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ベントレー初の高級SUV、ベンテイガをようやく国内の路上でも見かけるようになってきた。ベンテイガと言えば間違いなく、SUVの中でも、トップ中のトップのクルマだ。このような高級SUVを、ごく普通の日常の中で使ってみたら、どんな感じなのか? さぞかし楽しいに違いないのだろうが、その楽しさは一体どのようなものなのか、実際に検証したく、3泊4日の行程で使用してみた。

以下は、ベントレー モーターズ ジャパンの試乗車のスケジュールに従って、特別な計画もなく、いつもの私の日常生活の中に入れ込んでみたレポートである。

4月11日

夕方、ベントレー モーターズ ジャパンよりベンテイガを引き取る。先週、新たに登録が完了したばかりという試乗車は、日本人好みのグレイシア・ホワイトのエクステリアで、街中で見ると、発表会で見たときよりもかなり巨大で迫力がある。

加えてオプションのカーボン製のエアロ・パッケージを装着しているので、更にスポーティさが増している。実際に乗り込むまでは、ドライビングに相当気を使うのでは、という先入観があったが、いざ、運転席に座ってみると、意外なほどサイズによる威圧感はない。

スリー・サイズは全長5150mm、全幅1995mm、全高1755mmであるから、確かに並み居るSUVの中では最大級なのだが、不思議な事にプレッシャーもなく、スイスイと走り抜けられる。この理由はフロント・ウインドウ廻りの視界が開けていて、ドア・ミラーも大きく見やすいからだ、ということにしばらくして気付いた。

ホワイトとブラックのツートーンの革を張り巡らし、ピアノ・ブラックに塗られたウッド・パネルを組み込んだインテリアは、これまでのベントレー各車と同様、英国のハンド・メイドの粋を集めたもので、その感触は流石にしっとりと手に馴染み、他では得られないものだ。同じ高級でも、イタリア車のような煌びやかさではなく、クオリティが高いのは当たり前、といった抑え目な本物感が各部に漂っている。

都心の雑踏に乗り出してみると、このベンテイガが、紛れもなくこれまでのベントレーの血統を引き継いでいるクルマであることが直ちに感じ取れる。基本的は非常に静粛であり、路面の凹凸に伴って作動するエアサスペンションの独特の動きは、白鳥が水面下で足を漕いでいながら、上体は何事もなかったかの如く泳ぐ様を彷彿とさせて、如何にも優雅に進んでくれる。

この日は、そのまま、家に帰って、ガレージに収納。と言っても、このサイズでは、ガレージ前のスペースには縦に収まらないので、横向きに収めた。過去に横向きに収めたクルマは、ランドクルーザーとフライングスパーぐらいだろう。

4月12日

この日のスケジュールは、三軒茶屋のオフィスで終日、デスク・ワークをする予定になっていて、昼の間にカメラマンにより細部の撮影を行う予定だ。夜になって、甲府まで120kmあまりを走って移動する事になっている。この日の最大の難関は、タイムス24などの時間貸し駐車場に苦労無く停められるかどうか、であった。普段使っている駐車場は、世田谷特有の密集した住宅街の一車線しかない狭い道の中にあり、ハナから、このベンテイガを停めることは諦めていた。

このクルマはオプションの22インチ・ホイールに285/45R22サイズのピレリPzeroを履いているからトレッドも最大となり、最近の比較的区画の広い駐車場でも左右の隙は10cm未満で本当にギリギリだ。

停めるコツは、まず、クルマをパーキング・スペースに対して真っ直ぐにして、ドアミラーを下げ、しっかりとリア・ホイールの動きを見ながら、ゆっくりバックすることだ。焦ってはいけない、あぶないと思ったら、周囲を気にせず、落ち着いて何度でもやり直すことが高価なホィールをキズから守ることになる。

甲府までの120kmあまりの道程は、ほぼ全て高速道路だ。三軒茶屋からは、中央環状山手線のトンネルを使えば中央高速まではものの10分だが、最近は猛烈に混んでいるので、1時間かかることもある。この日もかなり渋滞しており30分ほどを要して初台に出た。

トンネルの渋滞の中でも、このベンテイガは快適である。アクセル・ワークがリニアでスムーズだから、微妙なスピードをコントロールしやすく、ストレスが全くない。パワー・ステアリングは軽めで、センター付近が意外にもやや曖昧であるが、その領域以外は的確である。

