「そもそも、仕事量が多すぎる」
「好きな仕事ができていない」
「パワハラ上司がいる」

こういったことが原因で、やる気が起こらず、会社に行くのが嫌になっている人が多いと指摘するのは、産業カウンセラーである『やめる勇気 「やらねば! 」をミニマムにして心を強くする21の習慣』(見波利幸著、朝日新聞出版)の著者。

ところが多くの場合、仕事量や業務内容、上司の性格などは本質的な問題ではないのだといいます。

なのに多くの人は、これらをなんとかすべきだと思いがち。しかし仕事内容や上司をすぐに変えるのは困難。それに表面的な問題にとらわれ、嫌だ嫌だと思いながら毎日を過ごしていると、どんどん気持ちが落ち込んで行くもの。うつ病などを発症することにもなりかねません。

みなさんに本当の問題に気付いてもらうために、本書ではまず「やめてみてほしいこと」を提案します。
私がこれまで多くのカウンセリングをしてきて実感しているのは、メンタル不調に陥る人は、「心に負荷をかける習慣」を持っているということです。勇気を出してその習慣をやめてみることで、折れない心を育むことができます。また、自分が抱えている真の問題に気付くきっかけにもなるでしょう。(「プロローグ」より)

そんな本書の内容を実践して行くと「レジリエンスを高める」ことにつながるのだそうです。レジリエンスとは、ストレスを跳ね返す弾力性のこと。そして、このことについてイメージしてほしいのは竹なのだといいます。細いけれどしなやかで弾力性に富み、曲がっても自ら元に戻る。そんな竹のような弾力性を身につけることが、レジリエンスを高めるというのです。

「やめてみること」を見つけてレジリエンスを高めるために、第1章「これをやめれば心が強くなる」に注目してみましょう。

愚痴を我慢するのをやめてみる


職場で嫌なことや落ち込むことがあると、つい愚痴をいいたくなるものです。でも「人に愚痴なんていうべきじゃない」「愚痴をこぼすのは格好悪い」と我慢して、ぐっと飲み込んでいる人も少なくないのではないでしょうか? ある意味で、それは当たり前の考え方かもしれません。

しかし著者は、愚痴はどんどん口に出したほうがいいというのです。胸の内にたまった感情を表に出すと、気分がすっきりしてカタルシス効果(心の浄化作用)が得られるから、というのがその理由。

ただし、その効果があるかないかは、愚痴を聞いてくれる相手によるもの。相手がその気持ちを受け取ってくれなかったとしたら、愚痴をいうことで余計に落ち込んでしまう場合もあるわけです。つまり愚痴をいうなら、こちらの気持ちを大切にしてくれる人を選ぶべきだということ。そのため、この相手探しは慎重に行う必要があるといいます。

では、愚痴がこぼせる相手はどうやって選べばいいのでしょうか? この点についての大きな判断材料としては、「自分に興味を持ってくれているかどうか」が挙げられるといいます。そして相手に関心があるかどうかは、態度に表れるそうです。話しかけてもパソコンから目を離さずに応対するような人は、相手の気持ちを大切にしていないわけです。

愚痴を言う時は、相手の行動や態度をよく観察し、ある程度コミュニケーションをとってから、自分の気持ちを受け止めてくれそうな相手かどうかを見極めましょう。もちろん自分の愚痴ばかり聞いてもらうのではなく、相手の話も聞いて気持ちを受け止めることも大切です。お互いに愚痴を言い合える関係の人がいるとよいですね。(20ページより)

愚痴を聞くときは、相手の気持ちを否定したり、自分の価値観を押しつけたりせず、相手の気持ちをそのまま受け取ることが大切。それが「共感する」ということだと著者は記しています。(17ページより)


論理的に話すのをやめてみる


理屈の通った内容を系統立てて明確に話すことは、社会人としてとても大切。そのため、「論理的に話す」ことを日常的に意識して努力している人も多いはずです。でも、そこだけに意識を集中しすぎてしまうと、余計なストレスがたまってしまうもの。また、まわりの人から気にかけてもらったり、大切に思ってもらったりすることが少なくなる可能性すらあるといいます。

