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イスラエルMellanox Technologiesは4月20日、都内で記者説明会を開催し、同社の概略と新製品の説明を行ったほか、新たな日本日本支社長の紹介を行った(Photo01〜03)。

そもそもMellanox Technologiesという会社はInfiniBandで圧倒的なシェアを誇るメーカーである。創業は1999年であるが、元々はIntelとGalileo Technologyという2社からのスピンアウト組が設立した会社である(もっと正確に言えば、Intelのスピンアウト組がGalileo Technologyを創立し、ここが2001年1月にMarvell Technologyに買収後、このGalileo Technologyの創業者たちが立ち上げたのがMellanox Technologies)。当初のビジネスはInfiniBandであった。元々InfiniBandはIntelが音頭を取って立ち上げた業界標準のサーバ向けインターコネクトの規格で、InfiniBand Trade Associationが標準化の策定やプロモーションなどを担っているが、当初のリーダー的ポジションにあったIntelが2002年に製品の投入を中止するなどして、その先行きが危ぶまれていた。ところが、特にHPC向けには高い転送速度もさることながら低いレイテンシが好評で、その割に値段が安いということで、それまでHPC向けに使われていたQsNetやMyrinetをどんどん置き換えており、今ではHPCにおけるインターコネクトのデファクトスタンダードといった位置づけとなっている。もちろん普通のサーバ用途としても利用される場合もあるが、比率としてはHPC向けの方がやや多い程度である。こうした動向を受けてか、一旦は撤退したはずのIntelもQLogicのInfiniBand事業を2012年に1億2500万ドルで買収し、Intel True Scale Fabricとして現在も製品を出荷中である。

さてMellanoxは、このInfiniBand事業をずっと継続して行っていたことで、言ってみれば残存者利益とでも言うべき大きなマーケットシェアを獲得。これに加えてInfiniBandの開発に際して得た高速通信技術を利用して、10Gbps以上の高速Ethernetのマーケットにも参入、さらに2016年には同じイスラエルのEZChipを買収、ネットワークプロセッサのマーケットにも参入することになり、現在はこの3つの製品群が同社の柱になっている。

ということで同社のターゲットであるが、特に日本で強調されたのは、10Gbps以上を超えるEthernetのマーケットが今後大きく伸びる、という話である(Photo04)。特に説明の中でWaldman氏が強調したのは「2020年のオリンピックでは、4Kだけでなく8K映像がスタンダードになる。8K映像を非圧縮で通そうと思ったら、100Gbpsでは足りなくなるから、より高速な帯域が必要になる。なので今後はこうしたマーケットが急速に伸びる」と、100G製品の急速な伸びの理由を説明した。

同社の強みは、それこそケーブルからIC、アダプタ、スイッチやソフトウェアまで、ネットワークに関してほぼ1ストップで提供されていることである(Photo05)。もちろんEthernetもInfiniBandも相互接続性が担保されているのが前提だから、特定の製品だけを利用して使うことも可能だが、1ストップでまとめて提供できるのが同社の強みであり、生産性も良くなるとしている。

ちなみに先のオリンピックに関して言えば、現状は100Gbpsまでの製品ラインアップだが、2018年には200/400GbpsのEnd to End Solutionを提供する予定だとしており、これにより8Kの非圧縮映像を1本の回線で通せるようになるとした。またInfiniBandについても、2017年中に200GbpsをサポートするInfiniBand HDR製品をリリースする予定としている。最近はInfiniBandはHPCのみならず、AI(ディープラーニング)用のシステムもHPC的な大規模クラスタで構築する例が増えており、こうしたニーズが期待できるとしていた。

ところで今回、日本で記者会見を行った理由としては、日本を重点地域(Focus Area)とみなしているから、だそうである。ちょっと同社の2016年のForm 10-Kから数字を抜き出すと、地域別売上げは

となっている。一番大きいのが米国、次いで中国、ヨーロッパと続き、日本は"Other Asia"の中にまぎれている形だが、中国がここ3年で急速に伸びたものの、LTEの普及が一段落したこともあり、そろそろ成長が緩やかになりつつある。これに比べると日本は今後、オリンピックなどで大きく伸びる余地がある、という判断をしたのだと思われる。このため日本での展開に本腰を入れるべく、西尾則子氏を日本の社長に据えたという事であろう。同日、東京エレクトロンデバイスが同社と販売代理店契約を結んだことを発表した事と今回の社長人事は、あながち無縁なものではあるまい。これまでも同社は、Ethernet用アダプタであるConnectX-5とEthernetスイッチ「Spectrum」を国内で出荷はしていたが、同日より本格出荷を開始するとしている(Photo06)。

また同社は、旧EZ-ChipのNPUと、同社のSilicon Photonics技術を組み合わせたBlueField SoCを今年後半にリリース予定で、会場ではこのモックアップも展示された(Photo07)。

さて発表内容はこの程度であるが、図らずしも高速Ethernet向けの製品を投入する3社(Broadcom、MACOM、Mellanox)がいずれも似たような製品ラインアップになってきたのがちょっと面白い感じだ。Broadcomは2.5Gとか5Gのアクセスラインから40Gあたりまでを重点的にラインアップしているが、もちろん100G以上に向けても製品を出し始めており、また旧NetLogicのネットワークプロセッサのラインアップを持ち、(ちょっと最近行方が怪しくなってはいるが)VulcanというARMv8-Aベースの独自プロセッサを開発中である。MACOMは逆に100G〜400Gの範囲の製品に強いが、これはApplied Microの買収の結果手にしたものである。同社はまた、Applied Microが開発していたARMv8-AベースのX-Geneというネットワークその他向けプロセッサを手にしている。Mellanoxは先に触れたとおり、EZ-Chipを買収したことで、同社の持っていたARMv8-Aベースのネットワークプロセッサ資産を手にしている。となると差別化はラインアップとかサポート、というあたりになると思われるわけで、このあたりで今後どうMellanoxがシェアを維持してゆけるかはちょっと興味あるところだ。

(大原雄介)