ついに念願の有機ELテレビ、東芝「REGZA 55X910」を手に入れた! 製品を見てすぐに購入を決断したひさしぶりの一目惚れだ。もともと昨年あたりからHDR対応の4Kテレビが必要だと思っていて、各社の4Kテレビを物色していたのだが、いまひとつ決め手に欠けていた。それも今年には国内メーカー各社から有機ELテレビが登場することがわかっていたからだ。待ちに待っていたこともあるし、X910シリーズの画質が現時点での自分の要求をすべて満たしていることを確認し、すぐに購入してしまった。

↑東芝「REGZA 55X910」

 

あらためて概要を紹介すると、東芝 REGZA 55X910は、圧倒的な高コントラストと黒の締まりを実現した有機ELパネルを採用した東芝の最上位モデル。高画質エンジンは「OLED REGZAエンジンBeauty PRO」を搭載。人の肌をよりリアルに再現する「美肌リアライザー」や、自慢の再構成型超解像を2回行う「熟成超解像」など、最新の高画質技術を盛り込んでいる。

 

これに加えて、地デジ/BS/110度CSチューナー3基と地デジチューナー6基を搭載。対応する外付けHDDの追加で地デジ6chを全録できる「タイムシフトマシン」や2番組同時録画が行える。4K放送関連では、スカパー! プレミアムサービス用チューナーを備え、スカパー! 4Kの放送が視聴できるほか、Netflixをはじめとする4K動画配信サービスにも幅広く対応と、一般的な薄型テレビとしても高機能を誇っている。

 

さっそく我が家の視聴室に設置された55X910のインプレッションを紹介していこう。まず薄い。ディスプレイ部の上部や左右の両端の最薄部は6.5mmしかない。テレビ全体としてはチューナーや回路部分は厚みがあり、スタンドもあるので、最薄部がどれだけ薄くても驚きは少ないと思うかもしれない。しかし、現物を見るとかなり驚く。薄すぎて組み立てや設置のときにどこを持っていいか戸惑うほどだ。実際の組み立てや設置は業者にお任せしたが、薄いディスプレイ部も十分な強度はあるが、無理な持ち方はしないようにしたい。我が家ではキャスター付きのテレビラックに設置して、動かすときはラックごと移動するようにしている。

↑自宅の視聴室に設置した状態。視聴距離は1mちょっとというかなりの近接視聴。画面が近いので後ろの120インチスクリーンと変わらないサイズ感になる

 

また、テレビの前側にスタンドが出てこない特異なデザインのため、画面は2度傾斜しているし、スタンド部分がおもりの役割を果たすのでやや重い。だから安定感は十分といえるが、万一の転倒対策は厳重に行っておく必要があるだろう。

↑テーブルトップスタンドがディスプレイの前に張り出さないようにデザインされた「フラッシュフロアスタンド」により、空間に映像が浮いているような効果を演出する(画像は製品発表時のもの)

 

薄さがもたらす印象は見事なもので、テレビというよりも大きなポスターを額装して置いたような感じになる。スタンド自体もテレビ画面よりも前に飛び出しておらず、前から見える面積も極小。周囲のベゼルも細いので画面が浮いている印象になる。実物を見た人ならばよく実感できるはず。

↑55X910を横から撮影したところ。上部のディスプレイ部の薄さに注目。ラックは十分に奥行きもあるが、前側のギリギリに画面が来るように配置した

 

↑ケーブル類は背面のスタンド部分に収納できるようになっており、配線などもすっきりと整理できる。後日、転倒防止のためのバンドなどの取り付けを行った

 

地デジ放送を見ていても、東芝らしい精細さと豊かな色がより濃厚に伝わってくる。これはパネルのコントラストが圧倒的に高く、黒の締まった映像になるので、細かなディテールや色がより引き立つのだ。地デジでさえも画質の良さに驚くほどで、早くも買ってよかったと思ってしまった。

 

暗室で映画を見たときの、今までとは違う見え方にびっくり仰天

筆者は基本的に映画は暗室で見る主義だ。映像以外のものが目に入りにくくなり、作品に集中しやすいからだ。そういう人ほど、映画を見るためのテレビとして有機ELを選ぶといいと実感する。なぜなら、場面が切り替わるときの暗転などで映像が完全に消失するからだ。映画の最後のスタッフロールがわかりやすいが、黒い画面にスタッフ名などが表示されるとき、暗室では黒い部分が光っているのがわかる。これが黒浮き。本来光らないはずの黒が光っていて、浮いて見えるわけだ。有機ELにはこれがない。だから、真っ暗闇の中に文字だけが浮かぶ。この見え方は今まで経験したことがなかった。最新の液晶テレビも黒の締まりはかなり向上しているが、黒画面ではグレーの四角い画面の光を感じる。高コントラストで知られたプラズマテレビも同様だ。有機ELは完全に映像が消えるので、電源のインジケーターを確認しないと電源オフかと思うほど(ちなみにX910シリーズは設定で電源インジケーターを消灯すること可能)。

