「柚木みちよし [柚木道義] OFFICIAL WEB SITE」より

写真拡大

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 4月12日、衆議院厚生労働委員会で、介護保険制度関連法案の質疑が安倍晋三首相出席の下で行われました。首相が予算委員会以外の委員会で答弁するのは、かなり珍しいことです。その事実だけでも、与党がこの法案の審議に対して、かなり力を入れていたことがわかります。

 そうした姿勢について、翌日は「森友質問に首相ブチ切れ…介護法案“強行採決”の異常事態」(日刊ゲンダイ)のような批判的な報道が目立ちました。確かに安倍首相はキレていましたが、これは事実とは少し違います。普段は日刊ゲンダイも愛読している神澤ですが、先の報道に対して異議を述べてみたいと思います。

●民進党議員、約束破り&官僚を“恫喝”の暴走

 今回の介護法改定案は、介護サービス利用者に一定以上の所得がある場合の自己負担割合の引き上げや、高齢者などが長期入院する「介護療養病床」の廃止などが盛り込まれ、“改悪”と批判されている部分もあるため、国会での議論はとても重要です。

 それを政府もよく理解しているからこそ、委員会質疑に首相が出席することを了承したのでしょう。しかも、当初は1時間だった質疑時間を1時間30分に延長した上、与党の質疑時間はすべて野党に譲るかたちで行われました。しかし、ここでやはり「森友問題」が出てきてしまったのです。

 各委員会の開催日は、与野党の理事たちが「理事懇談会」で協議して決定します。同会で、柚木道義衆議院議員(民進党筆頭理事)が「今回の厚労委でも、森友学園のことを、どうしても首相に質したい」と主張したのですが、介護保険制度という重要な議題を論議する場であるため、もちろん認められませんでした。

 しかし、柚木議員は納得しません。仕方ないので、自民党筆頭理事の田村憲久衆議院議員が、柚木議員との「筆頭間協議」で「森友学園のことは『言いっぱなし』でいいなら、なんとか受け入れる」と口頭で申し合わせをしました。この「言いっぱなし」とは、質問ではなく「要望」で質問を終わらせる形式です。

 たとえば、今回であれば「首相に財務省内の森友学園関連の資料の復旧を、ぜひ指示していただくことを要望して質問を終わります」と言って質疑を終えるということです。

 これは、いわば田村議員と柚木議員の信頼関係で成り立っていた約束ですが、柚木議員が一方的に破ってしまいました。安倍首相に対して、執拗に森友学園について質問したのです。

 柚木議員は丹羽秀樹厚労委員長から再三注意を受け、ほかの野党議員からも批判を浴びたにもかかわらず、質問をやめませんでした。森友問題を追及すれば国民にウケると思ったのかもしれませんが、これは明らかにルール違反です。

 さらに、柚木議員は委員会前夜に行われた質疑の準備段階でも、内閣官房へ安倍首相に質問することを通告し、答弁書を首相に解説する前に「必ず」自分に見せるようにと、官僚を“恫喝”していました。

 このことは、田村議員には委員会が始まってから伝えられています。田村議員は、柚木議員に筆頭理事としての顔を潰されてしまったのです。さらに、通常は筆頭間協議の内容はほかの野党理事にも伝えられるのですが、なぜか柚木議員が伝えていなかったことも、のちに判明します。

●自民党と民進党が責任のなすり合いでバトル

 理事懇談会では、もうひとつ取り決めがありました。それは、「与野党の信頼関係が崩れたと判断したときは、法案の採決を行う」というものです。

 柚木議員の一連の行動で、「与野党の信頼関係が崩れた」と判断した与党の理事たちは、国会対策委員会と協議した上で採決を行うことを決め、野党理事に通告しました。これは、当然だと思います。

 その場で初めて筆頭間協議の内容を聞いた共産党と日本維新の会の議員は、柚木議員に詰め寄って真相を問いただしたそうです。柚木議員も伝え忘れていたことを認めたそうですが、ないがしろにされた野党議員たちも国対と協議し、柚木議員の所属する民進党とはこの件に関して同調しないことにして、独自の判断で採決に望みました。

 つまり、これは一部メディアが批判するような強行採決ではなく、以前から、たびたびプラカードを掲げては騒ぐだけの“プラカード議員”である柚木議員の暴走が生んだ結果だったのです。

 ちなみに、翌日に予定されていたすべての委員会が延期となり、私たち秘書や省庁の職員および関係者にとっても、とんだとばっちりとなりました。

 柚木議員は丹羽委員長や田村議員に「辞職しろ」と迫りましたが、横にいた共産党の議員に「柚木さん、あなたが辞めなさい」と罵倒される始末でした。その後は自民党と民進党の議員同士で責任を押しつけ合い、どちらが謝罪するかでバトルとなったのですが、正直いって、本当にくだらなかったです。

 厚労委員会の理事会での謝罪現場を見ていましたが、まるで小学生の男子たちがケンカをした後の“ごめんなさい合戦”のようでした。叱られたから謝っただけで、反省していないのが見え見えです。

「謝罪すべき相手は、スタッフである私たちだよね」と、私たち秘書と職員はあきれていました。
(文=神澤志万/国会議員秘書)