私たちが「論理性」を重視するのは、それによって相手に話を理解してもらいやすくなるから。つまり本来の目的な相手に理解してもらうことであり、論理的に話すことではないのだという考え方。なのに論理的に話すことにばかり意識を向けてしまうと、結果的に相手の心を動かすことができなくなってしまうというのです。

ビジネスシーンにおいて論理的に話すことはとても重視され、ビジネス書や上司からそういう教えを受けた人は多いようです。論理的に話せない自分に仕事ができないというレッテルを貼ってしまう人もいるほどです。論理性はもちろん重要なのですが、それだけが人を動かす要素ではありません。(中略)目的は相手に自分の話を理解してもらうことです。ですので、最も大切なのは、相手の心に寄り添うことです。「この話し方で相手は何を感じているか」を、まず考えるようにするのです。(28ページより)

そうすると、相手に伝わりやすい話し方ができるはずだと著者はいいます。(26ページより)


「オチ」や「ツッコミ」をやめてみる


会議や打ち合わせなどで、「気の利いたことをいわなければ」と焦ってしまうことはよくあります。的を射た意見をいいたくて、なんとか言葉にするのだけれどうまくいかない。そして結局はいいたいことが伝わらず、自己嫌悪に陥ってしまったりするわけです。

ビジネスの世界では、「会議で発言しない人はいないのと一緒」だというような話をよく聞くことがあります。そのため、「自分は意見をいうのが下手だ」「会議で発言しなければと思うとすごくプレッシャーになる」と悩んでしまう人も多いのだといいます。

でも現実的に、あらゆる場面で相手が感心するような意見をいうのは、かなり難しいことでもあります。それは経験を積み、場数を踏んでこそできるもの。なのに、最初から相手の心に刺さるような「気の利いたこと」をいおうとすると、大きなストレスになってしまっても当然。だいいち、もともと人前で発言すること自体が苦手な人もいるはずです。

私がアドバイスしているのは、意見を求められたら、まずは「素直に自分が感じていることを伝える」ということです。画期的な意見を言わなければならないという思考はいったん脇に置いておいて、まずは自分の気持ちを正直に伝えることを優先してください。(35ページより)

たとえば会議で意見を求められた場合、「○○さんの先ほどの説明はわかりやすかったです」「いますぐに結論を出すのは難しいと感じています」「少し考えさせてください」などと答えるようにしてみればいいわけです。こうしたことはさほどハードルの高いことではないので、意見をいうときにも焦らなくなるというのです。さらに「気持ちを伝える」という行為を積み重ねていくと、発言すること自体に慣れてくるといいます、

そして焦らなくなり余裕が出てくると、冷静に状況を把握することができるようになるわけです。そうすれば自然に、自分ならではの意見が出てくるということ。

話をする時に、いつも相手の心を打つような「オチ」を用意しなくてもいいのです。プレッシャーはほとんどの場合、自分自身でつくってしまっているものです。(36ページより)

一方、いわゆる「ツッコミ」をしなければならないというプレッシャーを抱えている人もいるのだとか。同僚や後輩、部下のアイデアなどに対し、「気の利いた意見をいわなくては」と思うあまり、つい否定的な発言ばかりしてしまうタイプ。

でも、それが相手に不快感を与えることは十分に考えられるでしょう。表現によっては相手の心を折ることにもなりかねず、結果的に信頼関係を築くことが難しくなってしまう可能性もあるということ。つまりこの場合も、相手のアイデアのよい点を素直に口に出し、そのうえで、よりよくするための意見をいえばいいということです。(34ページより)



自分自身を無意識のうちに押さえつけていると、どんどん苦しくなるのは当然の話。しかし当たり前だと思い込んでいたことをひとつずつやめてみれば、心はどんどん楽になっていくことでしょう。そんな状態に立ち戻るために、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?


(印南敦史)