」は痛快でした。

ありがとうございます。やっぱり日刊ゲンダイは面白いですよ。この本では2014年の、舛添要一さんが当選したときの都知事選における日刊ゲンダイの熱さをネタにしつつ、しかし敬意を込めて“ゲンダイ師匠”とお呼びしながら解説しているんですね。

――当時の日刊ゲンダイは、とにかく「安倍自民が推薦する舛添を落とせれば政策なんてどうでもいい」という論調になっていましたね。

そうなんですよ。当時は、「ゲンダイ師匠は怒りで我を忘れている」と思っていたんですけど、時が流れて、森友学園の問題などが取り沙汰されるようになって、ゲンダイ師匠の言い分がマトモに聞こえる時代になってしまったようにも思えます。だから、僕は「ゲンダイ師匠よ、もっと怒れ」と思うし、そんな毎日怒っている師匠を愛して止まないんです。だって、新聞で「ペテン」なんて言葉が出てくるのは日刊ゲンダイだけですから。

――「ゲンダイ用語」では、「ペテン」だけでなく、「亡国政権」や「デタラメ」といった大仰な言葉で、安倍政権を批判していますね。

安倍首相と自民党にはとにかく「熱い」。あと、「大マスコミ」に対しても。自分たちもマスコミなのに、テレビや全国紙を「大マスコミ」とラベリングしてぶった斬る。「全方位に噛み付く」というスタンスが、最高です。

■朝日新聞は“プライド高めのおじさん”

――ただ、そんな日刊ゲンダイの煽情的な主張には批判もあります。

本にも書きましたけど、以前、ゲンダイの中の人にお会いしたときに「なんでいつもどぎつい論調で、派手な色使いなんですか?」って聞いたら、「過激な見出しに興味を持った人に買ってもらいたい」とか「電車の窓ガラスに映った見出しを周囲の人が見てギョッとすればいい」って。だから、そういう戦略があるんですよ。

――ほとんど「アジビラ」ですね。

そう。だから「ゲンダイ=永遠の学生運動」と思って読むと、すごく味わい深いんですよね。

――鹿島さんはほかの新聞も「キャラ」として擬人化しています。たとえば朝日新聞は“高級な背広を着たプライド高めのおじさん”、産経新聞は“いつも小言を言っている和服のおじさん”。つまり、各紙はそういう「キャラ」や「芸風」で売っているんだから、そこに怒るよりも、その違いを楽しもう、という提案ですね。

たとえば政治の話題では、「安倍政権が好きか嫌いか」で、感情と感情がぶつかりあうことが増えているように感じます。でも、そうやって感情的に反発するよりも、各紙を読み比べて「同じ事件を扱っているのに、なぜこんなにも切り口が違うんだ?」と違いを味わったほうが楽しいと思うんです。朝刊紙で言うと、朝日新聞と読売新聞、あるいは東京新聞と産経新聞の違いがわかりやすいですよね。

――朝日と東京が「左派」、読売と産経が「右派」という違いですね。

左と右どちらの論調もあっていい。たとえば森友学園問題では、安倍政権に肯定的な読売や産経の報道を追っているほうが面白いんですよね。「あ、やっと書きだしたな」とわかるからです。つまり、2月9日に、朝日新聞が初めて森友学園のことを記事にしたんですけど、その9日後ぐらいに読売も書きだした。これは問題が大きくなりすぎて、読売も「書かざるを得なくなった」と受け止めました。しかも、そんな読売の報道のほうが読んでいてわかりやすい。批判的な朝日や毎日、東京新聞もいいんですけど、あれもこれも問題視するから。

――論点も複雑になってしまう。

そう。それよりは政権に近い新聞を読んだほうが、皮肉なことに、いま政権にとって何がやっかいなのか、問題の本質が浮き彫りになるんですよね。これはあくまで僕の見立てですけど、読売は社説でも国有地売却の件を問題視している。逆に言えば国有地売却は問題だと認めざるを得ないので、やはりここがひとつ大きな論点であるということがわかります。政権寄りの新聞は騒ぎを大きくしたくないから、淡々と書くしかない。感情的ではないから、読む側としても論点を整理しやすいんです。

