(写真提供=SPORTS KOREA)

写真拡大

昨年5月、韓国ソウルの江南駅で起こった無差別殺人をご存知だろうか。

犯人のキム氏(35歳)は当時、江南駅近くにあるトイレで22歳の女性を10数回に渡って凶器で刺して殺害。キム氏と被害女性にはなんら関係がなかったこと、また犯行動機として「数日前に女性に吸殻を投げつけられた」と話していたことから、韓国では“女性嫌悪(ミソジニー)”による犯行として大きな注目を集めていた。

「江南通り魔殺人事件」と呼ばれるこの事件に先日、判決が下った。韓国の大法院(日本の最高裁に相当する)は、殺人容疑で起訴されていたキム氏(35歳)に懲役30年を言い渡している。

女性嫌悪による犯行ではない?

無期懲役や死刑を望む世論が多かったため、韓国ではこの判決が大きな話題を呼んだが、それ以上に注目を集めたことがある。

女性嫌悪による犯行かどうかという点だ。

裁判所は、「キム氏は女性を嫌悪したというよりも、男性を怖がる性格で、被害意識から相対的に弱者である女性を犯行の対象にした」と判断。女性嫌悪による犯行とは認めなかったかたちだ。

それに対して韓国ネット民からは、「最後まで女性嫌悪による犯罪ではないと言い張るのが物悲しい」「女性だけを対象にしているのだから、女性嫌悪そのものではないか。酒を飲んで運転したのに飲酒運転ではないと言っているようなもの」といった声も上がっている。

実際に裁判所の判断を受け入れず、「江南駅“女性嫌悪”殺人犯、懲役30年確定」(『ニューシス』)などと報じる韓国メディアもあったほどだ。

それほど韓国では、女性嫌悪が社会的な問題となって久しい。

もともとはネット世界の話であったが、現実世界にも表面化しており、その際たる悲劇が「江南通り魔殺人事件」だとされてきた。そんな女性嫌悪の風潮は韓国文学界にも及んでいるそうで、若手詩人がその実態を暴露して大きな議論を巻き起こしたこともある。
(関連記事:「コップをズボンの前に持っていき…」若手詩人が暴露した韓国文学界の“女性嫌悪”

もちろん、対策がまったくとられていないわけではない。

例えばソウル市は「女性安心特別市」として、さまざまな女性政策を実践。昨年はデートDV専用の相談窓口を設けており、さらに今年は市が民間団体と連携して無料法律・医療支援を試験的に実施するとか。デートDVやデジタル性犯罪の撲滅キャンペーンを推進していくそうだ。

それでも、すでに深刻化した韓国の女性嫌悪問題は、非常にセンシティブだ。

韓国で絶大な支持を誇るスターバックスも例外ではない。

韓国でスターバックスは別名“ピョルタバン”と言われるほどの人気で、最近もスターバックス・コリアがとあるキャンペーンを展開したのだが、その広告漫画が「女性嫌悪だ!」と指摘されて問題になっている。

4人掛けテーブルを1人で独占する、ペットを入店させるなど“迷惑な客”として描かれたキャラクターがすべて女性だったのだ。一方で、“良識のある客”として登場するのは男性だったという。

スターバックス・コリア側は「女性を卑下する意図はなかった」と話しているが、ネットを中心に「女性客を卑下している」などとクレームが出ている。

“女性嫌悪マーケティング”などという言葉も出るほど、敏感な反応を見せているのが現状なのだ。

心配なのは、そうした女性嫌悪の風潮が韓国を訪れた外国人観光客たちなどに飛び火しないかということだ。

実際にオーストラリアでは最近、「女性観光客にとって危ない国」ランキングのトップに、韓国の名前が挙がるようになってしまったそうだ。韓国を訪れる女性観光客にとっては不安を感じざるを得ない状況でもあるだろう。

「江南通り魔殺人事件」は「女性嫌悪による犯罪」と裁判所は判断しなかったが、未だに議論は尽きない。一刻も早い改善策が求められている。

(文=慎 武宏)