ウッズも手術により半年間離脱(撮影:岩本芳弘)

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バレロ・テキサスオープン開幕前、とても気になる話を耳にした。2016年の全米プロ覇者、ジミー・ウォーカーがライム病と診断されたという。ライム病は『野生のマダニに刺されることによって媒介される人獣共通の細菌による感染症』(厚生労働省)で、発熱、頭痛、倦怠感などに断続的に襲われるそうだ。
最終日“82”を叩いて厳しい表情を浮かべる石川遼
ウォーカーといえば、2014年シーズン開幕戦のフライズ・ドットコム・オープンで初優勝を挙げ、フェデックスカップ1位にランクされると、それからは水を得た魚のように活躍を続け、同年は年間3勝、翌年はテキサスオープンを含む年間2勝、そして2016年は全米プロを制してメジャー初優勝と米ツアー通算6勝目をマーク。フェデックスカップランク1位、悪くとも2位を維持した強者だった。
だが、全米プロ優勝後は成績が低迷し、フェデックスカップランクは一時は3桁台まで転落。その原因がライム病であったことが今年のマスターズの前週にようやく判明した。「風邪に似た症状だから風邪だと思っていた。ライム病は、いつ症状が出るのかわからず、出たら出たで体がだるく、やる気や集中力が損なわれてしまう」
練習しても身が入らず、頑張るぞと意気込んでみてもプレーに集中できず、「だるい」「熱っぽい」「どうしてなんだ?」そうやって悶々としながらも、どうしたらいいかわからない日々とウォーカーは8カ月以上も戦ってきた。今週はドクターチームが練っている治療プランを待ちつつ試合に出たが、やっぱり実力発揮とはいかなかったようだ。健やかな心身でなければ、健やかなゴルフをすることは難しいということなのだろう。
ウォーカーのライム病が報じられた翌日、今度はタイガー・ウッズの4度目の腰の手術のニュースが流れた。ウッズが最初に腰の手術を受けたのは2014年のマスターズの前週だった。2015年の秋に2度、そして今回で4度目となり、今回は腰と足の双方から治療することで痛みを軽減する手術だという。リハビリには最低でも半年が必要だそうで、今季の試合出場は絶望的だ。
マスターズでは開幕前日に世界ナンバー1のダスティン・ジョンソンが階段から転落して腰と肘を強打。初日のティオフ直前まで希望を捨てず練習場で球も打ったが痛みには勝てず、泣く泣く棄権したことは記憶に新しい。
どんなに強い選手、どんなに強かった選手でも、健やかな心身を損なえば戦うことはできない。どんなに技術を磨いても、それを発揮することができない。アスリートにとってその状況は戦って敗北を喫するより辛いこと。そうならないためにも日頃からチェックアップを含めた心身のケアを怠ってはならない。ここ数週間、ジョンソン、ウッズ、ウォーカーらの傷病の知らせに次々に触れ、そんなことを痛感させられた。
今大会を制したケビン・チャペルは2008年にプロ転向してからの10年近い歳月の中、勝利を挙げたのは下部ツアーでの1度だけだった。米ツアーではぎりぎりで勝利を逃してばかりで、2011年の同大会では1打差で惜敗。昨年はRSMクラシックでケビン・キスナーに敗れ、A・パーマー招待とプレーヤーズ選手権ではどちらもジェイソン・デイに優勝をさらわれた。最終戦のツアー選手権ではローリー・マキロイ、ライアン・ムーアとの三つ巴に敗れ、実に年間4度の惜敗。
それでもチャペルがずっと戦い続けられたのは、彼が健やかな心身を保っていたからだ。今年のマスターズでは7位に食い込み、調子を上げていた。
そして今週。首位で迎えた最終日、72ホール目のパー5でウイニングパットとなった2メートル半をしっかり沈め、ガッツポーズ。「勝因?最後のホールを4で上がったこと」心身に不安も悩みも痛みもなく、目の前の一打だけ、スコアだけに集中できることは何よりも強い。キャリア180試合目にして、ついに挙げたチャペルの初優勝は、あらためて健康の大切さを教えてくれたように思う。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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