来季の磐田入りが内定している中野。昨年度のインカレでは決勝で大爆発を見せた。写真:竹中玲央奈

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 昨年の全日本大学サッカー選手権大会の決勝戦で日本体育大学を8-0という衝撃的なスコアで破り、栄冠を手にした筑波大蹴球部には、その試合で先発だったメンバーのうち10人が今年も残っている。今季は関東大学サッカーリーグ、夏の全国大会である総理大臣杯、そしてインカレの3冠を目指しており、その可能性が十分にあるチームだ。
 
 この筑波大の絶対的なエースストライカーが中野誠也である。先のインカレでMVPと大会得点王に輝いた彼は、4年生への進級を待たずして、今年の1月にユース時代を過ごしたジュビロ磐田入りが発表された。
 
「ジュビロに育ててもらったという意識や、恩返ししたい思いが強かった」
 念願叶い、来年からはJリーガーになることを確約させた中野であったが、4月23日に行われた天皇杯1回戦のY.S.C.C戦では自らの2ゴールによりチームを勝利に導き(スコアは2-1)、2回戦でJ1のベガルタ仙台と戦う権利を手繰り寄せた。
 
「点数を取りたいという思いは強かったですし、来年からJ1(のチーム)へ行くというのは決まっているので、ここで負けてはいけないという強い気持ちもありました。ただ本当に、得点、得点、となると自分も空回りしてしまつところがあるので。いい意味で力を抜いて、という感じで臨んだというところですね」
 
 敵陣での相手のミスを奪った三笘薫(2年・川崎F U-18)からのパスをボックス内で受けGKとの1対1を制した1点目とカウンターから北川柊斗(4年・名古屋U-18)のフィードに絶妙なタイミングで抜け出してGKの位置と相手DFが寄せてくる方向を考えながら冷静に流し込んだ2点目と、いずれもストライカーらしいゴールだった。簡単に見える1対1を決めてくれる選手がチームにいるほど、心強いものはない。
 
 東福岡高出身で後方からのフィードを武器とするDFの小笠原佳祐は「誠也くんが決めてくれるので。“とりあえず”出しておけば良いかなとは思う」と冗談交じりに話したが、多少アバウトなボールでも相手が嫌がるところにボールを置けば、中野がそこに入り込んでくれるという信頼が、チームの中にも生まれている。
 
 それも、チャンスに転じた瞬間に自らがゴールを奪うために最も有効なポジションを見定め、そのエリアに一瞬で潜り込むオフザボールの動きが一級品であることの証明だ。J3相手とはいえ、しっかりと自らの武器を示して結果を残せたところにも、彼の凄みが窺える。
 そして、次の相手はJ1クラブである。
 
「公式戦でJ1(のクラブ)とやるというのは自分の中で初めての機会なので。どれだけできるかというのは自分にとってもチームにとっても大きなところ。思い切って臨みたいなと思います」
 
 現時点での自らの力がどこまで通用するのか――。それを試す絶好の機会を中野は楽しみにしている。
 
 先の天皇杯1回戦・Y.S.C.C戦には、磐田のサポーターも彼を見定めに来ていたようだが、今後はより一層“プロ内定者”として他の大学生プレーヤーとは異なる目線を周囲から当てられることになるだろう。厳しい評価を下されることもあるに違いない。
 
だが、それに関して本人は「ダメだったらダメで非難されるというのは分かっていて(プロ入りの)早い決断をしました。逆にそういう、いろんな方の批判を力に変えていかないといけないと思うので。非難されたら非難されたで、それを受け止めてやりたいなと。 強い気持ちでやっていきたいと思います」と語り、どういった類の評価であれ、周囲の目線や言葉を自らの力に変えていく考えを明かした。
 
 Jの舞台に立つ2018年シーズンを前にまだまだ中野は成長していくだろう。“ジャイアントキリング”が醍醐味の天皇杯で、その中心に立つ彼の姿を次の仙台戦でも見たいものだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)