 

映像以外のものが何も目に入らない感覚は、今までのテレビ視聴とはまるで違う体験だ。さすがに明るい場面では画面の明るさで部屋の中も明るくなってしまうが、映像に集中しやすいのであまり気にならない。しかし、画面付近の光の反射は気になる。ラックの前側ギリギリにテレビを置いたのはそれが理由。黒のラックでも画面の光で反射してしまい、映像の邪魔になるのだ。テレビの前にスタンドがない大胆なデザインもそれが理由だ。ラックに布を敷いたり、いろいろ対策したが、どうしても反射するのでラック前側の設置がもっとも効果的だった。

 

アニメファンは要注目! 有機ELの映像はアニメと相性が極めて良い

というわけで、ここからはいろいろな放送やコンテンツを見た印象を紹介する。映画は暗いシーンも多いので、完全な黒の締まりが得られる有機ELの凄さをよく実感できる。今までは見づらかった暗い場面も見通しがよく、もともとも精細感の高いREGZA画質がさらに際立っていると感じる。ただし、ホラー映画は完全な暗闇の中からぬっと悪霊や殺人鬼が現れたりするので恐怖感も倍増する。ホラーが苦手な人はご注意を。

 

UHDブルーレイも満足度は極めて高い。HDRの高輝度表現は絶対的な明るさでは優位な液晶の方が性能は優れるが、黒側が果てしなく深いので絶対的な輝度が足りなくても、その明るさ感は際立つ。真夏の眩しい光の感じやアクション映画のビームの輝きまで、まさに目を灼くような強い光の表現を味わえる。

 

「スカパー! 4K」の4K映像も今まで以上に精細だが、最近はじまったHDR(ハイブリッド・ログ・ガンマ収録。X910シリーズは対応済み)が見物だ。4K/60pのなめらかな映像でドキュメンタリー系の番組が多いこともあり、映画とは違った高画質を堪能できる。そのリアリティーはまさに自分の眼で見ているようだ。こうしたHDRでのドキュメンタリー番組やスポーツ番組、音楽のライブ番組がもっと増えてくることに期待したい。

 

意外かもしれないが、かなり面白かったのがゲーム。PS4やXbox One Sなどの次世代ゲーム機はHDRにも対応しており、ソフトが対応していればHDR映像でゲームを楽しめる。怖さで評判の「バイオハザード7」は、プレイしやすくするための画面を明るくしがちだが、それだと恐怖感が損なわれる。HDRでは暗い画面でも暗部が見やすいので、プレイしやすく、しかも怖さは絶品。これは至高のゲーム体験。「ファイナルファンタジーXV」は、ゲーム世界の昼夜の光が美しく表現されていて臨場感満点。ただし、ゲーム画面の精細感不足が目立ったので、4K出力できるPS4 Proが欲しくなる。

 

そして最後がアニメ。アニメ作品はUHDブルーレイがまだ2作品、Netflixで「シドニアの騎士」がHDR化されて配信中とタイトルは少ない。これらもアニメらしい光の演出が際立っていて見応えのある映像が楽しめるのだが、実はHDRでもなんでもない普通のアニメ作品がものすごく素晴らしい。手描き時代のアナログアニメならば、透過光の光の感触が実にリアルだし、デジタルアニメでも色がくっきりと出て、階調表現も実にスムーズだ。このあたりは東芝のアニメモードなどの画質設計がよく出ている良さもある。

 

有機ELでアニメが非常に相性が良いと感じたのは、やはり黒だろう。実写と違ってアニメの黒は塗っている。(多少語弊のある表現だが)写真と違って光量が足らずに写っていない、あるいは見せる必要がないから光を当てていないという消極的なものではなく、アニメでは黒である必要があるから積極的に黒を塗っている。そういう作り手の選択がよくわかる。キャラクターに黒い影を落としたり、背景も黒く潰した重々しい雰囲気を出す、そんな狙いがしっかりと出るので、アニメの作品性が大幅に高まったように感じてしまう。黒がしっかりと出るから色が際立つ、色が豊かに出ることで、アニメの映像設計の意図がよく伝わり、作り物であるアニメにリアリティーを感じる。こんな体験は今までになかったものだ。

 

まだまだ登場したばかりの有機ELテレビだが、これはディスプレイ機器として革命的ともいっていい。まだまだ高価なので誰でも買える製品ではないのが残念だが、画質にこだわる人にとって、東芝のX910シリーズや有機ELテレビは何よりも欲しいマストアイテムになることは間違いないだろう。