自分の人生は、自分でしか生きられないし、どう楽しんでいけるかは、毎日の選択と気持ち次第。どんな生き方だって、自分で選んできている人は、いつだって魅力的に見えるし、自然と心惹かれるもの。コスモポリタン日本版では、人生を謳歌しているさまざまな女性の生き方を紹介していきます。

タレント・振付師 KABA.ちゃん

1990年代から数多くの有名アーティストの振り付けを手がけ、振付師として名を成したKABA.ちゃん。同時に、その明るいキャラクターでオネエタレントとしてバラエティを中心に活躍。そんなKABA.ちゃんが、性別適合手術について言及したのは2015年のこと。宣言通り、2016年に声帯を含む性別適合手術を受け、その様子をメディアを通じて公開。戸籍を女性に、本名を椛島一華(いちか)とした今、彼女が語ることとは…?

―手術に踏み切ったキッカケは?

これまで色々なことを経験してきたんですけど、「自分がやりたいと思ったことは絶対に全うしたい」って信念だけは貫いてきました。それに昔っからの性分で、新しいことを突きつけられると余計にそそられるんです(笑)。前例がありません、なんて言われると「じゃあやってみたい!」って思うんです。不思議なんですけど、そうやって信念を持って動いている時って、自然と力になってくれる人が集まってきてくれるんですよ。

姉の存在も大きかったです!  乳がんを患ったことのある姉が、「後悔しない生き方をしなさい」って背中を押してくれて。私と姉って、実は家庭の事情で一緒に暮らしたことがないんですけど、でもすごく大切な人。

―手術を受けるにあたって不安はあった?

なかったと言ったら嘘になります。でも、整形手術を受ける時でもそうなんですけど、毎回「このまま目が覚めないで人生を終えるかも…」って覚悟してるんです。その辺は運命に委ねてるんですよ…。

人生の答えって、死ぬ時に出るものだと思うんです。最期の瞬間に「ああ、色々あったけど全体的には上々だったな」って思えれば、いいかなって。でもそれって、ひとつひとつ自分の意志で選択や決断をしていかないと納得いかなかったりすると思うんです。他人のせいにする人生なんてイヤだし、不安もあったけど、やっとその時がきたって気持ちでした。手術が終わったら終わったで、術後に感染症や後遺症が出てくることだってあるから、先生のOKが出るまでは安心できないんですけどね。

―手術の様子をメディアで公開した理由は?

当初は出すつもりなんてなかったんです。でも「同じような状況にある人たちの道標になるはず」って言われて、それなら…って。私ってすぐ丸めこまれちゃうから(笑)。私自身、手術のこととかをネットとかで調べていた時期があったんですけど、当たり障りのない情報はすごく多いんですけど、手術を受ける側が本当に心配している術後の話やケアの正確な情報量が少なくて、本当に信用できるかどうかもなかなか判断つかなくて。命に関わる大きな手術だからこそ、私が公開することでそのノウハウやプロセスを少しでも知ってもらえたらなって思いました。

―術後、自分自身のカラダとの付き合い方はどう変わった?

うーん、実はそんなに大きく変わらないですね〜。あっ、でも前より無茶しなくなったかも!?(笑)。ぶつけたりするとすぐアザになったり、うっかり引っ掻いたりすると痕になっちゃったりするようになって。あとは体力が落ちたってことと、ダイレーション(膣が塞がらないようにする拡張作業)もあるかもしれないけど、下着が汚れやすくなったっていうのが驚きました。おりものシートって、需要があるワケよね〜って気づいたんです。 女性って、何事にも手間がかかるんだなって日々痛感してます。

それと、これは手術前からのこだわりなんですけど、普段はできるだけすっぴんでいるようにしています! メイクで逃げずに、すっぴんでも女性として見られるようになるのが目標なんです。大事な食事やお出かけの時にはメイクしますけど、ベースメイクをしっかりしたら後はナチュラルに仕上げるのが私流です。

―手術後、周りに変化はあった?

ナイーブなトピックということもあって、一部のメディアではどう扱っていいか戸惑われている部分もあると思うんです。まだまだ見えない壁があって、発言がすべて使われるっていうのも難しかったり。私がこれまでやってきたことは変わらないのに…って、なんだか寂しく感じたのは事実です。

―理想の人間像や、ゴールはある?