八王子を過ぎると、中央道も空いてくるので、思い切ってアクセルを踏み込む、と、突如、背中を蹴飛ばされたような呆れかえるほどの加速でビックリ。それもそうで、何とこのベンテイガの0-100km/h加速はたったの4.0秒で、数値的には、フェラーリやポルシェのようなスポーツカーの3.0秒程度からすると、僅かに1秒遅いレベルだ。このベンテイガの、SUVのボディ形状での強烈なパワーの炸裂は、体験的にはスーパーカーよりも圧倒的に速く心底驚いてしまう。

6ℓW12ツイン・ターボ・エンジンは608ps/6000rpm、91.8kg-m/1350-4500rpmの数値を誇るから、当然といえば当然なのだが、2.5トンもの重いボディをモノともせずの加速には恐れ入る。

中央道の120km程度の走行は、このベンテイガにとっては朝飯前、というか、ちょっとしたお散歩程度の感覚だが、これだけのパワーとボディ重量だと、燃費は想像どおりで、高速で8km/ℓ、通常の道では4〜5km/ℓに留まる。やはり、高性能のコストはそれなりにかかるのである。

4月13日

午前中に、常磐ホテルの仕事を2時間ほどサボり、近くの昇仙峡のワインディングに走りに行く。このワインディングは、4〜5km程だが、回り込んだコーナーとかなりきついアップダウンがあって、クルマの性能を試すにはとても良いコースだ。

ここでも際立ったのは、鋭い加速性能で、コーナーを繋ぐ僅かなストレートでも一気に加速できるから、トータルでは、大きくタイムを稼ぐことが可能だ。

但し、下りのコーナリングでは、重い重量が効いて、フェードこそしないものの、ブレーキにかなり負担がかかる。できれば、カーボン・ディスクが望ましいと思うが、このベンテイガで峠に行き、振り回す人は多くないはずなので問題ないかもしれない。

それにしても、アンチ・ロール・システムの効果で殆どロールせずに、回り込んだコーナーをきれいにクリアしてゆく感覚はクセになりそうだった。結論としては、皆さんが思っているよりも、はるかに速いスピードで安全にワインディングを駆け抜けることが可能だということだ。

午後は再び仕事に戻る。今日は、月に一度の内外情勢調査会の講演会の日だ。今回の講演は政治ジャーナリストの与良正男さんで、北朝鮮情勢から森友学園問題まで、日本を取り巻く政治の現状について、実に考えさせられる講演であった。

4月14日

今日は、たまたま今年2回目のゴルフの日。ラッキーにも天気は快晴。甲府の自宅から北西へ30分あまりのレイクウッド明野ゴルフクラブへ行く田舎道は桜が満開である。

リアのトランクは、484ℓと広いが、真四角な形状のため、ゴルフクラブは斜めに入れるしかない。無論、後席を倒す手もあるが、あえてする必要は無かった。荷物の積み下ろし用の保護カバーは有難いものだ。

レイクウッド明野ゴルフクラブは、南アルプスを臨む山梨県の北西部の高原地帯にあり、池を配置した戦略的コースが広がる。このコースの10番ホールの近くにベンテイガを入れ、良い写真を撮ることができた。パーキングでは、多くの人から「これは何というクルマですか」とか、「迫力がありますね」などと声を掛けられた。やはりマニアには、注目されるクルマなのだ。

アベレージ・ゴルファーの楽しいプレーはあっという間に終わり、自宅で一息入れた後は西日を背に、そのまま東京に向う。

実は1ヶ月ほど前に腰を痛め、まだ完治していなかったので、ゴルフの後のドライビングはかなりの負荷がかかりそうだったが、シートの形状が良かったためか負担にはならず、軽快に帰ってくることが出来た。

帰りの中央高速はゆったりと流し、気筒休止を駆使して、可能な限り燃費の向上に努めてみた。結果は、帰路のデータが最も良く、9km/ℓ台を記録したのである。

トータル3泊4日の日常生活で使用してみて、当然と言えば当然だが、このベンテイガに毎日乗れたら、申し分が無いと思うようになった。

SUVの中では最高峰で、価格も2,739万円と高価だが、購入できる層の人々にとっては、価格以上の満足が得られることは間違いがないと思う。フェラーリやランボルギーニなどのスーパー・スポーツを所有している人の足グルマとしても、最善の選択だ。