北朝鮮は4月15日の軍事パレードで新型ミサイルを公開したばかりだ(朝鮮中央テレビより)

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北朝鮮が6回目の核実験を強行する可能性もある、とみられていた朝鮮人民軍の創建記念日にあたる2017年4月25日、夕方時点では核実験は行われていないものの、依然として予断を許さない状況が続く。そんな中で、有事の際の中国の対応について解説した中国紙の社説が波紋を広げている。

仮に米国が北朝鮮の核施設を攻撃したとしても、中国は軍事的に介入しない、という内容だ。中国が米国による攻撃を容認するともとれる内容で、韓国紙は「『6回目の核実験はするな』という『最後通告』」だと分析している。

政権転覆は座視しない

中国は北朝鮮に対して一貫して核開発を断念するように求めており、政府の意向を忖度(そんたく)しているとされる中国メディアの北朝鮮に対する論調も厳しさを増している。特に中国共産党系の環球時報が4月22日に掲載した社説では、有事の際の中国政府の行動を「代弁」した。社説では、

「今が中国政府にとって、戦争が起こった際に中国が取る、事前に確立された立場を米国に説明しておく良い時期だろう。北朝鮮政府が断固として核プログラムの開発を続け、その結果として米国が北朝鮮の核施設を軍事攻撃した場合、中国はこの動きに外交チャンネルでは反対するが、軍事行動には関与しない」

などと説明。核施設への空爆であれば中国は容認するともとれる内容だ。その一方で、地上戦による攻撃や、政権の転覆は容認しない考えのようだ。

「しかし、米国と韓国の軍隊が北朝鮮の政権を壊滅させる直接的な目的で非武装地帯(DMZ)を地上から侵略するならば、中国は警鐘を鳴らし、直ちに軍隊を増強するだろう。中国は、外国の軍隊が北朝鮮の政権を転覆させるのを座視することは決してない」
 

韓国の朝鮮日報は4月24日付の社説で環球時報の社説を取り上げ、

「中国が北朝鮮に対して『6回目の核実験はするな』と最後通告したものと受け止められている」

と解説している。

朝鮮中央通信は「破局的結果」警告

 

北朝鮮側も中国に対して黙っているわけではない。国営朝鮮中央通信は4月21日、「他国の笛に踊らされるのがそんなにいいのか」と題した論評で、中国を名指しこそしなかったものの、「われわれの周辺国」について

「彼らがわれわれの意志を誤って判断し、誰かの拍子に引き続き踊らされながらわれわれに対する経済制裁に執着するなら、われわれの敵からは拍手喝采を受けるかも知れないが、われわれとの関係に及ぼす破局的結果も覚悟すべきであろう」

などとして、石油の輸出制限をちらつかせながら核開発断念を求める中国の姿勢を非難した。

中国外務省は「冷静、抑制的な対応」求める

 

環球時報は4月23日の社説で、朝鮮中央通信の論評に「反撃」。論評に対して

「北朝鮮の今後の核活動に対する中国政府の姿勢を変えさせようと、中国に圧力をかけようとしたのだろう。だが、こういった動きは北朝鮮自身の孤立を深める以外に何の影響も与えない。北朝鮮が6回目の核実験を行えば、中国政府は疑う余地なく、国連がさらに厳しい制裁を採択することに賛成するだろう」

などと反論した。

 

なお、中国外務省の耿爽報道局長は4月24日の会見で、朝鮮半島問題について

「関係国には冷静、抑制的な対応を求めたい。朝鮮半島の緊張を高めるような行動は控えて欲しい」

と繰り返した。現時点では環球時報の主張と中国政府の公式見解とは距離がある。

4月25日夕方時点で北朝鮮は核実験を行っていないが、代わりに大規模な軍事訓練を行った模様だ。聯合ニュースは韓国政府筋の話として、北朝鮮が東部の江原道・元山(ウォンサン)付近で過去最大規模の砲撃訓練を行ったと報じた。訓練には金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も立ち会っていたという。