日本の製造業は「日本のモノづくり」と呼ばれるほど、世界に胸を張れる産業だ。国外(アジア圏)への“日本独自の匠の技の流出”などと危機が叫ばれるようになっている点からも、日本のモノづくりは、大事に保護していく必要がある。

そうはいっても生産コストを下げないと商売として成立しない。いまや、自国よりコストの安い国々に工場を移すことで利益を確保する時代へと変わった。

そうはいっても生産コストを下げないと商売として成立しない。いまや、自国よりコストの安い国々に工場を移すことで利益を確保する時代へと変わった。

ところが、最近日本に工場を回帰させ、日本で自社製品の製造を行うメーカーが増えてきた。それは、コスト的に諸外国と比較しても十分に戦えるように状況が変わってきたためだ。

工場を日本に戻せるようになった理由は、様々な要因が考えられるが、そのひとつとしてIoTの導入で工場をスマート化し、海外の工場よりも製造コストを低く抑えられるようになったことがある。

強かったメイドインジャパンが復活しつつあるのだ。

先日開催された「TECHNO-FRONTIER2017」(4月19日〜21日、於:幕張メッセ)では製造業とIoTがどのように関わることができるのかについて特設ブースを出していたので紹介しよう。

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製造業とIoTの関わり合い方

IoTと製造業の関わり合いというと、真っ先に想像できるのが冒頭で触れた「製造工場のIoT化」である。工場の稼働に関して細かな情報を吸い上げることができれば、最適化を行うことで、生産効率を高めることができる。

また、センサー類を駆使し、製造用の機器を細かくチェックし、クラウド上のAIにデータを送信、AIが瞬時に状況を把握してトラブル発生を予測し、アラートを出すなどの細かな管理ができれば、トラブル発生で工場の稼働を停止させることもなくなる。

また、注文数と製造数を常に把握しておき、季節による製造数の変化を予測し、増産・減産、停止といった指示を適切なタイミングで出すことで、作り過ぎを予防できる。

これまでは、人と人がオンラインでつながることで、こうした工場における製品製造の最適化を行ってきた。工場のオペレーターと本社の担当者がインターネット経由でつながり、指示をオペレーターにダイレクトに伝えることで、適切な生産管理を行ってきた。

ところが、人と人がつながるケースでは、担当者が離席していたり、体調不良で休んでいたりということが起きる。5分離席していただけで生産ストップ指示が反映されず、5分間の余分な稼働で在庫を抱える羽目になってしまう。

IoT化することで製造工場がスマート化し、適切なタイミングで適切な数の製品を製造できるようになる。さらに工場内にある各製造機器のトラブル発生を予測して保守・管理の指示を出すことで、稼働を止めずにメンテナンスを行うことができるようになる。

このように製造業のIoT化に関しては、工場のFA化とIoT化を同時に行うことで製造業における不安要素を一気に取り除くことが可能になるわけだ。

では、そうした製造業におけるIoT化がどの程度まで進んでいるのだろうか?
特設ブースでは、その現状がある程度わかる内容となっていた。

TECHNO-FRONTIER2017とは?

TECHNO-FRONTIER2017は、日本が世界に誇る、製造業関連の様々な技術を1か所に集めたイベントだ。

同イベントの説明としては「民生および産業用機器、装置メーカーの開発設計・研究者、生産技術者との情報交流の場」となっている。

展示エリアは、各カテゴリーに分かれており、そのカテゴリーごとにミニ展示会を行い、それを集めた形となっている。各展示会およびフォーラムの構成内容は、以下の通り。

展示会構成
「モーター技術展」
「電源システム展」
「モーション・エンジニアリング展」
「エコパワーソリューション展」
「メカトロニクス展」
「EMC・ノイズ対策技術展」
「機械部品・加工技術展」
「熱設計・対策技術展」

フォーラム構成
産学官交流技術移転フォーラム
出展者によるセミナー(A会場)
出展者によるセミナー(B会場)

これと同時開催の併設イベントとして「国際ドローン展」および、「駅と空港の設備機器展」が併設されている。

IoT関連の特設ブースは、HALL4の「モーション・エンジニアリング展」のエリアに設けられていた。

IoT関連の特設ブースは「モーション・エンジニアリング展」エリア内にある。


 

「IoTが拓く次世代ものづくりの世界」特設ブース


特設ブースは「IoTが拓く次世代ものづくりの世界」と銘打たれている。製造業に向けたIoT対応の製品や、各社の取り組みについて実機を展示したり、コンセプトを紹介するなどしていた。

特設ブースの企画は、日本機械学会生産システム部門94部門長をされている東京理科大学理工学部経営工学科准教授である日比野浩典氏の協力による。

展示企業は「オリエンタルモーター」「コーセル」「ジェイテクト」「日立産機システム」「ファナック」「安川電機」「ローム」の7社だ。

それぞれの展示内容を紹介しよう。

IoT対応を組み込んだ専用モーター(オリエンタルモーター)

