<また動物園のホッキョクグマが死んだ。ストレスを抱えやすい性質で、症状を抑えるために抗鬱剤を与える動物園もある>

カリフォルニア州サンディエゴのシーワールドが、ホッキョクグマのスノーフレイクを繁殖のためピッツバーグに送ると発表したとき、何千件も抗議が寄せられた。20年来のパートナー、セーニャと引き離すのはかわいそうだ、というのだ。

実際、スノーフレイクがいなくなって数週間後の4月18日、セーニャは死んだ。

死んだセーニャの写真を添えて動物園の責任を問う投稿


動物のなかでもホッキョクグマは、とりわけ檻の中の生活に向いていない。北極の広大な氷と海があってこそ初めて繁栄できる種だ。放浪し、狩りをし、泳げなければならない。動物園には対応できない。

オックスフォード大学のある研究によれば、典型的な動物園のホッキョクグマの囲いの広さは、自然のなかの最小の行動圏の約100万分の1しかないという。

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明らかな異常行動

アメリカの動物園ではこれまで数十頭のホッキョクグマが命を落としている。多くは寿命よりはるかに若くして死んだ。死因は喧嘩や有毒物、麻酔など様々だ。

人間が檻に投げ込んだ瓦礫を食べて苦しんで死んだり、蚊が媒介する西ナイル熱に感染したり、サルモネラ菌にあたることもある。

檻の中に入れられると、ホッキョクグマは異常な神経症状を起こしやすい。昼夜を問わずいつまでも泳ぎ続けたり、同じところを何度も行ったり来たりするような常同行動が発現する。そうした症状を和らげるため、抗うつ剤を与える動物園もある。

セントラル・パーク動物園のガス


ニューヨークのセントラル・パーク動物園のガスを覚えているだろうか。毎日12時間、何カ月も泳ぎ続けた。パートナーが死んだ後、落ち込んで心を閉ざしてしまった。高齢で腫瘍にも侵されていたため、最後は安楽死させられた。

人気者のクヌートも例に漏れない。ドイツのベルリン動物園には、クヌートのキャラクター商品が並んでいた。それなのにたった4歳のとき、クヌートは発作を起こし堀に落ちて溺れ死んだ。

溺死したベルリン動物園のクヌート


ホッキョクグマを囲いに入れても、それは保護したことにならない。将来にわたる生き残りを重視するなら、動物園で繁殖を試みるより、彼らの故郷である北極の氷をいかに守るか、そのためにいかに温暖化ガスを減らすかを考えたほうがいい。

筆者は、動物愛護団体「PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)」の国際メディア担当者

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ベン・ウィリアムソン