【ライターコラムfrom川崎】U20W杯の活躍も期待 背番号13を継いだ“生え抜き”三好康児

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 1月の新体制発表会見場でのことだ。3年連続得点王という偉業を達成した大久保嘉人が去年まで背負っていた背番号13。2017年、その番号を川崎フロンターレ生え抜きの三好康児が引き継ぐというアナウンスがされた瞬間、集まっていたサポーターからは、この日一番ともいえる歓声とどよめきが沸き起こっていたのだ。

「ヨシトさんには、番号が決まってから言いました。『来年から13番付けます』って伝えると、『まぁ、お前だろうな』と言われました(笑)」

 本人はそう言って笑う。U−20ワールドカップも控えている今年は、期待と注目を集めるシーズンとなることが予想されていたが、三好はそれをプレッシャーとは感じていない様子だった。

 しかしシーズンが始まると、先発でのチャンスが出番がなかなか巡ってこない。ターンオーバーで臨んだAFCチャンピオンズリーグ第2節イースタンSC戦にスタメンで出ただけで、リーグ戦では途中出場のみ。ようやく巡ってきた初先発が第8節の清水エルパルス戦だったのだ。もちろん、気合いは十分だった。

「こういうチャンスが来ると思っていた。試合で結果を残すために準備もしてきた。まずはチームが勝つためにやれればと思ってます。チームで崩すのも大事ですけど、個人で打開する場面が少ない気がします。個人で打開するプレー見せることで、他も生きてくると思ってます」

 左利きのドリブラーである三好は、サポーターからは“ミヨッシ”の愛称で親しまれている。言うまでもなく、世界的プレイヤーであるバルセロナの“メッシ”をもじったネーミングだ。クラブ生え抜きであり、切れ味鋭いドリブルを見せる小柄なレフティーに、サポーターはたくさんの想いを重ねているのである。

 今季初先発となった清水戦、三好はいつもの左サイドのポジションではなく、右サイドのエリアで起用された。メッシが典型だが、左利きの選手が右サイドに配置されると、中にカットインしたまま左足でフィニッシュに持ち込みやすくなるというメリットがある。

 その特徴が出たのが、1点ビハインドで迎えた62分に生まれた阿部浩之の同点弾だ。アシストしたのは三好である。右サイドでうまく切り返して顔をあげると、視野を確保した状態で角度をつけたクロスを左足で供給。これはレフティを右サイドに配置したからこそのプレーだ。

「阿部くんがいい位置を取っていた。練習ではなかなかクロスを上げることはないですけど、自分は左でボールを持つので、右で切り返したときは顔が上げやすい。出せる意識は常に持っているし、そこは出せたかな。自分も中を見ていて阿部くんとの関係で外せたが、最後は阿部くんのシュートがよかったと思います」

 逆サイドに展開したクロスをダイレクトボレーで合わせた阿部のシュートも見事だった。大外に回り込んでいた阿部は、切り返した場面で三好と目が合い、左足でアーリークロス気味に来ることもイメージできていたと話す。

「三好が見てくれていて、目が合いました。練習から『あそこは見ておいて』とは言っていた。練習とコミュニケーションがあってこそですね。良いボールが来たので、合わせるだけ。コースはよくなかったし、キーパーに触られていましたけど」(阿部浩之)

 その数分後には、小林悠の折り返しに走り込んでいた中村憲剛がミドルシュートを決めて逆転。同点弾と同じく、逆転弾の起点となったのも三好康児の左足によるクロスだ。またも右サイドで角度をつけたアーリークロスを左足で供給。これが小林悠に収まり、得点を生んだ。ここ最近、湿りがちだった川崎の得点力だったが、右サイドでの三好が起爆剤となって生まれた2ゴールだったと言える。

 しかし、試合はロスタイムのラストプレーで追いつかれてのドロー決着。そのため、ミックスゾーンに現れた三好に笑顔はなかった。チームとして追加点が取れなかったこと、なにより自分自身にゴールがなかったことに反省の言葉を述べる。

「勝たないといけない試合でした。自分は出場機会がなく、フレッシュな状態で出たので違いを見せなきゃいけないと思っていたし、自分にとっても大事な試合でした。チャンスはあったので、そこを決め切れる力ですね。落ち着いて周りを使えば、点を取れる場面もあったと思います」

 本人も反省していたように、少し視野が狭くなり、チャンスで強引に仕掛けてしまった場面があったのも事実だ。ただ若武者ならば、このぐらい貪欲でもいい。そしてこの経験すらも糧にしていくべきだろう。

 来月には、いよいよU−20ワールドカップが韓国で開催される。そこの舞台で“川崎のミヨッシ”がどんなプレーを見せてくれるのか。今から楽しみである。

文=いしかわごう