■「マスゴミ」と切り捨てるのはもったいない

――各紙の立ち位置によって報道の姿勢も変わるし、その姿勢を勘案して読んだほうが面白いと。

「政権に近い」というだけで拒絶する人もいますけど、僕からすればむしろそんな美味しい御馳走はなくて。要は政府筋の情報を出してくれるんだから、それはそれで参考にすればいいじゃんってことなんですよね。

たとえば2014年の衆議院の解散も、読売新聞は「解散へ」と報じたのに対し、他紙は「解散か」だったんです。「へ」と「か」ってぜんぜん違いますよね。そこで「読売は政権とズブズブだから情報をもらえるんだろう」とか「権力の犬になるのか」みたいな批判も当然あると思うんですよ。だけど、政権のことをよく知るためには、政権と近い新聞の記事をチェックするほうが効率的じゃないですか。読み手はそこを利用すればいい、という考え方ですよね。

――他方で、新聞は発行部数も年々減少しています。ネット上では「マスゴミ」という揶揄の声も聞こえます。

でもいまだに、ジャーナリストや物書きを育成する機関としての新聞の存在感は圧倒的です。小説『罪の声』(講談社)がベストセラーになった作家の塩田武士さんも、取材力や筆力を鍛えるためにまず新聞社に勤務したと聞きました。

――報道機関としての伝統は伊達ではないと。

加えて、この数年、どの新聞社もデジタル版に力を入れ始めています。記者も自分の名前でTwitterを使うなど、ネットとの親和性を高めていく努力はしていますよね。裏を返せば、新聞がネットに本腰を入れたら、もともとネット媒体で活動していた人たちにとっては脅威になるはずです。新聞は誤りがあれば訂正も謝罪もするし、検証もされる。そこは信用できると思います。

――たしかに、ネット上のニュースをたどると、一次情報は新聞報道であることが多いですね。

新聞を「古いメディア」として切り捨てるのはもったいないですよ。ネットか紙かのどちらかではなくて、どっちも利用すればいい。そこで僕は、新聞を利用するひとつの方法を示したつもりなんです。「こう読めば、新聞もまだ捨てたもんじゃないよ」って。

■プチ鹿島さんが教える「ゲンダイ用語の基礎知識」

※『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)178〜180ページより一部を抜粋。ぜひ書籍にて全文をご確認ください。

『赤っ恥』
ひどい恥のこと。ゲンダイ師匠の決めゼリフのひとつ。

(用例)「トランプ勝利を予測もしなかった安倍政権や大メディアの赤っ恥」

『笑止千万』
非常にこっけいなさま。ゲンダイ師匠の見せ場のひとつ。大見得を切っている姿を想像しながら読むとよい。

(用例)「TPP崩壊に右往左往。大メディアの笑止千万」

『大マスコミ』『大メディア』
ゲンダイ師匠は政治家だけでなく、一般誌や記者をも斬りまくる。マスコミやメディアの上に「大」をつけると、タブロイド紙の誇りと意地が漂う。類似の言葉では「大手新聞」「従軍記者」がある。

(用例)いやはや、もはや大マスコミは詐欺師の共犯と化している」「世界が見えない安倍政権と大メディア」「大メディアの腐敗堕落」

『亡国政権』
安倍政権のこと。

(用例)「求められるのは亡国政権の懺悔とケジメであろう」

『デタラメ』
安倍政権のこと。

(用例)「大風呂敷を広げるばかりのデタラメ政権」

『ペテン』
安倍政権のこと。日常生活ではなかなか聞かなくなった言葉だが、ゲンダイ師匠はほぼ毎日使っている。

(用例)「全てが八方塞がり 大風呂敷のペテン政権」「バカバカしいTPP審議、どう落とし前をつけるかペテン首相」

『大風呂敷』
安倍政権のこと。「ペテン」「デタラメ」などと親和性が高く、セットで出てくる。

(用例)※すでに何度も出ています。

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プチ鹿島
1970年長野県生まれ。大阪芸術大学放送学科を卒業後、大川興業に所属 。お笑いコンビ「俺のバカ」での活動を経て、フリーとなる。2012年からオフィス北野所属。スポーツからカルチャー、政治まで幅広いジャンルの時事ネタを得意とする「時事芸人」としてラジオ、雑誌を中心に活躍している。著書に『教養としてのプロレス』、『東京ポッド許可局』(共著) がある。

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(聞き手・構成=須藤 輝 撮影=プレジデントオンライン編集部)