なぜ「すぐやります」は×で、「今やります」は◯か

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■「今度調べよう」……結局調べないのはなぜか?

日々生活していると、何かの拍子に「あ、あれやろう」「お、これやりたい」と“発作的”に思うことがあるのではないでしょうか。例えば……。

●美味しいお店の特集がテレビでやっていた。 今度行ってみよう
●旧友から同窓会やらない? と言われた。やろうやろうと、今度日程送るねと答えた
●面白そうな座禅の会があるらしい。初心者は予約が必要そうだ。今度ネットで調べよう

しかし、私の経験上、このように「今度調べよう」「後で行ってみよう」と思ってもたいてい実行されることはありません。

「あー、忘れてた」「そっかー、前も聞いたなー」「やろうやろうと思っていたけど、時間がなかった」「バタバタしていて……」

となるパターンがほとんどです、残念ながら。

習慣化コンサルタントとして多くの顧客を見てきて感じるのは、行動できる人は「すぐやります」とは言わず、「今やります」と言うことです。「すぐやります」は、一見、前向きな発言ですが、判断や行動を後に回しているのです。

■「行きたい」……でも、その瞬間に行動しない心理

先日、電車の窓越しに東京大江戸博物館で「没後150年 坂本龍馬」展が開催されるという看板を見ました。「これは行きたいな!」と思って、開催期間を見ると4月29日〜とある。私は、妻と共有しているグーグルカレンダーを見て、4月30日の午後に行くとメモし、妻にLINEをしました。一気に予定を組むまでの所要時間は、わずか1分間でした。

もし、このとき「あとで龍馬展のHPをチェックしよう」とただちに予定を組まなかったらどうなったでしょうか? 多忙な毎日の中、かなりの確率でチェックすることを忘れてしまったに違いありません。大事なのは、この「HPをチェックすること」を思い出すという“ひと手間”をなくすことです。

つまり、興味を持った今この瞬間こそ、一番モチベーションが高く、判断したり行動したりするのに最高のタイミングであるはずです。だから、この今という絶好のタイミングを逃してはならないのです。

次のモチベーションカーブをご覧ください。今、龍馬展のことを考えるタイミングを逃すと、一晩寝て忙しい日常に入ると脳は仕事のことだけで容量いっぱいになります。龍馬展のことを覚えておく余白などなく、忘れていきます。

■なぜ、「積ん読」本はうず高く積まれ続けるのか?

別の例で考えてみましょう。

本が好きな人の中には、読まないまま長期間積んでおく「積ん読」本を解消したいという悩みを持っているケースが多いでしょう。なぜ、積ん読本が増えるのでしょうか? 私の場合、本棚に未読本が溜まっていく大きな原因は、買った時の「読みたい!ワクワク感」が冷めてしまうことでした。読みたいと思って購入するときと、実際読むときのタイムラグが原因となるのです。そして、新しく本を購入しても、他の積ん読本に手を付けず、新しい本のページをめくることに後ろめたさを感じ、また積ん読本が増えていく……。悪循環です。

そこで一計を案じ、書店で買ってその興奮とともに一気に読むようにしたら、どんどん本を読むことができるようになりました。

一心不乱にワクワク感をドライブにして読めるのは、買った当日、届いた瞬間です。買った瞬間せっかく今あるモチベーションを利用して読まない手はありません。読書を後回しにするのはもったいない。時間とお金をムダにしてしまうのです。

あなたにも同じような体験はありませんか?

さて、「今この瞬間を大切にして判断する・行動する」ことの意義に共感いただいた方は多いかもしれません。ただ、これを実行するのは容易ではありません。

「(行動を共にする)他の人との予定の擦り合わせはどうするのか?」
「判断を間違って(読む価値があまりなく)、お金を損したら、嫌だな」

など、さまざまな“ブレーキ”があり、すぐ行動できない人は少なくありません。

そこで、「今すぐ行動する」ために、下記の2つの思考習慣を試してほしいのです。

■今すぐやるコツは「朝令暮改」「仕掛かり中」

1.朝令暮改OK

「◯◯したい」。そう思ったら、とりあえず動く。初手を指す。ここがポイントです。しかし、その初手が間違っていたら……と、二の足を踏む人が多い。そこで、今、仮にスタートしたとして、途中で違和感を感じたら、方針を転換する。「一度決めたら変更してはいけない」とこだわるのではなく、柔軟に対応する。臨機応変に朝令暮改してよし、とするのです。

そうやって「あくまで仮の決定や行動」とすれば、踏み出しやすくなります。真面目な人ほど決めたら確実にやらなきゃと考え、それゆえに行動が慎重になります。「小さな決断や行動を積み重ねる」ことで、大きな決断ができたり、大胆な行動に踏み出せたりします。

2.なんでも「仕掛かり中」作戦

「今、このタイミング」で、「今の自分が決められること」を「小さく決断(仮決定)」をしましょう。仮決定の内容を具体的に言えば、スケジュールに予定を入れる、お店に電話して予約を入れる、などです。

ある決断や行動を「仕掛り中」にしてしまえば、脳はそれを覚えておくことができます。「誰かを誘う」「メールで問い合わせをする(相手からの返信待ち状態にする)」など、意図的に仕掛り中にしておくことで、次の行動は自然にリマインドされます。まずは初手を指す。仕掛り中状態にする。それが、あらゆるものごとを積ん読状態にしないための最良の策なのです。

(習慣化コンサルタント 古川武士=文)