妊娠107日の時点で人工子宮に移されたヒツジの人工子宮4日目(左)と人工子宮28日目(右)の写真。(c)Partridge et al/Nature Communications/creativecommons.org/licenses/by/4.0/

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【AFP=時事】透明な液体で満たされた人工子宮で、ヒツジの胎児を正常に発育させる実験に成功したとの研究論文が25日、発表された。超未熟児の死亡や生涯にわたる身体障害を回避する助けになる可能性のある成果だという。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された論文の主執筆者で、米フィラデルフィア小児病院(Children's Hospital of Philadelphia)の胎児外科医のアラン・フレイク(Alan Flake)氏は、このシステムは子宮内での胎児の自然な発育が継続するように設計されていると話す。

 フレイク氏は電話記者会見で「それが、このシステムの優れた点であり、超未熟児に現在行われている対応策の改良につながると楽観している理由でもある」と語った。

 現在、妊娠期間が40週ではなく22〜23週程度で生まれる新生児は、生存率が50%で、生存した場合でも90%の確率で重度の長期的な健康問題が発生するとされている。

 子宮内の生活を再現する今回の最新システムは、人への使用が承認されれば、これらの確率を大幅に改善するかもしれない。

 研究チームは米食品医薬品局(FDA)と協力して、人への臨床試験の準備を進めており、3年以内に開始できる可能性があるという。

 胎児は、合成羊水で満たした透明なプラスチック袋に入れられ、子宮内と同じように液体を呼吸する。「液体の環境は、胎児の発育に不可欠だ」と、フレイク氏は述べた。

 臍帯(さいたい。へその緒)が管を通して袋の外部の機械につながれており、この機械が内部を通る血液に対して二酸化炭素(CO2)の除去と酸素の供給を行う。

■機械式ポンプは不使用

 機械式のポンプは使われておらず、胎児の心拍だけで作動し続ける。未熟児の肺や心臓は機械式のポンプなどによる外傷に耐えるには小さく、超未熟児は生存しても慢性的な肺疾患などの健康問題が生じることが多い。

 論文の共著者マーカス・デイビー(Marcus Davey)氏は「機械式ポンプによる不均衡な血流が引き起こす心不全を回避できるのも私たちのシステムの大きな利点だ」と語る。デイビー氏は同小児病院胎児研究センターの研究者で、今回のプロジェクトではチーフエンジニアを務めた。

 今回の研究では、ヒツジの胎児6匹を妊娠105〜112日(人間の妊娠23〜24週目に相当)の時点で母親の胎内から人工子宮に移して発育させる実験を行った。胎児は人工子宮内で最大28日間発育させた。

 ヒツジは、特に肺の発達が人間と非常に良く似ているという理由から、出生前治療の実験に長年用いられている。

 ヒツジの胎児は人工子宮内で「正常な呼吸と嚥下(えんげ)を示し、目を開け、羊毛が生え、動きがさらに活発になり、成長、神経機能、臓器の成熟のすべてが正常だった」とフレイク氏は説明した。

 実験に使われたヒツジのほとんどは人道的に殺して脳、肺、そのほかの臓器を調べた。数頭は哺乳瓶で栄養を与えて育てたところ「あらゆる面で普通に発育した」(フレイク氏)という。そのうちの1頭は研究から「引退」し、ペンシルベニア(Pennsylvania)州の農場で暮らしている。

 FDAの臨床試験が順調に進み、新生児に対する安全性と有効性が証明されれば、人工子宮システムはあと3〜5年で利用可能になると、フレイク氏は語った。
【翻訳編集】AFPBB News