オリエンタルモーターは、同社の製品であるモーター製品群の中からIoT対応をうたうモーター「αSTEP AZシリーズ」を展示していた。同モーターからは、あらゆる稼働情報(トルク、温度、積算走行距離など)、そこまで必要なのかと思えるほどの情報を吸い上げることができるようになっていた。モーター内にすでに様々なセンサー類が組み込まれているため、ドライバユニットから必要な情報を取り出せるようになっている。これまでのモーターでは、センサーを外付けすることで同様のことが可能だったが、同製品であれば、あらかじめ組み込まれているので手軽にモーターの情報を「見える化」することが可能になるとのこと。こうしたパーツを用いることで、IoT対応の製造機器を楽に作ることが可能になる。

あらかじめセンサー類を組み込んだモーター「αSTEP AZシリーズ」


手前のタブレット及び奥のディスプレイ上にモーターの情報が表示されている


 

スマートに電気をコントロール(コーセル)

コーセル(COSEL)は、通信機能が組み込まれており、それを利用して装置の状況に応じた電圧・電源の供給が可能なスマート電源とも言えるスイッチング電源を展示。コンセプト段階なので「このように使えますよ」といった事例を提示。

コーセル(COSEL)は見える化できるスマート電源を展示


 

ネットワークに接続し、状況に応じて細かく切り替えられる電源を展示


つなげる、見える化を他社製品同士でも実現させる(ジェイテクト)

製造業における工作機器メーカーであるJTEKT(ジェイテクト)。製造業においては、各社のPLC(Programmable Logic Controller)が製造機器をコントロールすることで生産ラインを動かすようになっている。たとえばA社のPLCとB社のPLCを組み合わせることができなかった。ところが、ジェイテクトは、メーカーの垣根を越えて接続を可能にするPLCである「TOYOPUC-PLUS」を開発、あらゆるPLCと垣根を越えて接続することができる。これにより、製造ラインを特定メーカーの特定PLCに依存せずに、あらゆる機器と連携させることが可能になった。PLCの種類を問わず「なんでもつながる」ことが最大のポイントとのこと。

さらにPLCやプラットフォームを選ばない汎用のシステムを展示


マルチOS対応、スケール幅も思いのまま(日立産機システム)

日立産機システムは、小型PLCから産業用のFA用コンピュータまで、幅広いラインアップを揃える。その中でもIoTに対応したPACシステム「HKシリーズ」と「HF-W100E/IoTシリーズ」を展示していた。

簡単に言うとHKシリーズは、ARM搭載の小型Linuxボックス。工場用の機器のコントロールをLinuxプログラミングで構成することができる製品だ。対してHF-W100E/IoTシリーズは、中身はファンレスのAtom搭載WindowsPCである。Windows 10が動作しているので、システムコントロールもWindowsプログラミングで対応できるとのこと。

さらにファンレス仕様となっており、標高2000メートルまで、室温50度までの範囲内であれば動作するという。枯れたLinux技術で安心および互換性を取るか、最新のWindows対応で、より範囲の広い柔軟さを取るかといった違いがある。

IoT対応のPACシステム「HKシリーズ」、中身はARM搭載の小型Linuxボックス


Windows搭載のHF-W100E/IoTシリーズは柔軟性が自慢


これぞIoT! わかりやすい展示が自慢の(安川電機)

ああ、将来的なオンライン注文システムは、こうなるのでは? といったコンセプトを展示していたのが安川電機だ。中国語、日本語、英語のブロックを並べるというデモを行っていた。タッチボタンを押すことで、それぞれ日本語の面を見えるように置く、英語をタッチすると英語に切り替わる。

オンライン注文のサイトで、ユーザーが好みを選ぶと、それがそのまま発注情報として向上に送られ、BTO選択で構成した製造を作り始める。一度、電話やFAXなどで注文せずとも、Webブラウザーで選んだ仕様の製品が組みあがる。これぞ製造業におけるIoTと言える内容になっている。

製造業におけるIoTについてのユニークなコンセプトを提示している「安川電機」


日本最大手の工業向けロボットの製造(ファナック)

そして最後のファナックは、FA(Factory Automation)向けのFA&ロボットシステムではすっかりお馴染みと言える「FIELD System」を展示。「なんでもつながる環境」がFIELD Systemであり、様々な用途や規模に柔軟に対応できるという展示をしていた。

計測することならなんでも任せられそう(ローム)

最後のロームは、同社の持つ各センサー類、中でも無線通信モジュールが組み込まれたセンサーによって監視するシステム例を展示。同社製のセンサーには、無線通信機能が搭載されており、情報をリアルタイムで送信できるようになっている。

無線通信モジュールを搭載する各種センサー類


以上のように製造業におけるIoTについて紹介した。製造業とIoTでは、やはり生産技術(工場内が持つ、問題点)を洗い出し、適切に処理することを重要と考える企業がほとんどのようだ。ただ、安川電機のようにBTO注文をIoTでリアルタイム処理しできるトータルソリューションとして用意するといった見方もできるわけだ。

製造業におけるIoT対応は、まだ始まったばかりだ。今後、さらに便利な機能が出てくるのかはIoTのアイデアを常に考えるといったことも必要になっていくだろう。

筆者:Natsuki Ogawa