ゴールなんてないと思ってるんです。メンテナンスだって一生続けていくものだと思ってるし、繰り返す整形のことを心配してくれる人たちもいるけど、私はやるんだったら「どこまで変われるか」やってみたい気持ちもあって。棺桶に入った時に「こんなに変わっちゃったのね」って言われてもいいと思ってるんです。

なりたい自分になるための方法って人それぞれで、食事制限をしてダイエットする人もれば、スポーツをしてカラダを絞っていく人もいるし、そのたくさんの方法の中のひとつに"医療"があるっていう感じですね。

―同じような境遇にいる人にアドバイスを。

まず、情報収集は念入りに。これは私の経験則です。実は当初、『カーダシアン家のお騒がせセレブライフ』でお馴染みのケイトリン・ジェンナーと同じ指導医に手術してもらいたかったんです。そしたら偶然にも、知り合いの知り合いが繋いでくれるって話になって、そのためにアメリカまでカウンセリングを受けに行って、さらにデポジットまで払いました。でも、段々と仲介してくれていた人から連絡が滞るようになってきて…。不信感を抱いて直接アメリカの病院に問い合わせてみたら「私の名前は予約に入ってません」ってバッサリ!  きっと私、騙されちゃったんですよね。すごく落ち込みました。

結局その後、親切な方がFacebook経由でタイの名医を紹介してくれて救われたんです。こんなこともあるから、偏らずに色々な情報に耳を傾けて下調べしていくのが良いと思う。アテンド会社もたっくさん存在するので、きちんと見極めて! 私の場合はアテンド会社の環境や対応に恵まれていたのですが、一番ツラい術後にほったらかしにされていた患者さんもいました。手術も含めてすごくお金のかかることだから「どこかで節約したい」って気持ちも分からなくはないですけど、そこはケチっちゃダメ!

そして、どんな選択をするにしろ、後悔しない生き方をしてほしいです。手術をしたとしても、中には後から「やっぱり違ったかも」って思う人もいるらしくって…、命をかけた大きな決断だからこそ、ひとりで抱え込まずに相談できる人を見つけてほしいです。本当の自分をさらけ出せる人をね! 家族や友人に話せないなら、カウンセリングを受けるのでも良いと思います。

―今、世の中に求めることは?

一昔前までは「男性が働き、女性は家庭を守る」が当たり前だったけど、時代が変わって今は女性が仕事でも活躍するし、性別に対する固定概念も薄まってきていると思うんです。私の場合は男性から女性になったけど、性別で判断するんじゃなくてひとつの個性として捉えてくれるような世の中になると嬉しいです。私が何かの行動を起こす時は、セクシャリティや性別が必ずしも原動力になっているわけではなくて、自分個人として「したい=個性」を突き詰めているだけなんです。

ジェンダーレスって言葉も浸透しつつある今、定義に当てはまらないセクシャリティを持つ人たちがたくさんいるということはもはや紛れもない事実。私が手術したタイの病院は、上層階がホテルになっているんですけど、常に満室だったし、誰かが退院したかと思えばすぐに次の人が入ってくるほどの繁盛っぷり! それくらい需要がある手術で、同じような境遇にある人がたくさんいるってことだと思うんです。

でも、だからといってセクシャル・マイノリティの人たちだけを特別視してほしいわけじゃないんですよ。だって、人間どうしたって生理的に好きな人とか、逆に嫌いな人っていますよね?  色々な要素が積み重なって「人間性として嫌い」なら、それをつべこべ言う権利なんて誰にもないですし。ただ、セクシャリティという要素だけでフィルターをかけないでほしいなってだけなんです。男性女性という分類でわけるんではなく、これからは一つの個性としてみていってほしいんです。…でも、恋愛するときは女性としてみてほしいって彼氏に求めますけどね! 矛盾してますね(笑)。

―今後、チャレンジしてみたいことは?

実はまだInstagramとかのアカウントを持ってないんですけど、、自分の率直な声を外に届けていくという意味で、これを機に発信していってもいいかなって思ってるところです♡