北朝鮮に対し米国などが圧力を強める中で、北朝鮮は19日からガソリン販売の制限を始めたことが明らかになった。中国の北朝鮮に対する石油禁輸が取り沙汰される中での動きである。

AP通信によると、平壌市内のガソリンスタンドにはガソリンを求めて車が押し寄せ、長蛇の列ができている。通常、ガソリンを購入するにはあらかじめチケットを購入しておかなければならないが、今はこのチケットがあっても売ってもらえず、追い返される。

ガソリンスタンドの中には「外交官または国際機関所有の車に限り販売」との看板を掲げていたり、休業したりしているところもある。

販売制限の理由や期間については明らかにされていないが、中国が石油の輸出停止に踏み切った場合に備えた措置と思われる。

ガソリン価格も急騰している。

APによると、1キロ(1.34リットル)70〜80セント(約77円〜88円)だったガソリン価格が、1ドル25セント(約137円)まで上昇した。また、米国の北朝鮮専門ニュースサイトのNKニュースも、先週に入ってから3日間で、ガソリン価格が83%も高騰したと報じている。ガソリン価格の高騰が今後も続くと見ている人が多く、買いだめに走るドライバーもいるとのことだ。

中国人民日報系の環球時報の英語版、グローバル・タイムズは、中国の専門家の話として、北朝鮮への圧力を高めるために、石油輸出の削減を検討するだろうと報じている。

延辺大学国際政治研究所の金強一所長は、米国は中国に対し、対北朝鮮制裁の強化を常に求めており、中国はその可能性を探っているが、同時にそのリスクも考慮していると述べた。

記事ではそのリスクがどういったものであるかについては明言していないが、「石油供給が削減されれば、北朝鮮の政治状況にも国民の生活にも打撃になる」(金所長)ため、北朝鮮がさらに不安定化しかねないことを指しているもようだ。

中国は2003年、北朝鮮がミサイル実験を行った後の3日間、石油輸出を停止した。中国は、機械的な故障によるものとして、制裁の一環だったとの指摘を否定しているが、これをグローバル・タイムズが報じているということは、制裁の意図があったことを事実上認めているということだ。

北朝鮮は、石油の約9割を中国からの輸入に依存している。

大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の統計によると、北朝鮮は2015年に52万5000トンの原油を中国から輸入している。また、国連の統計によると、北朝鮮が中国から輸入した石油製品の量は21万8087トンだ。

ロシアからも輸入しているが、中国からの輸入量の6分の1に過ぎず、供給も不安定だ。

韓国成均館大学の李熙玉(イ・ヒオク)教授は、韓国の中央日報に次のように述べている。

「中国がパイプラインを閉じれば、北朝鮮は数日しか持ちこたえられない。あっという間に国家システムが崩れ、社会全体が心理的恐慌状態に陥る」

しかし、中国からの石油輸入がストップしても、北朝鮮がすぐに苦境に陥るわけではない。

北朝鮮は3ヶ月分の原油を備蓄していると言われている。一例を挙げると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年5月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋の話として、道内の軍需工場は数十万トン、清津市内の各ガソリンスタンドも数百万トンずつ備蓄していると伝えている。

また、パイプライン以外でも、様々な形で密輸が行われている。しかし、1日1万バレルに達するパイプラインでの供給量には到底及ばない。

禁輸が長期化すれば、再開にも時間を要することとなる。

韓国エネルギー経済研究院のキム・ギョンスル研究員によると、北朝鮮に輸出される原油は、黒竜江省大慶油田のもので、パラフィン成分が多く含まれているため、いったん供給を止めてしまえばパイプラインの内部に不純物がこびりつき、供給再開にはかなりの時間を要すると説明した。