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テーマ=『デジタル×価』

“最強のよそ者”として、数々の業界でビジネスに変革をもたらし続けてきた伊藤嘉明が、”趣味も仕事もフルスイングする価値”について考える連載コラム『伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」』。無類のクルマ好きである彼が、中国有数の大都市である深圳(深セン)で発見したものとは……。

中国のパワーをまざまざと

見せつけられる深圳(深セン)へ



好むと好まざるに関係なく、相も変わらず仕事で大陸と関わることが続いている。以前のように毎月強制的に呼びつけられるのとは違って、自分で行こうと思って行っているぶん百万倍楽しいのだが。

といっても、本土ではなくもっぱら香港止まり。ジャッキー・チェンなどの香港映画を見て育った世代なので、香港には当然強い愛着がある。が、昔は広東語オンリーの国だったのに、返還から20年―― 今はかなりの頻度で街中でも北京語を聞くようになった。

香港の地元民たちはそれをどう捉えているのだろう? これも彼の国のパワーなので仕方ないが。国際法無法状態で政府には守られつつ、色んな産業が伸びまくっている現実を行くたびに突きつけられると、日本政府もそうした方がいいのかなぁ……なんてことが自然と頭をよぎってしまう。

そういう意味では彼の国は振り切ってしまっていますね。こちらも負けず、人生、万事振り切るが価値!

 

それで今回は、香港出張のついでに深センに寄ってきた話。



念のため説明すると、深センは香港に隣接した中国の経済特区で、1980年に臂平の号令のもと作られた上海、北京に次ぐ中国有数の大都市である。メッセンジャー&通話アプリ『WeChat』を運営するテンセント等、中国を代表するいくつかの新興企業の本社もここにある。40年前は全く何もなかった土地が、今や世界を代表する工業地帯となり、深センに行けば新しいものが見つかる、というくらいに発展しているのだ。

香港から出国、中国への入国という入国管理のプロセスがあるため、一応違う国に行く感覚ではあるが、香港から列車で一時間掛からないので日帰り出張が可能な距離感だ。今回は数日間の出張だったため、ひとまず二日連続で訪れてみた。当然、深センは広いので、ほとんど見た気になれないのではあるが。しかも香港との境までかなり近づかないと『Facebook』や『LINE』も使えないのも仕方ない。



国を挙げて注力される電気自動車や電動バイク

日本の勝ちが見えない



とはいえ今回の訪問でいくつか面白いものも発見した。

まずは自転車である。いわゆるレンタルバイクなのだが、スマホでアプリをダウンロードして課金することにより、街中に止まっている自転車に乗って、好きなところで乗り捨ててもOK。loT管理されているとのことで、さすが日本より進んでいる。

しかし自分が最も気に入ったのは、その自転車のハードウェアとしての素晴らしさだった。なんとタイヤがランフラットタイヤ仕様になっているのだ。タイヤに一定パターンで空洞があるため、パンクもしないし、そもそもクッション構造となるので乗り心地も良い。機能面とデザイン面両方を重視する私としては、この洒落たデザインにも目を奪われた。正直、持って帰りたいと思ったほど。さすがにそれは諦めましたが……。



ドローンもたくさん売っていたが、やはり気になるのはDJI。世界のドローン市場を引っ張る香港ベースのトップメーカーだ。そんなDJIのドローンは、深センで買うと香港で買うよりも更に安い! と香港のDJIショールームのお兄さんに言われて、香港に戻る時間ギリギリまで悩んではみたが、今回は荷物になるからと購入を見送った。ちょっと後悔……。

また、アイテム発見ではないのだが、タクシーがなかなかかっこいいデザインだったので乗ってみた。しかし、エンジン音がしない。それもそのはず、それは電気自動車だったからだ。どうやらBYDというメーカー製で、これはそのうち世界のトップメーカーの一つとなるだろうと感じた。あの史上最高の投資家ウォーレン・バフェットが投資している自動車メーカーでもある。



ここ最近は政府の肝入りで、国を挙げて電気自動車、電動バイクにものすごく力を入れているだけあり、現在中国には無数のメーカーが存在する。電動バイクに至っては数千社あると言われており、まともなメーカーだけでも数百はあるというのが現状だ。ここから激しい競争にさらされ、さらにいいものだけが生き残るとなると、相当レベルの高い戦いになるだろうことは想像に難くない。

今回の訪問目的の一つは、電動自転車のモーターの仕入れだ。日本製も探してみたのだが、そもそも世界レベルで展開しているメーカーは中国製がほとんど。「日本政府も日本メーカーも何をやっているんだ?」と市場状況やプレーヤーを知れば知るほどヤキモキしてしまった。このままではもう到底勝ち目はないでしょう。自分でできることを日々探してはいるのだが、なんともはや……。

いろんなガジェットを手に入れてハッピーな気分で帰国、となるはずだった今回の旅。しかし結局、日本人ビジネスマンとして日本の将来を憂いながら帰国する、という悲しい出張が続くここ最近なのであった。

文/伊藤嘉明

※『デジモノステーション』2017年6月号より抜粋

連載バックナンバー: 伊藤嘉明の「人生万事振り切るが価値」

いとうよしあき/X-TANKコンサルティング 代表取締役社長。数々の外資系企業での事業再生、マネージメント経験を生かし、可能性のある組織や人材を有機的に結合させたり、資金を投入することで、日本国内はもちろん、生まれ故郷である東南アジアでイノベーションと変革を巻き起こす。著作に『どんな業界でも記録的な成果を出す人の仕事力』(東洋経済新報社)など。