【海外試乗記】ランボルギーニ アヴェンタドールS、全てをアップグレードし、唯一無二の世界を深化させた:島下泰久

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 ランボルギーニ社のステファノ・ドメニカリCEOが言うには、いま世界的に若い世代からのランボルギーニへの支持が高まってきているのを実感しているという。理由は色々と考えられるが、ブレないコンセプトとそれをストレートに反映したデザイン、そしてその一方で大胆に進化し続ける姿勢こそが、きっと彼らを熱狂させているのだろう。中庸なんて興味は持たれないのが、今の世の中。その意味で、これほどまでに個性が確立したブランドは、他には無いというわけである。

 最新作アヴェンタドールSは、まさにそんな今のブランドの勢いをそのまま凝縮した1台と言える。デビューからわずか5年で、10年間に渡って販売された前作ムルシエラゴの累計販売より3割以上も多くのセールスを記録したヒット作、アヴェンタドールLP700-4の発展型は、期待を大きく上回る進化を実現していたのだ。

 まずは見た目からして進化ぶり、あるいは洗練ぶりは明らかである。独自の世界、獰猛な存在感を決して損なうことなく、クーンタッチから引用したリアホイールアーチの形状など、ツボを押さえた見所を用意し、しかもその上で新しさ、あるいは上質感をプラスしたエクステリアの仕立ては、見事と言うほかない。

 しかも延長されたフロントスポイラー、新しいディフューザー、3ポジションのアクティブリアウイングなどの採用で、ダウンフォースを130%も向上させ、更にはエンジン冷却性能向上と空気抵抗低減の両立、ブレーキ冷却性能の向上など、空力性能も同時にしっかりと引き上げている。

 CFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製とされるボディのキャビンは背後に収まるのはV型12気筒6.5ℓ自然吸気エンジン。最高出力は従来比40ps増の740psを獲得している。この強大なパワーは、7速シングルクラッチのギアボックス、そして電子制御式フルタイム4WDシステムを介して4輪に伝達される。0-100km/h加速タイムは、たったの2.9秒に過ぎない。

 シャシーにも大幅に手が入れられた。最大のトピックがリアホイールステアの導入。低速域ではフロントと逆位相に最大3°、高速域では同位相に同1.5°の操舵を行なうこの機構に合わせて、電子制御式4WDシステムの前後トルク配分や、電子制御式ダンパーの減衰力などの制御も見直されている。

 これらはエンジン、ギアボックスまで含めて統合制御されており、「STRADA」、「SPORT」、「CORSA」にパーソナルセッティングの「EGO」を含めた4つの車両キャラクターを任意で選択することが可能だ。また、専用タイヤのピレリP ZEROも、全方位に性能アップを実現した新開発品とされた。
 試乗の舞台は、主にサーキット。天候は生憎の雨で、最初はストレートで全開にするのも躊躇われる雰囲気だったのだが、そんな中でまず感じたのは機械としての洗練度が格段に高まっていることだった。各種制御も緻密になったようで、端的に言って走りはグンと上質なものになった。

 垂涎のV型12気筒ユニットは、豪快なパワーで魅了しつつも、同時にいかにも自然吸気らしいナチュラルなレスポンス、そして回転上昇とともに高みに向けて駆け上がっていくような吹け上がりで、やはり同様に洗練を感じさせる。法や規制によって縛られない限りは、大排気量自然吸気エンジンを継続していきたいと宣言しているランボルギーニだが、確かにこの世界、未だにこだわる理由があると大いに実感させてくれるのである。

 ギアボックスはDCTのようにスムーズとは言わないが、しかし大きなショックを感じさせるわけでもなく、そのダイレクト感と引き換えと考えれば十分と感じさせる完成度を味わわせてくれる。尚、アヴェンタドールがシングルクラッチにこだわるのは、どうしてもクラッチ径が大きくなるDCTでは今のタイトなパッケージングを維持できないから。これもまた、ひとつのポリシーというわけだ。