中村憲剛のゴールパフォーマンスは遠距離からの写真に【写真:松岡健三郎】

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狙っていた20000点の写真。記念ゴールを決めたのは…

 J1通算2万ゴールが決まった川崎フロンターレ-清水エスパルスの一戦。合計4ゴールが決まった試合となったが、両チームの戦いに呼応して、ピッチ脇には奮闘するフォトグラファーの姿があった。(写真・文:松岡健三郎)

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 今回の写真のテーマは「20000ゴール」。ここにつきる。それともう一つ。カメラマンにとって、アウェイチームがホームユニフォームを着てプレーするのは一つの大きなモチベーションになる。

 テレビやサポーターには気にならないところかもしれないが、カメラマンにとっては、アウェイチームのユニフォームは非常に気になるところ。この2つがこの試合の写真のポイントだ。もちろんアウェイユニフォームでも写真は撮るが、後に写真が使われやすいのはホームユニフォームのほうだからだ。

 ちなみに、最近、岐阜と松本の試合で同系色のユニフォームになってしまい、前後半で変えなくてはいけないハプニングが起きた。アウェイ戦でホームユニフォームを着るかどうかの判断材料は、もちろん見た目で区別がつくこと、キーパーの色と被らないこと、そして、写真をモノクロで見た時に、すぐに区別がつくことがあるらしい。

 これはあくまでJリーグ基準。最近海外ではホームユニフォーム同士で、同色系で戦っている試合もよくある。

 話を戻そう。私は、試合中に撮影ポジションが移動できるスタジアムのときは、試合のシミュレーションをして、試合の流れに合わせてポジションチェンジすることがある。

 この試合の前半は、川崎が攻める側にポジションを取った。ACLに出場している川崎と、J2から昇格した清水とでは、やはり力の差がある。前半の試合内容も川崎が圧倒していた。

 前半に川崎がゴールを決めるのも時間の問題。20000ゴールを狙っていたが、シナリオ通り行かないのがサッカー。

 清水が全員で作ったブロックから、一気にカウンターをしかけて、前半16分に鄭大世のパスを金子翔太が決めて、狙い通りの先制点を奪った。

 12年前の10000ゴールに続き、有名ではない選手がゲット! もちろん私は背中向きの小さい写真のみ。撮れたのは小さく映る喜ぶ姿……。

中村憲剛がゴール! 「ジャスティス」を披露

 ただ、これが20000ゴールかは現場ではすぐに把握できなかった。同時刻にキックオフしたG大阪-大宮の試合があったからだ。ハーフタイムに確認すると、G大阪の先制点を決めた井手口陽介のゴールが、金子より2分遅かった。記念ゴールの現場には立ち会えた、というわけだ。

 比較的早い時間に記念ゴールが決まり、しかもいい写真が撮れなかったため、モチベーションが下がってしまったが、清水のホームユニフォームを撮影する方向に切り替えて、その後も同じ場所で、押し込み続ける川崎の攻撃を撮った。前半は0-1で清水がリードしたまま終わり、試合内容的には両者とも狙い通りのサッカーとなった。

 後半に入ると川崎はタイプの違う選手で試合を動かした。前半、最もボールタッチし、パスも多かったエドゥアルド・ネットに替えて、森谷賢太郎を同じボランチに入れたのだ。

 エドゥアルド・ネットは足元で受けて、その場でボールを散らすタイプ。森谷は広い視野と、自らボールを運ぶドリブルができるタイプ。その動きに連動することで、後半は昨年の川崎のスタイルにより近づいた。前半はしぶとく守っていた清水DFだったが、隙をつかれて、62分に阿部浩之に決められ同点。川崎はさらに勢いに乗った。

 私はというと、後半は清水の攻撃を撮影して、後半15〜20分になったら、清水の守備が息切れしてくると読み、そのタイミングで川崎の攻撃側に移動しようとしていた。

 だから阿部のゴールは再び逆サイド。いいタイミングで移動しようと思い、この後のワンプレーで……と思ったところ、73分に中村憲剛がゴール。私の読みは当たったが、肝心なポジショニングが違った。3点すべて逆サイド。全くいい写真がない。

 移動していれば、中村のゴールパフォーマンス「ジャスティス!」を確実に抑えられたのに。結果はこれだ。

 カメラマンに被る残念すぎる写真となった。

12年刻みの記念ゴール。30000点は再び12年後?

 逆転したホームの川崎。ここからは試合が動かなそうだったので、そのまま清水の攻撃側にステイし、清水の新外国人チアゴ・アウベスの登場を待った。ハイライトだけだが清水の試合で彼を見て久しぶりに面白い選手が出てきたと思っていたので、撮影するのを楽しみにしていたのに、小林伸二監督はビハインドになってもなかなか起用してくれなかった。出場したのは79分から。20000ゴール男・金子との交代となった。1プレー、2プレーでその素質はわかった。予想を超えるテクニシャンだ。

「もっと早く使えよ、遅いよ」と思いつつチアゴ・アウベスを撮影。アディショナルタイムは「4分」。清水は鄭大世とミッチェル・デュークを狙って、ゴール前にボールを放り込む時間帯に。

 中盤でボールを持った白崎凌兵が右サイドのチアゴ・アウベスに展開。私はクロスボールが入ると思って、ゴール前の鄭大世にピントを合わせる。しかしボールが来ないため、チアゴ・アウベスを確認すると、ゴール前には放り込まずに、自らドリブルでカットイン。私が気づいたのは、チアゴ・アウベスが左足を振り抜いた時だった。ゴールをしたのを目で確認する前に、スタンドの歓声で、劇的なゴールとなったことが分かった。そのままレンズ越しにチアゴ・アウベスを追い続け、この試合一番いい写真を抑えることができた。

 狙い通りいかないのがサッカーで、狙い通り撮れないのもサッカー。90分間ほぼ思い通りの写真が撮れなかったが、ポジションを変えなかったことで、アディショナルタイムに、狙っていなかった写真が撮れた。

 最後に結果を残したものがスターになれるのがスポーツの世界。カメラマンも90分間、集中を切らさずに、あきらめないで狙い続ける必要があることを再確認した。

 Jリーグ開幕の1ゴール目から12年で10000ゴール。そこからさらに12年後に20000ゴール。記念ゴールすべてが酉年に生まれた。私も酉年・年男だけに、さらに12年後。試合勘を研ぎ澄まして、30000ゴールを収められるようにしたい。

(写真・文:松岡健三郎)

text by 松岡健三郎